30周年を迎えられるバンドは、決して多くない。
まして1度は契約を打ち切られたこともある「エレファントカシマシ」が、この偉業を達成したのには、なにか特別な意味があるのではと勘繰ってしまう。しかし彼らは、特別なことはなにもしていない。ただバンドとして悩んで、疾走してきただけなのだ。
まだ彼らの音楽に触れたことがないという人は、この30周年という機会を逃す手はないと思われる。
過去のエレカシを遡るにも、これからのエレカシを聴くのにも、絶好のタイミングだといえるだろう。
宮本浩次を中心としたパワフルなバンド
ボーカルであり、楽曲の作詞作曲も行う宮本浩次を中心としたエレファントカシマシは、既に全員が50歳の大台を超えている熟練バンドだ。
デビュー前から破天荒なスタイルで、音楽に対しての情熱を原動力とするような力強さに満ちていた。その姿勢と存在感は、30年たった今でも変わらない。
おはよう こんにちは
パワフルなサウンドとエネルギッシュな歌詞は、多くの人を自然と魅了し、デビュー段階から期待の声がささやかれていた。そのスケールの深さから、「忌野清志郎」を思い出す人もいるかもしれない。
このときからすでに、迫力においてエレカシを凌駕する同世代のバンドは少なかっただろう。しかし音楽業界は、迫力と勢いだけでは生き残れない世界であると、彼らは知ることになる。
衝撃的なデビューは2回行われる
エレカシは1988年に、アルバム「THE ELEPHANT KASHIMASHI」でデビューを飾る。今聴いても確かに力があり、聴きごたえのある楽曲ばかりだ。
ファイティングマン
その後も宮本浩次の魂をさらけ出すような曲が発表され続けるが、残念ながらレコード会社を納得させることはできなかった。1994年、エレカシはレコード会社との契約解除に至ってしまう。
衝撃的なデビューからわずか6年。エレファントカシマシは音楽業界から姿を消してしまう。しかし彼らは楽曲を作り続け、ライブも積極的に行っていく。
その結果1996年、再び彼らはデビューを果たす。そのときに発表された楽曲がこちらになる。
悲しみの果て
楽曲のクオリティは初期から十分なものを持っている彼らが、明らかに変化を遂げた様子がうかがえる。
再デビューとなったこの「悲しみの果て」がロングヒットを記録し、音楽業界でのエレカシの存在は前よりも大きなものとなった。
契約終了という挫折を味わったエレカシは、これ以降楽曲のリリースについての考え方を変えたように思われる。メディアへの露出も増え、ラブソングなども歌うようになった。
しかしエレカシの持つ初期からの衝動のようなものは、その後もしっかりと息づいていた。それは彼らにとって最高の売り上げを残したこちらの曲を聴けばすぐに理解できる。
今宵の月のように
ぽろっと零れ落ちるような歌詞が、なつかしさすら感じるバンドサウンドに乗ることで、涙を誘うような楽曲となっている。
「今宵の月のように」を代表に、これ以降のエレカシには「熱い涙」を流せるような曲が増えだした。
俺たちの明日
それは1つの挫折をしっかりと飲み込んだ男たちだからこそできる所業なのかもしれない。
エレファントカシマシは、この楽曲を機にまちがいなく一流アーティストとなった。その結果さらに音楽に追及できる環境が出来上がり、新しい方法にも挑戦するようになる。
たとえばプロデューサーに「小林武史」を迎えたり、ミニアルバムを発表したりといったように。
暑中見舞 -憂鬱な午後-
そしてバンドの根底にあるものをそのままに、本当にそのままに30周年という歴史を作り上げる。
どの曲から聴き出しても、いつだってエレカシはエレカシなのだ。
新曲のRESTARTの意味
エレカシは2017年の11月8日に、「RESTART/今を歌え」をリリースした。
これは50枚目という記念すべきシングルであるのと同時に、これからのエレカシをタイトルで表現した粋なファンサービスであるように思える。
RESTART
今を歌え
要するにこの楽曲が歌う通りのことを、30周年以降も続けてくれるという、メンバーからの宣言なのだ。
彼らの楽曲には、肩をぐっとつかまれて、強く揺さぶられるような魅力がある。言葉の響き方も、音の届き方も、他のアーティストとまったくちがう。エレカシでしかできない音楽がある限り、きっと彼らは全身全霊の楽曲を作り続けてくれるだろう。
このまま40周年、勢い的には50周年くらいは期待したいと思う。エレカシならできそう……と思えるのが、彼らの積み上げてきた信頼の証なのかもしれない。