THE PREDATORS(プレデターズ)の2年4ヶ月ぶりとなるシングル「Arabian dance」が1月10日にリリースされる。リリースに先立ち、各所でメディア出演やインタビュー掲載が盛んに行われ、年明けには全国ツアーも予定されており、再始動したTHE PREDATORSの活動にファンは期待を膨らませている。
公式WEB:http://www.thepredators.net/
幻のスーパーバンドTHE PREDATORS
THE PREDATORSはthe pillowsのフロントマン山中さわおとGLAYのベーシストJIRO、
ELLEGARDENのドラム高橋宏貴による3ピースバンドである。以前はストレイテナーのナカヤマシンペイがドラムを担当していた。
the pillowsやGLAYはすでにデビューして30年近く経っていて、今や日本のロック界において中核を担うビッグネームである。ELLEGARDENにしても活動休止中ではあるが、今でも多くのファンが再び活動するのを待ちわびている。
メンバーは、それぞれに主軸となるグループに在籍しながら、共通する音楽性の元に集まり活動をしている、日本では数少ない「スーパーバンド」。それがTHE PREDATORSである。
まずは2年4ヶ月ぶりとなる新曲「Arabian dance」のミュージックビデオ(ショートバージョン)を聴いてみよう。
THE PREDATORS / Arabian dance
どうだい?この音を聴いてガタガタ文句を言う奴は、きっとロックが嫌いなんだろう。そういう人に伝えることは無いから、他所に行ってもらって構わない。
売るための音楽ではないTHE PREDATORSの在り方
THE PREDATORSの中心メンバーである山中さわおもJIROもそれぞれ在籍しているバンドがある。それぞれのバンドのファンであれば、THE PREDATORSなんて趣味のバンドにうつつを抜かしてないで、本来の在籍バンドで力を発揮して欲しいと思う人もいるかもしれない。
THE PREDATORS / SHOOT THE MOON(2008)
ファンよりも、それぞれのバンドを抱えるレーベル、特に他レーベルでの活動となるGLAYの所属レーベル担当者などは複雑な心境だろう。サイドプロジェクトとはいえ、レーベルを越えての活動となると何かと問題が生じることもあり、多少の無理を通さなければなかなか実現しないものだ。
「プロ・ミュージシャン」の定義を「音楽でお金を稼ぐ人」とするならば、彼らは本来所属するthe pillowsとGLAYでそれぞれ活動した方が、多くの聴衆を呼ぶこともできTHE PREDATORSとして活動するより稼ぐことはできるだろう。
それでも彼らは無理を通して2005年から10年以上に渡りTHE PREDATORSとして楽曲を発表し、パフォーマンスを続けている。そこには「売れるための音楽活動」ではない、真のロッカーとして一緒に演るだけの意義があるからだ。
THE PREDATORSが魅せるロック魂
THE PREDATORSは「ポップなニルヴァーナ」を意識した音楽というコンセプトで活動している。
THE PREDATORS / LIVE DRIVE(2008)
しかし、MVやビジュアルを見ると意識しているのはニルヴァーナだけではなく、彼らの原点である”ロック”を再認識するイタズラ心溢れる内容となっている。
THE PREDATORS / TRIP ROCK(2010)
2015年にリリースされた5thアルバム『ROCK’N’ROLL PANDEMIC』は、ロゴから衣装、プロモーションビジュアルまで冗談か?と思うほどラモーンズであった。
THE PREDATORS / Nightless City(2015)
2012年の「Monster in my head」ではルーリードを想わせるメイクでMVを発表している。
THE PREDATORS / Monster in my head(2012)
他にも、ピストルズやラモーンズっぽいチープアニメのPVなど、元ネタを知っているとニヤニヤしてしまうMVを届けてくれる。
THE PREDATORS / Crazy Babar(2012)
しかし、楽曲自体は安易なコピーなどでは無く、オリジナリティのあるものとなっている。バンドの発起人でもあり音頭をとっているのが山中さわおであるため、ややthe pillowsっぽさは否めないが、ストレートでシンプルなロックンロールというコンセプトの元、the pillowsとは違う熱量の作品であることは理解できるだろう。
THE PREDATORS / Smoky Surf Shop Boogie(2015)
好きな事を好きでいつづけることの意味
2020年のオリンピックイヤーを前にして、the pillowsもGLAYも結成30周年を迎える。両バンドとも現在まで止まることなく活動を続けているわけだが、活動が長ければそれだけ”しがらみ”も大きくなるものだ。
メジャーにおいて活動を続けるためには、継続的に利益を上げなければならない。多くのファンに定期的に新作を届け、ライブパフォーマンスを行い、メディアに露出し続けなければならない。それは、メジャーレーベルと契約を交わしたアーチストの責務でもある。
「好きな事」を仕事にしてしまった人に共通する宿命ではあるが、好きで始めたことを好きでい続けるのは、なかなか困難なことだ。
THE PREDATORS / THIS WORLD(2010)
だからこそ、いちクリエーターとして”初心”を忘れない事は大事なことだ。自分がなんで音楽を始めたのか?どんな音楽を愛していて、どんな音に憧れていたのか?そういった原点を失ってしまうと、音楽を続ける意味すら曖昧になってしまう。
THE PREDATORSは一線で活躍する大人のバンドマンが、本気で自分達の原点を再認識するための活動なのだろう。アーチストとしての原点を確認するTHE PREDATORSの活動を続けることは、the pillowsやGLAYというバンドを続けていくために必要なのだと思う。
その「好きな事」に純粋に向き合い抽出された楽曲は、高純度なロックンロールとして我々に届けられる。
まぁ、難しいことを考えるのはやめよう。いくつになってもTHE PREDATORSのロックンロールを楽しめる自分でいたいと思う。