ジャズカテゴリーでありながら、そのキャッチーで疾走感ある楽曲が多くのロック、ポップスファンを魅了する不定形インストゥルメンタル・バンドADAM atが5月9日に4thアルバム「サイコブレイク」をリリースする。
ヤマハをはじめとした多くの楽器メーカーが集まる「楽器の街」浜松に育ち、今も浜松を拠点に活動するADAM atが、このアルバムリリースを記念し、地元の浜名湖ガーデンパークにて来る6月30日、入場無料のインストゥルメンタル・ミュージック・フェスティバル〈INST-ALL FESTIVAL 2018〉を開催するので、こちらも要チェックだ。
関連リンク→ 「INST-ALL FESTIVAL 公式ウェブサイト」
また、全国9都市9公演のアルバムリリースツアーも予定されているので、浜松以外の地域でもADAM atのダンサブルでハイテンションなピアノインストをライブで楽しむ事が出来る。
日本人的キャッチーさが魅力のADAM atのインストミュージック
ADAM atはキーボーディストである玉田を中心に、特定のメンバーを持たないバンドだ。
ADAM at / 共鳴ディストラクション
ADAM atはCDショップや音楽サイトでは”JAZZ”のカテゴリーに分類される事が多いが、そのキャッチーでエモーショナルでスリリングな楽曲は極めてロック的である。ピアノの音がメインとなるが、バンドサウンドの上でヴォーカルの代わりにピアノがフロントを務めている印象だ。
だから、固定メンバーのソロプロジェクトとも捉えられるが、ピアノを支えるバンドサウンドが重要であり、バンドのサウンドによって楽曲自体の印象も変わってくるので、やはりここは”バンド”という捉え方が良いだろう。
ADAM at / Echo Night
インストゥルメンタルでありながら、バンド演奏の上でキャッチーな主旋律を奏でるADAM atの楽曲は、久石 譲の映画サントラの様な、RPGゲームのサントラの様な取っつき易さと共に強いビート感を持ち、ライブでの盛り上がりが容易に期待できる。
あえて限定を設けるADAM atのピアノ音色
楽器の王様と言われるピアノは、その表現の広さから、クラッシック、JAZZ、ポップス、ロックなどジャンルを問わずあらゆる音楽でその音色を聴く事が出来る。ピアノから派生した鍵盤楽器を含めれば、表現できる音色は無限と言っても良いだろう。
その事実を踏まえると、ADAM atのピアノはかなり限定的な使い方がされている事に気付かされる。
ADAM at のMVやライブ映像を見ると、グランドピアノやライトアップピアノではなくRolandやYAMAHAのエレクトリックピアノ(エレピ)を使用しているのが分かる。今どきのエレピであれば、ものすごい数の音色があり曲調によってその音色を変える事も可能なはずだ。
しかし、ADAM atはどんな曲でも基本となるピアノの音色をあまり変えない。微妙には変えているのかもしれないが、基本的にクリアなピアノの音色を聴かせる。その音色のこだわり?は、キーボードとペダルスチールギターを有するPHONO TONESとのコラボで感じてもらえるだろう。
PHONO TONES X ADAM at / Mr. Hyde
ADAM atが使用しているエレピであれば、キーボードの音もペダルスチールギターの音も出す事が出来る。しかし、ADAM atは自身の楽曲でも使用している限定された”ピアノ”の音色で楽曲に参加している。
エレピであれば「ピアノ」の音色もクラッシック調のものからJAZZピアノ、ホンキートンク、ファンク、ロックと細かい音色分けがされていが、ADAM atの楽曲で聴かれるピアノの音色が同じであるのは、あえてその音色を選んでいるからだ。
ジャンル分け無用のインストバンド
ADAM atはJAZZカテゴリーに分類されJAZZフィーリングが感じられる楽曲もあるが、そのアプローチは非常にポップス寄りで、その違いはエモーショナルなパフォーマンスで支持を集めるJAZZピアノトリオH ZETTRIOと聴き比べると分かり易いだろう。
H ZETTRIO / Beautiful Flight
H ZETTRIOもピアノを中心としたインストバンドとして多大な支持を受けるバンドであるが、そのアプローチはADAM at に比べて非常にJAZZ的である。
JAZZピアノと言えばインプロビゼーションが主流で、なかなか縦ノリで盛り上がるという印象はないが、ADAM atの楽曲ではしっかりとした主旋律の上で、ピアノが歌モノのメロディーのように奏でられ、間奏のギターソロの方がよっぽどインプロビゼーションを感じられるほどだ。
ADAM at / Silent Hill
それはADAM atのテクニックがJAZZピアニストより劣っているとかそういうことではなく、取っつきにくいJAZZ的なアプローチに沿うことなく、ロックやポップスの手法に則ったアプローチを選択し、より多くの人に親しんでもらいたいというADAM atの考えによるものだ。
たとえ歌モノで無くても、ピアノがあればボーカリスト以上に歌う事が出来る。そんな気概を感じさせるADAM atの歌いシャウトするロックピアノを楽しんでいきたい。