BRIDEAR「嬢メタル」やめるってよ

BRIDEAR「嬢メタル」やめるってよ

実力派ガールズメタルバンドとして着実に支持を拡げ、3度のヨーロッパツアーで海外にもその存在を示しているBRIDEAR(ブライディア)の、新ギタリストを迎えて制作されたミニアルバム「HELIX」が4月11日にリリースとなった。

先行して公開されたリードトラック「Dear Bride」は、BRIDEARの音楽性を確実に更新する” 新生BRIDEAR”を示すポップチューンとなっており、従来のファンに少なからず衝撃を与えている。

今、盛り上がりを見せる国内ラウドシーンの中で、BRIDEARがどこに向かうのか?シーンの動向と共に探ってみたいと思う。

ジャパニーズメタルを継承するブライディア

現在、ハードコア化が進むアイドルシーンと盛り上がりを見せるラウドロックシーンの裏で「嬢メタル」と呼ばれるガールズメタルバンドのブームが拡がりを見せている。

BRIDEAR / Dear Bride

2010年以降、ガールズメタルバンドAldious(アルディアス)の成功と共に、アゲ嬢を彷彿とさせるそのルックスから「嬢メタル」の呼び名でブームに火が付き、数多くのガールズメタルバンドがシーンを賑わせる中、2011年に福岡で結成されたBRIDEARは、地元福岡を拠点にファンを拡大し「嬢メタル」ブームの一角を担うバンドとして急成長した。

公式サイトのディスクリプションには、

彼女達のサウンドは、ジャーマンメタル、北欧メタルの流れを継承しつつ ボーカルのKIMIのキャッチーな声を活かしたメロディアスな楽曲が特徴になっている。激しいライブパフォーマンス定評がある。

とある。

BRIDEAR / IGNITE

BRIDEARは、その確かなテクニックとツインギターが織りなす抒情的なメロディーが魅力ではあるがその音楽性は非常に「日本的」で、ジャーマンメタル、北欧メタルと言われると違和感がある。

80年代のジャパメタブームを知っている身からすると、BRIDEARのメロディ重視で様々なメタル的要素を取り込んだ「歌謡曲」的な楽曲は、非常にジャパニーズメタル的であると感じる。

80年代ジャパニーズメタルブームを模倣する「嬢メタル」ブーム

BRIDEARに限らず現在の「嬢メタル」ブームを見ると、右へならえのルックスも似たり寄ったりの音楽性も、排他的で閉塞的だった80年代ジャパニーズメタルを彷彿とさせる。

Anthem / The Artery Song (80年代ジャパニーズメタル代表バンド)

ブラックミュージックの素養が無く、狭い地域で単一民族として同じ音楽を聴いて育つ日本人によるジャパニーズメタルは、歌謡曲にも見られる”メロディ”と”サビ”を重視したドラマチックな楽曲構成が特徴的で、キャッチーな楽曲の多いLAメタルブームと共に海外でも広く受け入れられていたが、その後HipHop的な要素を取り入れ90年代に開花したニュー・メタルの流れに取り残され、LAメタルの終息と共に死んだ。

そして2000年以降、国内ラウドロックはニュー・メタル以降のエレクトロやHipHop的要素を取り込みつつ「クールジャパン」的な要素も取り込み、再構築され拡がっている。

Crossfaith / Wipeout (21世紀ニュージャパンラウドの雄)

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そんな国内ラウドシーンにおいて「嬢メタル」として括られるバンドは、ものすごく「画一的」なルックスで、その音楽性も80年代のジャパニーズメタルで見られたメロディ重視、サビ重視の「歌謡曲」的な楽曲が多く、多様化を見せるラウドミュージックシーンにおいて、どこか古臭い印象を与える。

Aldious / Go away (嬢メタルブームの火付け役バンド)

決して古い事が「悪」だとは思わないが、どうして「嬢メタル」のバンドたちは揃って古き良き歌謡曲的な、アニソン的なヘビィーメタルを歌うのか?こういう音楽も決して嫌いではないが、ラウドミュージックファンとしては21世紀的な”多様性”も求めたい。

BRIDEARの変化が示す「嬢メタル」の終焉

個人的な意見を言わせてもらえば「嬢メタル」なんてルックス重視の閉鎖的なブームはさっさと終わればよいと思っている。

女性が派手なアゲ嬢メイクで露出度高めな衣装を着て、ステージで連獅子の様に激しく頭を振ればそりゃ見栄えは良いだろうが、自分達で「激しいライブパフォーマンス」と言ってしまうのはアホらしい。

楽器に縛られない分、今どきのハードコアアイドルの方がよっぽど激しいライブパフォーマンスをしている。

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BRIDEARのような実力を持ったバンドが「嬢メタル」なんてチンケな枠に縛られて狭いマーケットでしか名を知られないのは不幸なことだ。

BRIDEAR / Rebirth

公式で公開されているショートMVなのに、バンド名とアルバムタイトル間違えたまま2年も放置されてるというこの体たらく・・・こういう十把一絡げなプロモーション姿勢に「嬢メタル」のマーケットがどれだけ小さいか見てとれるというものだ。

かつてLAメタルブームの中でそのいちバンドとしてデビューしたBon Joviは、初期のLAメタル然とした音楽性やルックスを変化させ、ブームが終焉した後もアメリカを代表するバンドとして活動している。

Bon Jovi / Walls (2018/4/1 公開)

確かな実力で海外オーディエンスを魅了するBRIDEARが、新体制となり「嬢メタル」に縛られることなく今後どんな変化を見せていくのか、大いに楽しみである。

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