THE PINBALLSが12月6日リリースのアルバム「NUMBER SEVEN」で、ついにメジャーデビューする。
THE PINBALLSは2006年に結成。2010年には、タワーレコードのアーティスト発掘オーディション「Knockin’ on TOWER’s Door」の第一回目で1位を獲得するなど実力を認められながらも、その後7年に渡り地道に活動を続け、インディーズにおいてすでに5枚のアルバムを制作。着実に実績を重ね、いよいよメジャーデビューとなる。
受け継がれる音楽の遺伝子
音楽の素晴らしいところは、ひとつの楽曲、ひとりのアーチストの作品が多くの人生に影響を与え、そのアーチストが活動を終えた後も、引き継がれた遺伝子がまた新しい音楽を生み出すところだ。今まで、多くのアーチストが人々に影響を与え、さらに多くの作品を生み出す原動力となってきた。
THE PINBALLS / 蝙蝠と聖レオンハルト
最も多くの人に多大な影響を与えたバンドと言えるであろう「ビートルズ」は、加山雄三から奥田民生や斉藤和義、竹内まりや、THE BAWDIESなどに遺伝子は引き継がれ、文学界においても村上春樹の「ノルウェーの森」や伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」など、業界を越えて各方面に影響を与え、ビートルズを知らない世代にその遺伝子は引き継がれている。
日本にも今まで多くの人に影響を与えたアーチスト、バンドは存在する。ここ30年であればブルーハーツやBOØWYに人生を変えられたアーチスト、作家、漫画家は多い。彼らは、影響を受けたバンドが消滅した後も、そのアーチストから受けた影響を、衝撃を、素晴らしさを、もう一度再現しようと、知らない人に伝えようと、様々な形で活動をする。
ミッシェルの遺伝子を受け継ぐもの
そして、ミッシェル・ガン・エレファントも、そんな多くの人の人生を変えてしまった伝説的なバンドの一つだ。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / スモーキン・ビリー
ミッシェル・ガン・エレファントは2003年に解散している。しかし、すでに14年経った今でも、多くの人がミッシェルの名を口にし影を追い求めている。
ミッシェルのメンバーは他界してしまったアベフトシ以外、今も現役で活動している。フロントマンであったチバユウスケとドラムのクハラカズユキはThe Birthdayのメンバーであるし、ベースのウエノコウジも多方面で活躍している。でもミッシェルはもう居ない。
The Birthday / 抱きしめたい
筆者自身、いままでミッシェルの遺伝子を探し求めていたが、なかなかめぐり合うことが無かった。有力候補としてTEXAS STYLEというバンドがあったが、メジャーになる前に残念ながら解散してしまった。
TEXAS STYLE / モーニングバーン
ミッシェルに近い「カッコ良さ」とテンションを持ちながらTEXAS STYLEらしいロックを鳴らしては居たが、TEXAS STYLEは時間的にも音楽性もミッシェルに”near”過ぎたのかもしれない。TEXAS STYLEの兄弟メンバー2人は今、SaToMansion(サトウマンション)という4兄弟バンドで活動中だ。機会があれば、いつかこのバンドも紹介したい。
パクリやフォロワーではないTHE PINBALLSの確かなアーチスト性
そしてTHE PINBALLSである。THE PINBALLSが奏でる楽曲はギター、ベース、ドラムを中心としたシンプルでストレートな音構成で、ミッシェルに通じる世界観を醸し出すものではあるが、メロディーラインの取り方やキャッチーなサビなど、そこには確かにTHE PINBALLSのオリジナリティを感じることができる。
THE PINBALLS / 片目のウィリー
THE PINBALLS / 真夏のシューメイカー
THE PINBALLS / 冬のハンター
ミッシェルの影を求め続けている多くのミッシェルファンも、ミッシェルの「カッコ良さ」をしっかりと受け継いだ、この新しくメジャーデビューを果たすロックバンドTHE PINBALLSは、充分「推せる」のではないだろうか。
THE PINBALLSがメジャーデビューに至るまで長い年月を要したのは、強烈すぎるミッシェルの残像がTHE PINBALLSのオリジナリティをかき消さない程度に薄まるために必要だった時間の様にも思う。
正直、ミッシェル・ガン・エレファントをリアルタイムで体験した世代からすると、人生が変容するほどの感銘は受けないかもしれない。しかし、それはTHE PINBALLSがミッシェルより劣っているという査証にはならない。ミッシェルが消滅している現在、THE PINBALLSこそが今を生きるミッシェルの遺伝子なのだ。
THE PINBALLSに触れた若い世代がまた、ミッシェルの遺伝子を引き継ぎ、己の人生を歪ませカッコいいロックを響かせてくれればいいと願っている。