20年経っても色褪せない名盤、PIERROTミニ・アルバム『CELLULOID』全曲レビュー

ここ数年V系界隈は「激動」という言葉が似合いすぎる。
特に解散バンドの復活やしばらく活動休止していたバンドの音源リリースなど、話題に事欠かない。
PIERROTもそんなバンドのひとつではないだろうか。

2017年は『ANDROGYNOS』という(通称:丘戦争)一大ライブイベントもあったことだし、ちょとここらで昔の楽曲を聴き直してみるのはどうだろう。
筆者が大好きな一枚、『CELLULOID』の楽曲を紹介させてくれ。

『CELLULOID』必聴ポイントまとめ

「セルロイド」

一番最初に注目していただきたいのが、TAKEOの正確無比なドラミング。
変拍子に加えて裏打ちのバスドラムとまず普通のドラマーなら忌避するかチャレンジ精神だけで頑張ってめためたになるかなのに、信じられないぐらいしっかりと刻んでいるのだ。
ここだけの話筆者はタカー(TAKEOファンのこと)なのだが、これが打ち込みではなく生ドラムだと知った時の衝撃は半端なかった。

1番と2番の間の間奏部分のノイズを前面に出したギターはおそらくアイジが弾いていると思うのだが、手元に今現在資料がなくて定かではない。
アイジはギターでアクセントをつけるのがとても上手く、演奏技術が高いというわけではないのについつい聴き入ってしまうプレイをする。
ベースもブリンブリンのファンキーな音で、曲の世界観を成り立たせるのに一役買っている。
また、メロディを支える潤のプレイも質実剛健で良い。
一曲目にして当時のPIERROTの完成形を見ることができる。

「Adolf」


PIERROTと言えばこの曲、と言われるほど浸透した楽曲だ。
タイトルの「Adolf」はもちろんアドルフ・ヒトラーからの連想。

一糸乱れぬピエラーのフリが「宗教だ…」と他バンドファンに言わしめるほどの傑作。
TAKEOのフィル・インで始まり、歌の直前のフレーズにはシンセ・ギターを使用。
気持ちのいいリズムとともにカッティングが特徴的な1番Aメロ1フレーズ目、それが歪んだギターメロに変わる2フレーズ目と実は曲展開もめまぐるしい。
忙しいのフリを先導するキリトやそれについて行くピエラーだけではなかった。

この時点でPIERROTの楽曲構成力はかなり高いもので、音作りへのこだわりと「いかに麻薬的な常習性をもった曲を作り出せるか」に腐心している感がある。

「脳内モルヒネ」


カウントのようなドラムから始まる楽曲。
『CELLULOID』では唯一PVが作成された。

首をぐるぐる回して頭をトントンするフリでピエラーにはおなじみ。
この曲も「Adolf」で述べた「麻薬感」を前面に出してきている。

潤のシンセ・ギターが大活躍している楽曲で、イントロの「テテンテレテテン〜」のあたりは全部潤。
AメロとBメロで雰囲気をがらっと変えているだけでなく、1度目のAメロと2度目のAメロではギターの音色が変わっている。
開放感のあるサビのメロディに乗せて閉鎖的な歌詞を歌う、という、V系の楽曲の中でもオーソドックスな手法をとっている。

イントロと間奏ではシンセの音色を変え、フレーズも変更することにより「浮いた」感じを出して、歌詞通り半覚醒状態のようなふわふわした気分にさせるのも上手い。
コーラスも潤。大活躍だ。

「Twelve」


タカーならこれを知らないとモグリだと言われてしまう、PIERROT唯一のTAKEO作曲。
ストレートなロックナンバーで、これがとてつもなくかっこいい。

ニコニコ生放送でのPIERROTのファン投票による楽曲ランキングで上位に食い込み、スタッフが映像を探したもののライブ映像すらひとつも見つけられなかったという伝説の曲でもある。
本当にライブで全くやらなかったんだ…(97年頃赤坂ブリッツでやったらしいという情報はある)。

この楽曲は「誰のプレイが素晴らしい」とか言って分別をつけるものでなく、歌詞、日本語の発音とメロディの組み合わせの妙に驚いて欲しい。
サビの「やるせなく胸が疼く度に運命の輪郭が見える」の部分が特に良い。
日本語の発音とメロディの気持ち良さがここまで合致する曲はPIERROTの多数ある楽曲の中でもそうそうない。

「鬼と桜」


珍しく和風の楽曲。ピエラーには「鬼作」と呼ばれて親しまれている。
腕を上下に思いっきり動かすフリでもおなじみ。

ライブの時は照明が下から上へと煽ったムーヴで、これがまた楽曲の神聖さとかっこよさを引き立てる。
輪廻転生を歌った曲なのだが、それ自体はPIERROTに珍しいというわけではない。(だってアルバム何枚も連続でひとつのストーリーとか作っちゃってるから)
ただここで歌われている輪廻とは、「いいことをしたから次も人間になりましょうね」というような道徳的な内容ではない。

デビュー後リリースした「ハルカ…」とは逆ベクトルの曲だと言える。
機会があれば書きたいのだが、『FINALE』収録の「Newborn Baby」に近い。
ここで注目してほしいパートが、ベースのKOHTA。
歌詞のテーマも重い。

メロディも重厚。

その重さをシンセ・ギターを使用することにより軽く響かせているが、屋台骨を作っているのは揺るぎなくリズムを刻むベースだ。
Bメロで(特に2番)少しだけメロディの上下があり、それがアクセントになっている。

メロディラインの強調をサビや間奏に持ってこないところがPIERROTらしい。

「HUMAN GATE」


PIERROT渾身の救済曲。

受験をこの曲で乗り切った!とか、仕事の辛さもこの曲を聞くと癒される!というピエラーが続出、ファン人気がとても高い曲となっている。
TAKEOのフィルに合わせて指を立てた腕を小刻みに動かしながら振り上げるフリと、サビの通称「窓拭き」でもおなじみだ。

爽やかな楽曲で、「つらいね、でも君だけじゃないから生きていこう」という歌詞なのだが、サビ以外は徹底してどん底に落としてくるスタイル。
潤がシンセ・ギターを多用しているのであまりPIERROTに対して「ツインギターのバリバリロック!」とは思わないのだが、この曲は別。

エフェクターを使い分けながらもきちんとツインギターらしい「うねり」とか「エモさ」がある。
いやシンセ・ギター使ってないわけではないです。ちょちょっとポイントで入れてます。

それを置いておいても、ギター隊のバランスが取れた楽曲だ。

どんなに昔の楽曲でも名盤は名盤だ!!

『CELLULOID』は20年前のミニ・アルバムだ。
しかしロックは年代を経ても、そのかっこよさは色褪せない。

特に当時から実験的、前衛的なサウンドを作っていたPIERROTに関しては、ようやく時代が追いついたという感覚すらある。
すごいよな…今聴いても古さをほぼ感じない…。

というわけで、持っていない方は見かけたら即ゲットしていただきたい一枚だ。
今後もしかしたらまたあるかもしれないPIERROTのステージの予習としてもマストだぞ!

文:阿部春泥

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