2018年にヒットしたバンド・アーティストは数多くいるが、まだまだ世間の評価を待っているものは多い。
個人的には昨年デビューをしたバンド「ヨルシカ」が、もっともっと世の中に認知されていくべきだと思っている。
期待値の高い彼らが少しでも正当な評価を得られるように、こちらでその魅力を紹介してみたい。
音楽の配信が普及し、玉石混合が当然となっている今だからこそ、実力のあるバンドを逃さないように注意をする必要がある。
ヨルシカでしか聴けない音楽を、ぜひ聴き逃すことのないようにお願いしたい。
ボカロPによる異色バンド
透明エレジー
ヨルシカは2017年に、有名ボカロP「n-buna」が作ったオリジナルバンドだ。
2013年にニコニコ動画に投稿した楽曲「透明エレジー」が大ヒットし、一躍人気Pの一員となったn-bunaは、その後も精力的な音楽活動を続けていく。
オリジナルのCD作成も続々と行われ、全国展開を行える数少ないボカロPとなっていった。
人気獲得後毎年のように何かしらのアクションを起こしてきたn-bunaだが、2017年に選んだのは「バンド」という形式だったようだ。
ボカロP出身のアーティストがバンドを作るという例はこれまでにもあったが、ヨルシカはその中でも特別な異色さを感じさせる。
それはn-bunaの持つ独自の音楽性と、既にライブで共演していたボーカリスト「suis」との2人で構成されるという点にあるのだろう。
ちなみにバンド名のヨルシカは、1stアルバム「夏草が邪魔をする」に収録されている楽曲「雲と幽霊」の歌詞にある「夜しかもう」から取られている。
肉声を使うことによる変化
負け犬にアンコールはいらない (Album Trailer)
ヨルシカは、本当の意味でのバンドとは違ったスタイルであるといえる。
新たに加入したのはボーカル1人であることから、ボカロという楽器を人間の声に置き換えただけだとも考えられるかもしれない。
しかし正式にボーカルという「肉声」を起用したことでn-bunaの音楽性は確実に広がり、これまでとは違う雰囲気を持つようになった。
具体的には売りであった疾走感のあるメロディと尖った歌詞に、「憎々しさ」が備わったように感じられる。
憎々しさとは、つまり「肉々しさ」であり、人間の感情や肉体性が楽曲に極限まで凝縮されていることを指す。
それによってn-buna本来の魅力である人間味が膨らみ、圧倒的な存在感を示すことができるようになったのだ。
特に2ndアルバム「負け犬にアンコールはいらない」の楽曲はその兆候が強いように思え、「爆弾魔」や「準透明少年 」などは痛いくらいの肉体性を感じさせる。
準透明少年
仮にヨルシカの曲をボカロに歌わせたとして、これほどの迫力が生まれるかというと疑問が残るだろう。
そういった肉声ならではの音楽づくりにつながったことが、n-bunaとヨルシカの将来性を示唆しているように筆者は感じている。
音がぶつかり合うのに透明感のある楽曲
言って。
声と音がぶつかり合うように交差する楽曲も、ヨルシカの魅力を引き立てるのに一役買っている。
suisのすぅっと抜けていくような声の裏では、常にギターやその他の楽器が強めに響いていて、それぞれが自己主張を止めることがない。
1つを持ち上げるために他のパートが遠慮することはなく、常にすべての音がフル稼働しているような印象を受けるだろう。
一見そのような構成では、「音がケンカしてうっとうしくなるのでは?」と思ってしまう。
しかしヨルシカは、むしろ主張し合う場を提供することで音をのびやかにし、透明感を持たせることに成功している。
パンクに求められるような一種の攻撃性を持ちながら、それでいて独特の透明感を持っているのが、今後もヨルシカ最大の武器となることだろう。
2018年に無事認知されてほしいアーティストの筆頭
ヨルシカほどの実力があれば、そのうち売れるだろうとは思う。
しかし一方で、多くの新規音楽たちの流れにのまれてしまうのでは、という心配も尽きない。
この機に興味を持てたのなら、ぜひヨルシカの今後に注目していただきたい。
認知されれば長く名曲を提供してくれる、素敵なアーティストになってくれるはずだ。