キュウソネコカミはオワコンか?

キュウソネコカミが2年ぶりのアルバム「にゅ~うぇいぶ」を12月6日にリリースした。ニューリリースの割にあまりニュースに取り上げられていない。

2017年に入ってから、一時期の勢いに比べて急速にその名前を聞くことが無くなった「キュウソネコカミ」。彼らはオワコンと化してしまったのか?気になったので、新作「にゅ~うぇいぶ」で確かめてみた。

キュウソネコカミとは

キュウソネコカミを簡単に紹介すると、大学の軽音部部員で結成され2010年から活動を開始。「ヴォーカルのやりたいことを形にする」という音楽性で、同年代が共感できる身近な不満や鬱憤を歌い若者からの支持を集めた。

2014年には、扱うアーチストが多すぎて割りとおざなりなプロモーションしかしない大手レーベル、ビクターエンタテインメントからメジャーデビューしている。

キュウソネコカミ / ビビった

Creepy Nutsもそうだが、メジャーデビューに際して「僕たちメジャーの扱いがどんなものか、わかってますから。」というような楽曲を発表して、布石を打つのは「さとり世代」の特徴かもしれない。

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しかしキュウソネコカミは、メジャーに移っても彼ららしい、自分の「半径3メートル」にある鬱憤を題材に、DQNやサブカル女子、自分よりイケてると思えるあらゆる人に噛みつき、若い人に共感を得られる歌を発表していた。

キュウソネコカミ− / サブカル女子

大学生の悪ふざけの限界

アルバム「にゅ~うぇいぶ」においても、基本的に路線は変わらない。メンヘラから、写真加工や程度の低い実写化映画、浮気中年など、誰もが一度は思う身近なモヤモヤした心情をストレートにぶつけている。

キュウソネコカミ / メンヘラちゃん

しかし時代の空気としては、彼らが歌う鬱憤はもはや日常と化し、在って当たり前のものとして呑み込んで生きていかなければならなくなっている。大人になればなるほど彼らの歌う「半径3メートル」の鬱憤は”些細な出来事”として処理され、改めて歌われても「だからどうした?」という気になってしまうのかもしれない。

経済状況も良くはならず、くだらない政治家のパフォーマンスや、自然災害、国際情勢、少子化問題、労働問題など、只でさえ鬱憤が溜まる世の中で、同じ「騒げる音楽」であってもポジティブメッセージが支持されるようになってしまった。

ヤバイTシャツ屋さん / あつまれ!パーティーピーポー

WANIMA -ともに

学生バンドの先にあるもの

今や大御所となっているバンドでも、大学生のノリでデビューしたバンドは多い。最も認知されているバンドで言えば「サザンオールスターズ」だろう。

彼らは今でこそ国民的な認知を得ているが、「勝手にシンドバッド」でデビューした時は、子供ながらに「ふざけた奴らだ」と思ったのを覚えている。

前年ヒットしたピンクレディーの「渚のシンドバッド」を受けての「勝手にシンドバッド」でのデビューであり、TVで見る彼らは豪華なステージ衣装の歌手が並ぶ中、ラフなTシャツ姿で訳の分からない歌詞を、上手いのか下手なのか分からない歌い方で歌い、へらへらとしてとても真面目に音楽をやっている様には見えなかった。

本当に幼い時にTVで観たのを覚えているくらいだから、それだけ衝撃的であったのだろうが、彼らは40年経った今でもデビュー時の「ふざけた」ノリを持ち続けている。

サザンオールスターズ / アロエ

他にも米米クラブや爆風スランプ、聖飢魔IIなども一種浮ついた「学生ノリ」を感じさせるデビューだった記憶がある。

そういった「学生ノリ」デビューを果たした彼らも、ある時点でアーチストとしてクリエイティブに向き合い、世代を超えて受け入れられる作品を残してきている。それが、ミュージシャン、アーチストとして「大人になる」ということなのかもしれない。

三十路となったキュウソネコカミのポテンシャル

キュウソネコカミのメンバーは既に30代となっている。同年代には結婚し、子供も生まれ、部下を持ち、キャリアを重ね起業する様な人もいるだろう。

周りのスタッフでも、自分と同じ年、または年下のプロデューサーやマネージャーが現れ「高校生の時聴いていました。」というようなスタッフと一緒に仕事をしていくことになる。

今回のアルバム「にゅ~うぇいぶ」の中で特筆すべきは、昨年10月に発表されている「わかってんだよ」であろう。明らかにそれまでのキュウソネコカミの「半径3メートル」の世界から拡張された視点が表現されている。

キュウソネコカミ / わかってんだよ

今回のアルバムの最後を飾るこのナンバーは、キュウソネコカミのこの先の可能性を感じさせる素晴らしいロックチューンである。

「わかった」先にあるもの

キュウソネコカミは何でも「わかって」いる。サブカル女子も、モバイル依存も、メンヘラ女子も、メジャーレーベルのやり方も、鬱々としてイケてない自分たちも、「さとり世代」の多くの若者がそうであるように「わかっちゃって」いる。

しかし、彼らより大分年上の筆者は「わかっているからなんなのだ?」と思うのだ。我々の世代だって色々分かっていたし、分かった気になっていた事もある。わかった上で、どうするか?ということが、ある意味「大人の世界」と言えるかもしれない。

バンドの在り方として、何も変わらず続けていくのも素晴らしいことだと思うし、メンバーの成長に合わせて変わっていくのも面白いと思う。

キュウソネコカミがこの先、どんな選択をしてどんな作品を聴かせてくれるのか、楽しみにしたいと思う。

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