Fear, and Loathing in Las Vegasの約2年ぶり5作目となるフルアルバム「New Sunrise」が10月25日にリリースされた。そう、数々のロックフェスで暴れまくっているので、騒がしいバンド系音楽が好きな人なら聴いたことがあるかもしれない「なんちゃらラスベガス」と呼ばれるバンドだ。カタカナで書くと「フィアー・アンド・ロージング・イン・ラスベガス」と書く。
Fear, and Loathing in Las Vegasの変わらない騒々しさ
相変わらず胃もたれを起こしそうな、ごった煮感満載のアルバムである。
6月に先行してシングルリリースされていた「SHINE」を見ても” 相変わらず”なのは分かってもらえるだろう。
そんな”相変わらず”な彼らも、すでに結成して10年目になろうとしている。彼らのスゴイところは、こんなに特異な音楽スタイルで「相変わらず」なクオリティを保っているところだ。このニューリリース作でも、彼らの音楽を初めて聴いた時の戸惑いと高揚感を新鮮に味わうことができる。
5年前の1stシングル曲がこの「Just Awake」だ。
2010年前後には、前世期に一度死滅した国産のラウドミュージックシーンから新しいバンドが数多く生まれてきた。その中のいくつかのバンドは確実にファンを増やし、大きな動員を呼ぶバンドへと成長してきている。このFear, and Loathing in Las Vegasもそんなバンドのひとつと言える。
世界基準でデビューする2010年代のNew Japan Loud
かつて「ジャパメタ」と呼ばれた国産ラウドミュージックシーンが完全に死滅した後に芽生えてきた”New Japan Loud”とも呼ぶべきバンドの特徴は、初っ端から世界基準であることだ。
2008年デビューのcoldrainや2010年デビューのMAN WITH A MISSION、2013年メジャーデビューのSIMなど、英語詞で歌っているのはもちろん、様々な音楽シーンを取り込み国産だとは思えないスケールの音楽性を持ったバンドが登場している。
彼らの多くはデビューと同時に海外へのアプローチを開始し、評価を得てワールドワイドに活動の幅を拡げている。Fear, and Loathing in Las Vegasもバンド名からしてワールドワイドなスケールを持っていると思うが、彼らの音楽を受け入れているのは主に「日本人」である。なぜなら、彼らの音楽はガラパゴス化した日本の特異な音楽シーンでこそ生息できる、日本独自のラウドミュージックであるからだ。
世界では様々な音楽のミクスチャーが盛んに行われている。ラウドミュージックにおいてもカテゴライズすることが無意味なほど数々の融合が行われ、ラウドミュージックの原点となった「へヴィーメタル」を純粋に継承しているバンドの方が希少なくらいだ。
このミクスチャーというのは日本人独自の音楽の捉え方で、カテゴライズされた様々な音楽ジャンルを”ミックス”した音楽を、日本人が分かりやすく「ミクスチャー」と名付け、またカテゴライズしたものだ。この「ミクスチャー」という言葉が成立する時点で、日本の音楽シーンがガラパゴス化している査証にもなるのだが、その中で究極のミックスとも言える音楽を作り上げているのがFear, and Loathing in Las Vegasである。
Fear, and Loathing in Las Vegasが掲げるたった一つの指標
いや、ミクスチャーと呼ぶならもう少し全体を通してマトマリの様なものがあってもいいのかもしれない。ミクスチャーというよりはザッピングである。そこにはザッピングしてピックアップする音の指標があるだけだ。デビュー以来その指標にブレが無い。だからFear, and Loathing in Las Vegasの音楽性は一貫している。
その指標とは、高揚感であろう。とにかくありとあらゆる音楽の中で、聴く人を「高揚」させる部分を切り取りゴチャ混ぜにしてオーディエンスに叩きつけるのがFear, and Loathing in Las Vegasの音楽だと思える。だから、Fear, and Loathing in Las Vegasのステージはとにかく”ブチアガる”。
ザッピングラウドは枠を度外視して楽しむべき
私自身ひと昔前の人間なので、音楽をなにかとカテゴライズしたがる「カテゴライザー」な性質なのだが、そのような音楽カテゴライザーではFear, and Loathing in Las Vegasの音楽は楽しめない。Fear, and Loathing in Las Vegasの音楽を聴くためには、音楽を楽しむために全く必要のない”音楽カテゴリー”という概念を捨てなければならない。
こういった「受け入れるために枠を度外視する。」という行為は、日本人は意外と得意なのである。そうやって世界中の宗教を受け入れ、クリスマスもバレンタインもハロウィンも勝手に取り込み、世界の偉人を女の子に変えてしまい「日本人は未来に生きてんな。」と海外に驚きを与えている。
Fear, and Loathing in Las Vegasのザッピングされた音楽性がこれから先、世界に認められるかは分からないが、日本人らしい感性でこれからもFear, and Loathing in Las Vegasのブチアゲ系ラウドミュージックを楽しんでいきたい。