若き孤高のギタリストReiが、シングル『FLY』を2月21日にリリースする。
今作は、前作の『CRY』と対になる作品で、4曲のニュートラックを収めたCDと楽曲をテーマとした25分ほどのショートフィルム「How to Fly」を収めたDVDの2枚組となっている。3月からは名古屋・大阪・東京・札幌・仙台・福岡と国内6カ所を回るリリースツアー『FLYING R TOUR 2018』を予定している。
国内ミュージックシーンで異彩を放つReiの存在
Reiは2014年にデビューした日本のシンガーソングライター・ギタリストである。ネット検索すると、そのように紹介されているのだが、この字面だけでは日本のミュージックシーンにおけるReiの存在価値を1ミリも表わせていない。
気になって「Jimi Hendrix」や「Jeff Beck」「Char」のウィキペディアを見てみたが、いずれも”ミュージシャン”と記してある。Reiは、日本のポップス界に数少ない、ソロでステージのセンターを飾る事ができる”ミュージシャン”と呼ばれるギタリストだ。
Rei / New Days
Reiは自作の歌を自分で歌うのだからシンガーソングライターなのだが、彼女の音楽性の主体はそのギタープレイにある。まず自分のギタープレイがあり、その上で自分の歌を聞かせる。
だから、ギターを抱えたシンガーソングライターといってもmiwaや藤原さくら、新山詩織といった「ギター女子」達とは全く異なる存在である。
Reiが示すギタリストの在り方
日本において最も上手いギタリストは誰か?という不毛な言い争いは、ネット上でも常に人気のある話題だ。
ギターというのは音楽を表現する道具なので、演奏するジャンルや奏法で一概に上下が決められるものではないのだが、表現の幅が広いため個性も出やすく、またステージのフロントを飾る花形パートでもあるので、多くの人の興味を引くのだろう。
しかし国内においてグループのメンバーとしてではなくソロで活躍するギタリストは意外に少なく、最近メディアで見かけるソロギタリストだと、数々のアーティストとの共演で有名なMIYAVIくらいではないだろうか。
MIYAVI vs 三浦大知 / Dancing With My Fingers
MIYAVIは確かに上手いのだろう。音楽性もスタイリッシュでカッコイイ。あのパーカッシブなギターはなかなかに新鮮だ。しかし、MIYAVIである必然性とギターである必然性において、ギタリストとしての在り方はReiの方が勝っているとあえて言い切ってしまいたい。
それほどReiの音楽はReiのプレイするギターが不可欠であり、Reiの歌はReiのプレイするギターがあって初めて成立し得ると言えるだろう。他に、国内ソロギタリストとしてはCharや布袋寅泰なども居るが、いずれも歌パートではギタープレイは”伴奏”になり、Reiの様にギターと一緒に歌うようなプレイはしない。
Rei / COCOA
こういうギタープレイの在り方は、彼女のルーツでもあるJohnny WinterやStevie Ray Vaughan、Jimi Hendrixなどブルースプレーヤーに多く見られる物で、日本ではちょっと思いつくアーティストが他に居ない。
Reiの挑戦は日本で通用するか?
不毛な「国内最高ギタリスト論争」では○○ぐらいのプレイなら、○○だってできる。みたいな言い合いがよく見られるが、国内で上手いと言われるB’zの松本孝弘や、世界的にもファンの多いLOUDNESSの高崎晃、80年代にソロギタリストとして人気を博した高中正義などでも、MIYAVIの様には弾けなくても、Reiの様にギターを弾いて歌う事は出来るかもしれない。
しかし、ブルースの素養が無い日本では、Reiのようなギタープレイの在り方が受け入れられないのかもしれない。とにかく日本のミュージックシーンでは歌は歌として、ギターはギターとしてキッチリ別けられている楽曲がほとんどだ。
Reiのライブを見てもらえば分かるが、彼女のギタープレイは凄まじい。彼女の歌とギタープレイは切り離せないし、これだけのギタープレイヤーが大して話題になって居ないのが、ちょっと信じられない。
Rei / BLACK BANANA @ Rei Release Live“ORB”
70年代80年代には多くのギターヒーローと呼ばれるプレーヤーが存在していたが、現在では様々な音楽表現の手法が存在し、ギターもその音楽表現の一パートとして追いやられてしまった感がある。
しかしギターの真の醍醐味は、歌と共に楽曲の主役としてスポットライトを浴びる事ができるところであると思う。間奏でこれ見よがしに前に出てきて、長々とギターソロを聴かせたり、ハイテクニックな演奏を競うばかりがギターヒーローの在り方ではない。
ギタープレイと自身の歌声をシンクロさせ、エモーションを伝える事ができるギタリストは、海外には多くいるが、国内ではReiが唯一の存在かもしれない。
そんな音楽の在り方を多くの人に示し、国内ミュージックシーンのレベルを高めてくれるReiの活躍を期待している。