今年の下半期、「打上花火」と「ステップアップLOVE」を立て続けにチャートに送り込み、注目されているDAOKOのメジャー2ndアルバム『THANK YOU BLUE』が12月20日にリリースされた。
アルバムに収められている「打上花火」と「ステップアップLOVE」は、今年話題となったアニメ作品『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』と『血界戦線 & BEYOND』にそれぞれ起用されている。
それも、ただのアニメ起用楽曲と言うだけでなく、「打上花火」は今ブレイク中の米津玄師と、「ステップアップLOVE」はカリスマ的アーチスト岡村靖幸とのコラボ曲ということで、Mステをはじめとする音楽番組に出演を重ね、世代を超えて確実に認知を拡げメジャーに攻め込んでいく勢いを感じる。
DAOKOとは何者か?
DAOKOは2011年にニコニコ動画において、若干15歳でササノマリイの「戯言スピーカー」のラップバージョンを投稿し注目されインディーデビュー。高校在学中は表に顔を出さない活動ながら、m-floやTeddyLoidなどのコンポーザーと共作を重ね、2015年に高校卒業と共にTOY’S FACTORYよりメジャーデビューしている。
DAOKO / ShibuyaK
「ぼくのりりっくのぼうよみ」などと同じ、R&Bやヒップホップ感の希薄な”ニコラップ”出身のアーチストであるが、メジャーデビューに至るまでの活動の広さや客演の多さに、日本のミュージックシーンの一役を担っていくアーチストとしての本気度を感じることができる。
虎の威を借るだけではないDAOKOの実力
今年リリースされチャートを賑わせた2曲が、米津玄師や岡村靖幸といった既存ファンの多いコンポーザーであったため、そこでDAOKOの名前を知った人も多いだろうと思われるが、楽曲を聴いてもらえば、ただのゲストミュージシャンなどではなくDAOKOの声と才能あっての作品となっていることは認めてもらえるだろう。
DAOKO × 米津玄師 / 打上花火
DAOKO × 岡村靖幸 / ステップアップLOVE
特にこの「ステップアップLOVE」のMVはDAOKOの親世代である我々40代~50代の岡村靖幸ファンには、ノックアウト必至の演出がなされている。岡村靖幸がバスケットボールを持って登場するだけで筆者などはニヤニヤしてしまう訳だが、岡村靖幸の後ろからDAOKOがロングシュートを決め岡村靖幸が振り向く。
岡村靖幸 / あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう
「あの娘」はどんな顔をするか分からないが、岡村靖幸はむくれたような、困ったような顔をすることが分かったところで曲が始まる。ちなみに、歌詞の内容はバスケットボールとは全く関係が無い。
つまり、このMVは我々40代~50代をがっちりターゲットにしているということである。岡村靖幸のファンであれば、彼が客寄せパンダ的な安易なコラボなどしない事は十分知っている。
実際、岡村靖幸らしい楽曲の中でDAOKOの声と才能は素晴らしいパフォーマンスを発揮している。
DAOKOのメジャー化戦略
今年アニメ映画としてリメイクされた「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」も岩井俊二監督の実写映画版は1995年の公開であり、今40代~50代になっている当時の”若者”が主な支持層であった。
若干20歳の若い才能を、40代~50代の層にリーチさせるのはプロモーション的にも意味がある。それは、高年齢層の方が経済的余裕がありCDなどのメディア購入率が高いから。というような単純なことではない。
今回、DAOKOが岡村靖幸とコラボしてリーチを図った40代~50代の層というのは、組織において”決定権を持つ層”なのである。つまり、企業タイアップやコンテンツへの楽曲起用、イベントへの出演者選定などにおいて、最終決定権を持つ世代に認知されることで、DAOKOの活動はスムーズになる。
DAOKOはこれまで、サブカルチャーで活躍する一流のコンポーザーたちに認められ、コラボすることで経験と実績を重ねてきたが、2ndアルバム『THANK YOU BLUE』にはメインカルチャーのステージに向けて進んでいく彼女の勢いを感じることが出来る。
今後、さらに幅広く認知を拡げた彼女が、誰とコラボし、どんな作品を我々に聴かせてくれるのか楽しみである。