シングル曲「恋」の大ヒットにより、一躍有名ミュージシャンの名を冠することになった星野源。
2017年になっても「恋」の爆発力は衰えず、JOYSOUNDの上半期カラオケランキングで1位を獲得するなどの実績を作っている。
その他にも俳優や文筆家としての才能を認められ、多方面でのヒットを巻き起こした彼は、もはやどこの分野にも欠かせない存在となっている。
しかし星野源の持つ才能の水源は、まだまだこんなものではないようだ。
それは2017年に発表された10枚目のシングル、「Family Song」が証明してくれている。
年末の今だからこそ「Family Song」を通して、星野源の音楽が1年間でどう変わったのかをチェックしていきたい。
なぜ「恋」がヒットしたのか
「恋」と聞くとまず、「恋ダンス」を思い出す人は多いだろう。
Perfumeの振り付けで知られるMIKIKOによって作られた「恋ダンス」は、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のEDで流されて大きな話題を呼んだ。
恋
「恋ダンス」はテレビや動画投稿サイトで取り上げられ、誰でも参加しやすいダンスとして未だに普及を続けている。
そのためか、「恋」のヒットは「恋ダンス」のおかげであると誤解している人が多い印象を持つ。
しかし「恋」はそもそも星野源の才能が凝縮された、潜在的ヒット力を持った楽曲なのだ。
ソウルとファンクと歌謡曲によって生まれた曲
「恋」には星野源の好きなソウルミュージックとファンクの要素が取り入れられ、日本風の歌謡曲として再編集されたように聴くことができる。
音楽的な時代の流れをしっかりと受け継ぎながらも、アップテンポなリズムと歌詞で決して古臭さを残さない。
そのため「恋」は、王道でありながら斬新という、大胆な立ち位置を獲得することができたのだ。
このソウルとファンクを歌謡曲に融合する取り組みは、アルバム「YELLOW DANCER」から続けられている。
「時よ」
ポップなリズムを強調しすぎるくらいの調整は、星野源が「YELLOW DANCER」で掴んだ音楽的な感覚なのだろう。
聴いてもらうのを待つのではなく、自らリスナーの耳に近づいていくような強引なパワーが、「恋」のヒットにつながったと考えられる。
そして「Family Song」につながっていく
2017年、まだいたるところに「恋」の残像が残っているなか、星野源はシングル「Family Song」を発表する。
大ヒットした後のアーティストは、前作とはまったく系統の違う楽曲を出して、良い意味で期待を裏切ることが多い。
しかし星野源は、「恋」と同じソウルミュージック色の濃い楽曲を堂々と世間に見せつけてくれた。
「Family Song」
聴いてもらえればわかると思うが、「恋」から地続きの曲であっても、決して「Family Song」は前作の大ヒットに甘えている曲ではない。
むしろ「Family Song」は、ソウルやファンク色をさらに追及した挑戦的な楽曲といえるのではないだろうか。
さらに深くまで潜ることができた曲
挑戦的であると感じる理由は、スローペースにされた楽曲全体のテンポにある。
圧倒的な勢いで聴き手を制圧するような「恋」とは違い、「Family Song」はリスナーを立ち止まらせ、しっかりとメロディや歌詞を確認してもらうための時間を与えてくれる。
そのためより日常的に、生活に身近な楽曲として浸透することができたのだろう。
これは2015年に発売されたヒットシングル「SUN」ともまた違う。
キャッチーな言葉で引き込む「SUN」はもちろん魅力的な曲だが、言葉1つ1つが強いゆえに「Family Song」ほどの文学的な要素がうすくなっている。
「SUN」
言葉ではなく文章に思いを込めることができた曲には、自然と心を惹かれることになる。
だからこそ星野源のなかでも「Family Song」は、特別にメッセージ性の強い音楽となったのだろう。
それは星野源がより曲の源泉に深く潜り、その本質を引き出すことに成功した証拠といえるのではないか。
このことから星野源の音楽は今後、技術的な部分だけでなく、魂で感じられるような強いメッセージ性を手に入れるかもしれない。
もしそうなら、彼の本当の大ヒット作はこれから生まれることになるだろう。
音楽家としての存在感がさらに高まった1年
2017年に星野源が発表したシングルは、「Family Song」1曲だ。
しかしライブなどを積極的に行っているため、また新しい魅力を取り入れた音楽をいくつも私たちに届けてくれることだろう。
むしろ「Family Song」で確かな進化を感じさせておいて、ファンを焦らす作戦なのかもしれない。
そんなことを勘ぐってしまうほど、私は星野源の音楽に飢えている。
少しでも早く、彼の新曲が聴ける日が来ることを願って止まない。