Reolが「ニコ動」を離脱して挑むプロの壁

3月14日、ニコニコ動画(ニコ動)において歌い手として人気の高い「れをる」が、ソロアーティストReolとしてビクターエンタテインメント内のレーベルCONNECTONEよりミニアルバム「虚構集」をリリースした。

Reolはシンガーソングライターとして、サウンドクリエイターの”ギガ”、 映像クリエイターの”お菊”とともにユニット 「REOL」として2016年にファーストアルバムをリリースしたが、そのリリースから1年を待たず昨年10月に「発展的解散」に至る。

このミニアルバムは、ユニット 「REOL」としての活動に先立ち一度はソロアーティストとしてデビューした「れをる」が、再びソロアーティスト「Reol」としてのスタートを切るアルバムとなる。

Reol / エンド

ニコ動コミュニティの存在意義

2010年以降の国内ミュージックシーンにおいて、ニコ動の存在意義は大きい。それまで世の中に多く存在したアマチュアミュージシャンは、ニコ動において手軽に音楽を発表し、自身の創造性を世に問う事ができるようになった。

オリジナルの楽曲であればYoutube上でも堂々と発表する事はできるが、ワールドワイドなフォーマットの上では相当な独創性や話題性が無ければ、オフィシャル、アンオフィシャルが入り混じる世界各国の投稿動画の中で埋もれてしまう。

REOL / ギミアブレスタッナウ

ニコ動は、国内向け弱小フォーマットゆえの規制の緩さや、そこに形成されるコミュニティの規模が、アマチュアミュージシャンの発表の場として「最適」であるのだろう。

プロに舐められるニコ動出身アーティスト

そんなニコ動での音楽活動を足掛かりにメジャーデビューするアーティストが、近年増えている。ニコ動上で”ヒャダイン”として有名だった前山田健一は、今では第一線で活躍するコンポーザーであるし、昨年より人気急上昇中の米津玄師も、メジャーになる前からニコ動コミュニティにおいて「ハチ」名義で人気を得ている。

先日、その米津玄師がインタビューにおいて「ニコ動出身というだけでまだまだ舐められている」という発言をしていた。

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今、飛ぶ鳥を落とす勢いの米津玄師でさえそうなのだから、2015年にデビューしながらもタイアップやヒットに恵まれていないReolが、メジャーミュージックシーンにおいてどのような扱いを受けているかは推して知るべしと言えよう。

れをる / 極彩色(ソロメジャーデビューアルバム「極彩色」より )

実際、ユニットとしてのREOLはニコ動コミュニティから発生したもので、ソロアーティストとしてのReolの音楽性や活動範囲はニコ動のフィールドからは出ていない。この先、メジャーアーティストとして続けていくなら、ニコ動コミュニティだけをターゲットにして活動していく訳にはいかないだろう。だから、今回のソロでの再出発は「ニコ動コミュニティからの離脱」がテーマとなっているように思える。

目に見えないプロアーティストの壁

海外の事情には疎いのだが、国内においては音楽に限らず、クリエイティブワークに携わるプロとアマチュアの堺が曖昧であるように感じている。

例えば、漫画であれば全国流通雑誌に掲載される作品を手掛ける「プロ」よりも、二次創作同人誌を売って大きな利益を得る「アマチュア」が沢山居るし、ニコ動やpixiv(ピクシブ)といったネット上の創作コミュニティにおいても、プロ以上に人気を得て利益を上げるアマチュアクリエーターが数多く存在する。

REOL / RE:

その表現を問わずプロのアーティストになる為には免許が必要な訳でもないので、プロとはなにか?という定義は曖昧なものになる。ただ、多くのアマチュアアーティストが勘違いしがちなのだが、見えないながらも「プロの壁」は存在する。

だから、プロの壁を越えられずに自分自身で定義した手前味噌な「プロ」の意識だけ抱えて活動する”アマチュア”が多数存在する状況になる。それはクリエイティブにおいて、どのジャンルでも同じだ。

たとえばプロの定義を自分で”より多くのお金を稼ぐ事”としてしまえば、握手券やトレカの代わりにCDを売ることを良しとし、数十分のステージさえまともに務められない貧弱なアイドルグループであっても、それを「プロ意識」とすり替えニュースとして喧伝する。

米津玄師が「舐められている」と感じた”壁”は、現在のミュージックシーンで曖昧模糊となっている「プロとアマチュアの壁」であるように思う。

そしてReolもまた、そのプロの壁に挑む体勢を整えたように思う。

Reol mini album「虚構集」XFDMovie

Reolは同じニコ動出身のアーティストの中では、様々なコラボやタイアップを得て、メジャーミュージックシーンで存在を示している米津玄師や、話題のアニメとタイアップし岡村靖幸とのコラボで話題となったDAOKO、多くのミュージシャンからサポートを受け活動を広げるmajikoなどに比べれば、未だ脆弱なバックアップしか得られていない。

新しいレーベルにおいてReol自身の音楽性をどのように展開させていくのか、楽しみなアーティストである。Reolが充分なメジャーのサポートを受け、Reolなりの創造性を進化させ、目に見えない「プロの壁」を越えていくのを期待している。

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