椎名林檎のツアーが凄いと話題!それは既にセルフカヴァー盤「逆輸入~航空局~」で約束されていた!

椎名林檎のライヴ・ツアー「ひょっとしてレコ発2018」でのパフォーマンスが尋常ではないと話題だ。ちょうどデビュー20周年を迎える椎名林檎は、単なるアーティストの枠を飛び越えて、自らをトータルコーディネイトする”パフォーマー”の域に達したのではないだろうかと思わいずにはいられない。

「ひょっとしてレコ発2018」で見せている椎名林檎の強烈な世界は、やりきれない感情、例えばそれは孤独感に凝縮されているのであるが、それが一気に爆発し、観客はその迫力に圧倒されるのだ。それが観客と共有されるという生易しいものではなく、一人、舞台で”椎名林檎”という作品を作り上げる当の椎名林檎は、終始、孤独であり、それはどうあっても観客と共有できないものであり、そのもどかしさを生々しくさらけ出す椎名林檎ののたうち回る様が、そして、心から表現することが大好きな椎名林檎が20年の月日でたどり着いた作品としての椎名林檎なのだ。

この予兆は椎名林檎が他のアーティストに提供した楽曲をセルフカヴァーした「逆輸入」シリーズに表れていた。2014年に発表した「逆輸入~港湾局~」では11人のアレンジャーを迎えて冒険を試みていたが、2017年発表の「逆輸入~航空局~」では勝手知ったるアレンジャーと共に椎名林檎の魅力がとてもよく表れた作品をリリースしている。ここでは「逆輸入~航空局~」を取り上げる。

「逆輸入~航空局~」での椎名林檎の圧倒的な世界観!

逆輸入~航空局~(初回限定生産盤)

「人生は夢だらけ」

アレンジャーに村田陽一を迎えた「人生は夢だらけ」は高畑充希に提供した楽曲で、ジャジーなアレンジでの椎名林檎の魅力全開のナンバーに仕上がっている。

ピアノの伴奏で鍵盤から湧き出る音符に心地よく戯れる椎名林檎のボーカルは白眉で、歌詞の内容はシャンソンといってもいいほどに人生の機微を椎名林檎節で歌い上げられるのだが、「この人生は夢だらけ」との歌詞でビッグバンド・ジャズへと伴奏が変わると、もう椎名林檎の歌世界に魅了されざるを得ない。

「おいしい季節」

栗原千秋に提供された「おいしい季節」は、編曲に斎藤ネコを迎え、「人生は夢だらけ」での華やかさを断ち切るように、とても静かに始まる。しかし、そこは椎名林檎、ためにためていた感情が一気に爆発するように切ない歌詞が歌い上げられ、弦楽器とエレキギターでの演奏とが相まった絶妙のアレンジが光る演奏に自分の感情を託すように、説得力があるボーカルが際立つ一曲だ。

「少女ロボット」

編曲に村田陽一を迎え、ストリングスが深い味わいを醸し出し、これまたジャジーなアレンジにまとめられている。時にヴィブラホーンがきっちりとジャズとして引き締めるアレンジは、村田陽一ならではといえ、演奏はアーバンな趣があるにもかかわらず、歌詞がとても切なく、そのギャップがさらに「少女ロボット」を非凡な秀作へと昇華している。

「暗夜の心中立て」

椎名林檎のツアーが凄いと話題!それは既にセルフカヴァー盤「逆輸入~航空局~」で約束されていた!

