映画で出てくるゴスペルシンガー、大物ミュージシャンと一緒にツアーを回っているサポートメンバーのコーラス隊、地域の喉自慢に出てくる子供から、はたまた学校の音楽の先生。
思い出してみると、ふくよかな体系の人は歌がうまい、そんなイメージはないだろうか。
「太っている人は歌がうまい」
これはずっと昔から言われ続けていることだ。
その噂は本当なのか、またそこに根拠はあるのか、今回はその謎に迫ってみようと思う。
歌がうまいとは
その前に、何をもって歌がうまいとされるのかを考えてみよう。
- 音程が正確
- リズム感がある
- 声量がある、息の量が安定している
- 声が響く(通る)
- きれいに高い声が出る
まず前提にこういった基礎的な部分がある。
そこに、抑揚をつけたりしゃくりやビブラート、こぶしを回すなどテクニックが乗ってくるわけだ。
実はこの基礎的な部分に違いがあるのだ。
この基礎的な部分は確かにトレーニングを続けることでより精度を高めるはできるが、そもそも太っている人とそうでない人では、生まれ持った素質が違うと言えるだろう。
それでは科学的根拠に基づき、その謎に迫ってみよう。
太っている人が歌がうまい、2大要素
大きく分けて、2つの要素が考えられる。
どちらも歌のうまさには欠かせないもので、上記で挙げたような後付けのテクニックのようなものではなく、いわゆる「歌唱力がある」と言われるためには必ず身に付ける必要があるものである。
呼吸・筋肉
歌を歌うときにとても重要になってくる呼吸。
腹式呼吸とよく言われるが、実際はお腹で息を吸うわけではない。
この呼吸のときに働いているのは横隔膜、それから骨盤底筋群という骨盤についている筋肉だ。
太っている人は、日頃から普通の人以上の脂肪による負荷の中、呼吸をし生活をしている。
それが、そのままこの横隔膜や骨盤底筋群のトレーニングになっているのだ。
この横隔膜などは呼吸をするたびに運動を行う。
つまり太っている人が呼吸をするということは、普通の人に比べて、背中におもりをのせて腕立て伏せをしたり、誰かを肩車しながらスクワットをしたり、そんなイメージなのだ。
その結果、深く安定した呼吸を行うことができ、声量も大きくなり息の量も余裕をもってコントロールすることができる。
また安定した呼吸ができるということは、それだけ余分な力みがなく、音程やリズム感など、そういった付加的な部分にも繋がってくるだ。
横隔膜などの他にも、足腰の筋肉が強いことで歌うときの正しい姿勢を保つことができ、首周りの強い筋肉が声帯への負荷をサポートしてくれる。
自然と毎日鍛えられているその筋肉が、実はすべて歌をうまくさせるところに繋がっているのだ。
共鳴
大きな楽器を想像して欲しい。
- ウクレレよりアコースティックギター
- 小太鼓より大太鼓
- おもちゃの鍵盤よりグランドピアノ
これがそのまま答えのようなものだが、音は反響する空間が広い方が共鳴し迫力が出る。
これは歌においても同じ道理で、歌を歌うとき人間の体にはいくつか声を共鳴させるための空洞(共鳴腔)がある。
・鼻腔 鼻~口あたりにある共鳴腔
・口腔 口の中の共鳴腔
・咽頭腔 舌の付け根あたりの共鳴腔
こういった共鳴腔によって声を反響させることにより、イメージとしてはお風呂やトンネルでのエコーのような効果が体内で起こっているような状況になる。
そしてその反響によって声量、声の響きや通りは大きく変わってくるのだ。
太っている人は、この空間に適度なスペースがあり、また上記でも書いたようなその周りの筋肉により支えられていることで、より声は響くと考えられる。
またその分負荷も少なく、声がれや声帯のトラブルなどにもなりづらいとも言えるだろう。
最後に
ここまで見てきたように、太っている人が歌がうまいことには科学的・医学的にも根拠があるようだ。
これだけ昔から絶えず話題になるのには、しっかりした理由があったのだ。
呼吸、筋肉、共鳴。すべてにおいて恵まれている体系。
もし自分の体系を何かに生かせないかと考えている人がいれば、ぜひそこに「歌」という選択肢を入れてみてはいかがだろうか?
自分でも想像できないくらいの、驚くべき成果を発揮するかもしれない。