
2013年のデビュー以来、自主レーベル「JIJI RECORDS」より次々に楽曲を発表し、ライブツアーを重ねファンを拡大してきた感覚ピエロが、2月21日にファーストフルアルバム『色色人色』をリリースした。
しかもこのアルバムは、3月よりスタートする2度目の47都道府県縦断ツアーの先行チケット購入者には、全曲無料でダウンロードできるシリアルコードが配布され、ライブに来るなら音源は”タダ”でくれてやるというロックバンドらしい豪気さで配信された(先行受付期間: 1月14日まで)。
感覚ピエロの存在がエンターテイメントの在り方を揺るがす
2013年に結成された感覚ピエロは、未だどこのマネジメント会社にも所属せず、自主レーベル「JIJI RECORDS」を立ち上げ、フルセルフプロデュースで活動している。
世に溢れるアマチュアバンドやニコニコ動画で動画投稿している様なアーティストであれば全部自前なのは当たり前なのだが、感覚ピエロは自主レーベルから全国流通盤も含めハイペースに楽曲リリースを重ね、アマチュアの枠を越えた活動を展開している。
そして、2016年には楽曲「拝啓、いつかの君へ」がドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に起用され認知を拡大し、その後もキャンペーンCMに楽曲を書き下ろしたりアニメ主題歌として楽曲が起用されたりと、インディーズでありながらメジャーな活動をするバンドとしてMONGOL800以来の快挙を成し遂げている。
感覚ピエロ / 拝啓、いつかの君へ
ディストピアな音楽シーンに感覚ピエロが示すもの
音楽に対する付き合い方は人それぞれだが、音楽を摂取しないと生きられない「No Music No Life」な人種にとって、現在はずいぶんと生きづらい状況になっている。
ひと昔前までCDの売り上げランキングは正常に機能し、ランキング上位には人気によってフィルタリングされた「聴く価値のある音楽」がリストアップされ、それを基に人気のあるアーティストはメディアにも取り上げられるので、こちらは座ってテレビや雑誌を見ているだけで自ずと良質な音楽にリーチする事ができた。
ところが現在では「おさわり券」やトレーディングカード代わりに使われるプラ板の売り上げ枚数がランキングされ、斜陽となった地上波TVや雑誌メディアを我が物顔で独占している日本音楽事業者協会および大手芸能プロダクションのパワーゲームのおかげで、巷で支持を得ている「音楽」やムーブメントをお茶の間で手軽に受け取ることは難しくなっている。
感覚ピエロ / 疑問疑答
昔の習慣のまま、利権と囲い込みにまみれたテレビや雑誌、CD売り上げランキングから「音楽」を摂取していると、やがて「聴く価値のある音楽」からは隔離され、自由に音楽を聴く事ができなくなるという「ディストピア」な状況が作り上げられている中で、感覚ピエロの存在意義は大きい。
コンテンツクリエーターが感覚ピエロを起用する訳
感覚ピエロはインディーズでありながら、先述したドラマでの楽曲起用に続き、昨年公開された映画『22年目の告白 -私が殺人犯です-』に主題歌「疑問疑答」を書き下ろし、現在も放映中のアニメ「ブラッククローバー」の1期オープニングとして「ハルカミライ」が起用されている。
感覚ピエロ / ハルカミライ
感覚ピエロの音楽は、インディーズにありがちなマニアックさや過激さは無く、あくまでもメジャー志向の受け入れられやすさがある。クオリティもメジャーとの遜色は無く、感覚ピエロがすべて自前で活動しているインディーズバンドである事など楽曲を聴いただけでは分からない。
となれば、変なしがらみに囚われず自由にコンテンツを作りたいクリエーターにとって、感覚ピエロの楽曲起用は魅力的だ。インディーズである感覚ピエロとタイアップすることは、起用する側にとってレーベルからのスポンサードなど金銭的なメリットは得られないが、クリエーターにとってお金には代えられない「自由」を手にすることができる。
感覚ピエロが誘う音楽のユートピア
ファーストアルバム『色色人色』にはドラマやTVアニメ、ゲームコンテンツへの書き下ろし楽曲の他、YoutubeにおいてMVが年齢制限認定をうけた「A BANANA」も含む全13曲が収められている。
感覚ピエロ / A BANANA(年齢制限あり)
しかし、アルバムに収められた楽曲は言わば感覚ピエロの音楽に触れる為の”しおり”に過ぎない。プラ板に収められた音楽データは、リリースに合わせて行われる47都道府県ツアーで彼らの音楽を摂取する事で完成する。
Youtubeに数多くアップされている話題性のあるMVも、彼らの音楽世界に誘うフックに過ぎない。それが彼らのプロモーションスタイルであり、しがらみから解き放たれた音楽摂取の在り方となるのだろう。
感覚ピエロ 1st Full Album「色色人色」ダイジェスト
「No Music No Life」な人たちにとって、いささか不便な現在の状況がいつまで続くのか分からないが、メディアを支配するエンタメマフィアたちを尻目に、自由な「音楽」を届けてくれる感覚ピエロの活動に注目していきたい。