年も明け七日正月を過ぎてもエンタメニュースに取り上げられる紅白歌合戦。2017年の紅白は視聴率が歴代ワースト3位だったそうだ。引退を発表した安室奈美恵や特別枠での桑田佳祐の出演など見所はいくつかあったが、終わってみればネガティブ要素の多い記事が目立つ。
2017年の大晦日、” 対民放テレビ”の姿勢を露わにしているAbema.tvが用意したプログラムは、「朝青龍を押し出したら1000万円」と、今年3回目となる「ももいろクローバーZ」のカウントダウンライブ「ゆく桃くる桃 ~第1回 ももいろ歌合戦~」であったが、その「ももいろ歌合戦」は色々考えさせられる内容であった。
オワコン?ももクロがこだわる紅白
ももいろクローバーZ(ももクロ)が結成当初から目標としていた紅白歌合戦への出場を果たし、その後3年連続で出場するも2015年に落選。ももクロにとってもファンにとっても4回目での紅白落選は少なからず衝撃を与える中、公式HPで「紅白卒業」を宣言する。
この紅白卒業宣言については物議を呼ぶこととなり、お断りされた相手に三行半を突き付ける行為が”思い上がり””身の程知らず”といった印象を与え、ファンの間でも「落選の腹癒せに卒業宣言などしなくても良かったのでは?」と未だに疑問視されている。
実際、前年にもう一つの目標であった国立競技場でのライブを実現させ、その後もKISSとのコラボや主演映画の公開と映画賞の受賞など、向かうところ敵なしといった活動を続けている中で、初めて”ミソ”を付けられたカタチとなった「紅白落選」によって、ももクロフィーバーはひとつの終わりを迎えたと言える。
やらなくていい企画を敢えてやるチーム「ももクロ」の意図
大晦日にカウントダウンライブを行うアーチストは多い。ももクロだって決して少なくは無い集客力を持っているのだから、自分達のファンを集めてカウントダウンライブを行えば、ファンは充分満足するだろう。
しかし、ももクロはカウントダウンライブ開催3年目にして、ありえないほど豪華なゲストを呼んで紅白に対抗するように「歌合戦」を開催した。完全に”やらなくていい”企画である。
つまりこれは、「紅白卒業宣言」を疑問視する人たちへのひとつの回答であると共に、チーム「ももクロ」が挑む相手への狼煙であった様に思える。
「ももいろ歌合戦」が再現するホンモノの「紅白歌合戦」
年明け、ジャニーズ事務所社長ジャニー喜多川氏の「年寄りも欲しい。『NHKはいいのかな?』と思った。」という苦言?が話題となったが、ジャニーズ事務所の無節操な市場独占のために紅白出場が叶わないタレントのファンなどは心中穏やかではないだろう。
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しかし、80歳を越えたいち老人の意見としては真っ当だ。そして、ジャニー喜多川氏が見たかった「歌合戦」を実現していたのが「ももいろ歌合戦」だったと思う。
「第1回 ももいろ歌合戦」完全生中継!田中将大の参戦決定!
「ももいろ歌合戦」は出場者を男女で分けること無く、大型モニターひとつだけという非常に素朴なステージで大御所から若手までバランス良く配分された出場者が「フル尺」でじっくりと歌を聴かせる演出がされており、現在の仰々しく演出過多でせわしない本家「紅白歌合戦」へのアンチテーゼが示されたものだった。
確かに筆者が幼いころ観ていた「紅白歌合戦」はそのような雰囲気であった。年越しを迎える落ち着いた時間に、家族で屈託なくまったりと観る歌番組であった「紅白歌合戦」を「ももいろ歌合戦」はほぼ完全に再現していたように思う。
あえて紅白卒業を宣言して、自前で「ももいろ歌合戦」を開催したのは、ももクロが”出演したい”と思う「紅白歌合戦」が、すでに失われていたということなのかもしれない。
ただのパロディーではない「ももいろ歌合戦」で挑む先
「脱紅白歌合戦」「反紅白歌合戦」というとNHK放送局との確執を想起する人が多いかもしれないが、ももクロが挑む相手はNHKではない。
実際「ももいろ歌合戦」も大半は紅白出場経験のある出演者ばかりで、水前寺清子や加山雄三に至っては” 紅白歌合戦の顔”とも言えるほど多大な貢献をしており、本家「紅白歌合戦」へのリスペクトが充分に感じられる内容であった。
「紅白卒業宣言」をした2016年以降、メディアにおいてももクロは不遇の扱いを受けている。歌番組への出演はめっきり減り、2017年8月にリリースした「BLAST!」はオリコンチャート3位に付け、『MTV VMAJ 2017』で「最優秀邦楽グループビデオ賞」を受賞しているにも関わらず、民放TVの歌番組で披露されていない。
ももいろクローバーZ / BLAST!
今現在のTVは昔よりも如実に、「視聴者が見たい情報」よりも「発信者が見せたい情報」を発信するメディアとなっている。視聴者数が減った放送局に対して、ある意図を持って放送内容を偏向させることはずいぶんと容易だ。
紅白の出演アーチストについて疑問視する声が毎年のようにニュースになるが、出演者の偏りは紅白に限ったことではない。今やすべての地上波放送局の歌番組は、ほぼ「同じ顔ぶれ」になってしまっている。日本には彼らしかアーチストが居ないかのようだ。
ももクロは2018年の5月で結成10年を迎える。彼女達が目指す「メンバー固定で10年20年と続くアイドルグループ」となるためには、現在のMedia ignoreの状態を打破することが必要だ。
それは、彼女たち以外の「TVに出られない人気タレント」に対するひとつの光明にもなるだろう。
2018年、10周年となるももクロの挑戦に注目している。
※有安杏果のグループ卒業を受けて→ももいろクローバーZが上げた狼煙の行方