初音ミク10周年で有名ボカロPが続々帰還・「初音ミク」の衰えない魅力とは

今時初音ミクを知らない音楽ファンはいない。

「新世代の歌姫」としてもてはやされ、2010年代に突入するとNHK「クローズアップ現代」でも取り上げられるほど定着した。
初音ミクを使用して楽曲を発表していたP(プロデューサー)は次々とデビューし、バンドやソロとして活動。
アイドルなどに楽曲を提供しているものもいる。

初音ミク10周年で有名ボカロPが続々帰還・「初音ミク」の衰えない魅力とは

いまや音楽シーンに根付いた「ボーカロイド」という概念だが、近年はそれが「当たり前のこと」となり、ことさら注目を浴びることはなかった。
が、2017年はボーカロイドファンにとって激動の一年であった。
初音ミク10周年、「マジカルミライ(初音ミクを取り巻く創作文化を発信する、ユーザーを中心とした文化祭)」5周年と、まさにアニバーサリーイヤー。
そして古くからのリスナーが「戻って来ざるを得ない」大きな事件が次々に起こった一年でもあったのだ。

初音ミク10周年記念コンピ『Re:Start』、伝説のPたちが集結

初音ミク10周年で有名ボカロPが続々帰還・「初音ミク」の衰えない魅力とは

2017年8月30日にリリースされた『Re:Start』。

DISC1には人気ボカロPによる書き下ろし楽曲が、DISC2には大ヒットし「伝説入り」を果たしたボカロ楽曲が収録されている。
DECO*27、ナユタン星人、ピノキオピー、Mitchie M、れるりり、40mP、Neru、Orangestar、n-buna、halyosy、和田たけあき(くらげP)、wowakaと、連なるP名も錚々たるものである。

初音ミク10周年記念アルバム「Re:Start」クロスフェード

10周年だけあってファンもニコニコ動画もお祝い&お祭りムードで、参加するP名が発表されるたびにワクワクして続報を待った。
しかし、今回は「ニューアルバム発売」ということだけにとどまらず、「有名Pの帰還」が世間ではクローズアップされたのだった。

米津玄師がハチ名義で新曲発表

「砂の惑星 feat.初音ミク」ハチ

初音ミクの一大ムーブメントの重要な位置を担ったハチ。
本名の米津玄師で現在は活動し、邦楽シーンを盛り上げている彼が突如ニコニコ動画に新曲を投稿。

「ハチさんが帰って来た!?!?」と古のニコニコ民が動画に殺到。
しかもMVのアニメーションは南方研究所、と、最高に嬉しい作りとなっている。

「マジカルミライ」のテーマソングとして発表されたものだが、その歌詞と映像の意味深さから

「もうハチ名義ではこの曲が最後ってことなのかな…」
「ハチさんは本当にミクが好きなんだね」
「今までの自分と決別する歌に見える」
などなど、様々な憶測を呼んだ。

過去ヒットした初音ミクの楽曲を想起させる歌詞が含まれており、それも波紋を呼ぶ原因となった。
筆者としては、この曲はそのまま素直に受け取るのが一番良いと思う。

アーティストの発信するメッセージは受取り手に委ねられているもので、発信した側で「なんでこう受け取ってくれないんだ!」とごねることはまずない。
深読みも楽しいが、「米津がまた”ハチ”名義で曲を作ってくれた」という喜びを無くさない方が重要ではないだろうか。
ハチ独特の調声が耳に心地よい、中毒性の高い一曲である。

kemu、wowakaも新曲を投稿!ニコニコ動画が一気に「あの頃」に

ハチだけではなく、2017年は次々と有名ボカロPがニコニコへ帰還した。

拝啓ドッペルゲンガー(KEMU BOXX)

『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク / wowaka

kemuは使用ボーカロイドがGUMI、wowakaはコンピレーション参加曲ではあるものの、このヒットメーカーたちの帰還にボーカロイドファンは騒然。
2017年はファンにとって記念すべき一年となった。

「初音ミク」は10周年、「マジカルミライ」は5周年!奇跡のアニバーサリーイヤー

なぜこのように「有名ボカロPの新曲投稿」が一斉に起こったのか。
まず、ひとつには2017年がボーカロイドという音楽ソフトにとって節目である年であった、ということが挙げられるだろう。
もはや知らないものはいない「初音ミク」が発売されて10年、そのユーザーが主体となって参加する「マジカルミライ」が初めて開催されてから5年。
「ここらでいっちょお祭り気分に乗っておくか」というムードがボカロPたちになかったとは言い切れない。

そもそもボカロ界隈は横のつながりが非常に強く、P同士がしょっちゅうオフで会っていたり、創作論を交わしていたりする。
となると、一連の現象は「Pたちが組織的に起こしたもの」とも考えられる。
何にせよ、この嬉しい「事件」が、アニバーサリーイヤーに起きたことは書き留めておきたい。

なぜボーカロイドは私たちを惹きつけるのか〜新世代の歌姫への思い〜

ボーカロイドにまだ種類が少なく、「KAITO」や「MEIKO」しかなかった時代。
ボーカロイドは音楽ソフトでしかなく、DTMをしている人間が「ボーカルが見つからない時に”しかたなく”使うもの」でしかなかった。
初音ミクがじわじわと人気を伸ばしていた際に、私はDTMをメインに音楽活動をしているアーティストに、「ボーカロイドについてどう思うか」と聞いたことがある。

そのアーティストはまだ初音ミクを知らず、「ボーカルがどうしても欲しい時だけ使うべきじゃないかな」という回答だった。
その後数ヶ月たち、彼の耳にも「初音ミク」の存在が入った頃に、
「あの時君は初音ミクのことを言っていたんだね。面白い現象だと思う」
と述べていた。

初音ミクがDTM者に受け入れられた要因は、それまでのボーカロイドより「使い勝手」がよかったからだ。
中間音が存在し、声の調整がたやすく、歌わせやすい。
つまり完全に「道具(ソフト)」として受け入れられたのだが、そのキャラクターを補強して言ったのは間違いなく、道具として使用していたDTM者たち自身だったのだ。

初音ミクはロックを歌い、演歌を歌い、ポップスを歌った。
ネギを振り回し、家族が増え、CGが笑った。
それは聴くものに「想像」する余地を与え、作り物の感情というキーワードは多くの創作を生み出した。

今や「ボーカロイドはどうしても必要な時だけ使うもの」という観念はない。

初音ミクは日本初のヴァーチャル・ディーヴァとしての立ち位置を確固たるものにし、ファンを全世界に増やし続けている。
初音ミクは「道具」として生まれ、作り手の感情を届けるものとしての使命を果たし、今も歌い続けている。

その「結果付与されたキャラクター性、SF的存在感」が、私たちを魅了してやまない一因なのだろう。

文:阿部春泥

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