NHKの朝ドラ主題歌として、日々を生きる人の応援歌として、星野源の最新曲「アイデア」はロングヒットの兆しを見せている。
そんなアイデアについて、「これは星野源の集大成なのでは?」という意見を聞くことは多い。
ミュージシャンのなかにはこれまでの楽曲を意識して、自身の集大成と位置付ける人もいることはいる。
しかし集大成とはその人の代表曲になるという意味であり、そう軽々と決定していいものではないと私は思う。
そこで今回は、星野源にとってアイデアは集大成といえるのかどうか、なぜそんな風にとらえられているのかを改めて検討していきたい。
PVにちりばめられた「アイデア」
アイデア
星野源の魅力の1つとなっているのが、深い印象を残すPVだ。
本作アイデアもまたPVが凝っていて、タイトル通り様々なアイデアがちりばめられている。
例えば歌の1番では、過去作のCDジャケットをイメージさせるパネルが複数登場したりして、自然と星野源の「これまで」を思い返させてくれるだろう。
ピンク、ブルー、イエロー、レッドのパネルにピンと来た人は多く、その時点でどことなくこの楽曲を集大成と位置付けることはできそうだ。
さらに「恋」の大ヒットにつながったダンス要素もあり、今作ではアーティスト三浦大知が振付を担当した。
ちょっと難易度が高いためマネして踊るのは困難だが、その点もこれまでたくさんのダンスを経験してきた星野源の集大成を意味する要因となるのかもしれない。
いくつもの音楽的センスが詰め込まれた構成
フルで聴いてもらえばわかるが、星野源のアイデアは曲中に何度も雰囲気を変える。
それも音をちょっとだけプラスするとか、歌い方をアレンジするとかではなく、本当にがらりと音を変えてしまうのだ。
その変化は曲中に複数回訪れ、そのどれもが星野源の歴史を感じさせてくれる。
特に2番の冒頭で音が止んでしまうような構成は、リスナーの多くを驚かせたことだろう。
バンドやダンスだけでなく、イエローミュージックを現代で牽引してきた星野源が、すべてを出し切った内容となっている。
本作は配信限定であるためB面というものが存在しないが、星野源本人は結局いつもと変わらないくらいの作業量だったと答えていた。
1つの曲にいくつもの要素を取り入れると、リスナーにとって負担になるほどごちゃつくことはよくある。
そういった情報量の多さを上手くさばけるということを証明した本作は、やはり集大成にふさわしいのかもしれない。
人の一生を感じさせる歌詞
何よりもアイデアに集大成感を与えているのは、人の一生を連想させるような歌詞にあるのではと筆者は思っている。
2度の「おはよう」で始まる歌詞は繰り返しやってくる毎日を想像させ、あらゆる言葉とくっつけられている「続く」というワードは、人間の一生を表現しているようにも思われるだろう。
一生とはつまり、人間の集大成を意味する。そうやって大きなことをイメージさせる歌詞にこそ、アイデアという楽曲の本質が隠されているのかもしれない。
「アイデアは星野源の集大成である」そういう認識を持ってもらうことで、「それは同時にあなたの一生も1つの集大成である」というメッセージに転換することができるのだ。
そういった歌詞の構成こそ、アイデアが集大成として認識される1つの理由となっているのだろう。
集大成であるからこそ、アイデアという歌は完成する。
そういった普通ではありえないようなことこそ、本作の魅力だといえるのだ。
結論:アイデアは集大成である
結論として、アイデアは星野源にとっての集大成であるといえる。
上記以外にもきっと、筆者が気づけない部分でアイデアが集大成たる所以が見つかることだろう。
ぜひこれを機に星野源というアーティストの背景と、これまでの歴史を感じながらアイデアを聴いてみてほしい。
おそらくアイデアという曲の存在が、さらに圧倒的なものになることだろう。