Hump Backには岡崎京子がよく似合う

Hump Backには岡崎京子がよく似合う

すでに飽和し、シュリンクしているようにも思える「ガールズバンド」マーケットの中で、勢いのある新鋭ガールズバンドとして注目されているHump Backが、6月20日にメジャーデビューシングル『拝啓、少年よ』をリリースした。

Hump Backはフロントを務めるギター・ボーカルの林萌々子を中心に、ベースのぴか、ドラムの美咲によるチャットモンチー型の3ピースで活動。2016年にインディーズデビューしてから、あっという間に注目のバンドとして巷の話題となった。

メジャーデビューシングルのリリースを受け来月早々よりツアーも予定されているので、ブレイク必至のHump Backによる、ガールズバンドらしいストレートロックをいち早く体験してほしい。

SHISHAMOを差し置くHump Backの魅力

Hump Backのメジャーデビューとなる6月20日はSHISHAMOの5枚目のアルバム「SHISHAMO 5」のリリース日と重なっており、エセ音楽ライターとしてどちらをピックアップするか悩んだ挙げ句、SHISHAMOを切ることにした。

Hump Back / 拝啓、少年よ

バズってナンボのSEOライターであるから、ここは知名度の高いSHISHAMOの方を取り上げるべきなのかもしれないが、個人的にHump Backの方に魅力を感じているのだから仕方がない。

某音楽系ウェブマガジンのように「SHISHAMOはブスだから売れた」とブチ上げてもまとめきれる気もしないし、ここは無理なくSHISHAMOをダシにHump Backの紹介をさせてもらおう。

チャットモンチーの遺伝子を受け継ぐHump Back

以前「音楽の遺伝子」という話を書かせてもらったが、Hump Backは明らかにチャットモンチーの遺伝子を受け継いでいる。それは単なるコピーとかフォロワーという意味ではなく、チャットモンチーの持つ魅力を引き継ぎ、Hump Backの音楽として昇華させる”継承者”という意味合いが強い。

実際、フロントの林萌々子は多大にチャットモンチーの影響を受けており、チャットモンチーが3ピースだったころのギターバンドとしての”勢い”をHump Backに感じることができる。

Hump Back / 今日が終わってく

関連記事→「THE PINBALLSが受け継ぐミッシェルの遺伝子」

これまたチャットモンチー解散の報を受け寄稿した記事で、チャットモンチーとSHISHAMOを比べることの違和感について述べさせてもらった。その違いはHump BackとSHISHAMOについても当てはめることができる。

関連記事→「チャットモンチーになりたいガールの未来」

ガールズバンドファンとしては、バンドが女性だけで構成されていればよいというわけではなく女性主体で作られた楽曲から感じられる「女性らしさ」が肝心要なのである。オマケにルックスが良ければ尚良しだが、そこは脳内補完が効くのであまり問題ではない。

Hump Back / 星丘公園

そういう観点ではSHISHAMOもHump Backもその歌詞には女性らしい心情が表れてはいるのだが、「女性らしさ」とひとことで言っても世の中には様々な女性がいるわけで、あとは個人的な女性の好みによって好き嫌いが分かれる。

多分、SHISHAMOよりHump Backに魅力を感じるのはそういう部分なのだと思う。

Hump Backが持つ女性としての引っ掛かり

ハッキリ言えば、SHISHAMOみたいに”どーでもいい”ようなことを、さもオオゴトのように語る女子は苦手なのだ。そんなだから女性にモテないのだろうが、苦手なものは苦手なのだから仕方がない。

SHISHAMO / ねぇ

SHISHAMOが描く心情は非常に共感性は高い。だから多くの人から支持されるのだろうが、その共感性とは「それな~」とか「わかる~ぅ」「だよね~」とスマホを見ながら相づち打たれる類の他愛ないもののように感じる。

一方Hump Backの場合、その歌詞にも、バンドが放つ音にも「えっ?ちょっとまって、今なって言った?」と聞き返したくなる部分がある。こういう女の子と話している方が断然面白い。

これを広告界では「フック」と呼ぶ。その名の通り人の興味を呼ぶ“引っ掛かり”のことだ。

SHISHAMOは共感性は高いが、その内容は表層的でフックが弱い様に感じる。それは歌詞の内容だけでなく、そこで鳴らされる音も含めての話だ。

チャットモンチーよりも「岡崎京子」的なHump Backに注目

前述のチャットモンチーについて書いた記事の中でSHISHAMOを「桜沢エリカ」的と例えた。

それは、絵は綺麗だがストーリーがクソつまらないという部分で「桜沢エリカ」に例えたわけだが、Hump Backには女性の持つ荒々しさや繊細さ、刹那的な心情が感じられ、チャットモンチーよりもより「岡崎京子」的なものを感じる。

Hump Back / 嫌になる

そう、Hump Backの楽曲には岡崎京子の絵がよく似合う。

荒々しいタッチの中で描かれる女の子は生々しく、繊細でありながら強く、もがきながらも自分らしく生きていく。そういう女性は”一人の人間として”とても魅力的に感じる。

来月、ガールズバンドブームの口火を切ったチャットモンチーがメジャーデビュー13年にして「完結」するのを前に、Hump Backがメジャーデビューを飾ったのは特別な意味があるようにも思う。

これからも、チャットモンチーの遺伝子を引き継ぎ、強く繊細な女性像を描くHump Backのガールズロックに注目していきたい。

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