石川さゆりに提供された楽曲で、編曲は村田陽一。ブラス隊の華やかな演奏で幕を開ける「暗夜の心中立て」は、椎名林檎が一度歌いだすとブラス隊の華やかさは鳴りを潜めて、椎名林檎のボーカルと椎名林檎ワールド全開の歌世界が花開く、なんとも言えない味わいがあるナンバーに仕上がっている。

椎名林檎の歌い方は石川さゆりを彷彿とさせる歌い方で、それがまた、非常に格好よく、「暗夜の心中立て」の物語が切々と歌い上げられてゆく、魅惑の歌世界が展開する。「逆輸入~航空局~」で白眉と言えるナンバーだ。

「薄ら氷心中」

林原めぐみに提供され、斎藤ネコが編曲を担当している。これまたブラス隊が華やかさを加えながらも、ラテンジャズ風のアレンジが光る楽曲となっている。前曲「暗夜の心中立て」にも通底する歌世界は、椎名林檎にしか書けない世界で、心中をテーマにあまりに切ないその歌世界は、儚く散ってしまうかのような椎名林檎の歌い方が絶妙としか言いようがない。

「重金属製の女」

劇作家・野田秀樹主宰の”NODA・MAP”第17公演「エッグ」の劇中音。ICHIGO-ICHIE(深津絵里)に提供した楽曲で、編曲は名越由喜夫が担当している。北インドの民族楽器の打楽器タブラと弦楽器シタールで味付けされたこの「重金属製の女」は、英語詞で歌われていて、疾走感が心地いい、ロック・ナンバーを聴かせている。「重金属製の女」とはなんとも言い得て妙な曲名だが、個性的なタブラとシタールの音色に引きずられることなく、しっかりと椎名林檎節が光る秀作だ。

「おとなの掟」

Doughnuts Holet(松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平)に提供された楽曲で、編曲は斎藤ネコと椎名林檎自身が担当している。弦楽器のアレンジが素晴らしく、英語詞を歌う椎名林檎の歌声は、表情豊かで、伸びやかな所が秀逸なこの「おとなの掟」は、どこかビートルズを彷彿とさせるナンバーで、椎名林檎のボーカルの懐の深さが際立つナンバーとなっている。

「名うての泥棒猫」

石川さゆりに提供された楽器で編曲は村田陽一が担当。べらんめえ調の歌いぶりが歯切れがよく、また、格好いいナンバーである。ファンキーなアレンジもまた、素晴らしく、ふてぶてしいまでに泥棒猫と居直る歌世界を演じる椎名林檎のボーカルは、唯一無二のもので、石川さゆりという大御所に提供された楽曲とあって、二人の親和性に妙に納得させられる一曲である。

「華麗なる逆襲」

SMAPに提供された楽曲で村田陽一が編曲を担当している。しかし、この曲は版権の問題からか現在聴くことができない。

「野生の同盟」

柴咲コウに提供されたナンバーで編曲は名越由貴夫が担当。ギターサウンドを軸に孤独感が前面に出た歌詞が心を掻きむしるような切なさに満ちたナンバーで、それがバンド演奏で歌われることで一層際立つ。ギターがこんなにも切なく響くナンバーは類がなく、パンキッシュなサウンドが余りにも心の有り様を忠実に表していて、聴くものの心にズドンと響き渡る。

「最果てが見たい」

石川さゆりに提供された楽曲で朝川朋之がアレンジを担当している。
ハープの清らかな音色に寄り添うように英語詩を歌う椎名林檎のボーカルは、どこまでも誠実で、ここでも石川さゆりと椎名林檎の親和性が際立つナンバーとなっている。曲の途中からノイジーなギターサウンドが盛り込まれ、尚更、寂寞とした歌風景が目に見えるような「逆輸入~航空局~」の最後を飾るに相応しいナンバーだ。

まとめ

この「逆輸入~航空局~」では何と言っても石川さゆりに提供した「暗夜の心中立て」が聴きもので、石川さゆりと椎名林檎の組み合わせは二つとない絶妙の組み合わせといえる。

たぶん、思うに椎名林檎は歌うことばかりでなく、”演じること”が性に合っていて、また、それが堂に入ったものであり、シンガーからパフォーマーとして進化した椎名林檎のその進化する様が赤裸々に収録されているのがこの「逆輸入~航空局~」といえる。

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