女性議員の赤ちゃん同伴による議会への参加が問題となっている中、チャットモンチー解散(完結)のニュースが流れた。
4年前、チャットモンチーの中心人物である橋本絵莉子が入籍・出産した時から、チャットモンチーの解散は、ある程度予想されたことであったように思う。
女性にとって育児と仕事の両立というのは、本当に大きなハードルである。特にクリエイティブ業にとっては、子供を育てることで半ば強引にパラダイムシフトが起こり、価値観や方法論が大きく変容し”それまでの私”では居られなくなることがある。
チャットモンチーには様々な選択肢があっただろうが、やはりここは「完結」させるのが正解だったと思える。少し寂しくはあるけど。
チャットモンチーというバンド
今回、解散のニュースでチャットモンチーというグループを知ったという人に、チャットモンチーがどういった位置づけのグループであったか、簡単に紹介しておこう。
チャットモンチー / Magical Fiction
チャットモンチーは2005年、雑誌『ROCKIN’ON JAPAN』(通称「ロキノン」)のバックアップでメジャーデビュー。当時、ロキノン系バンドは多数居たが、ガールズバンドはほぼ皆無であった中、女性3人組の”本格的な”ギターロックバンドは大きな支持を得た。
デビュー翌年にはグループの代表曲ともいえる「シャングリラ」をリリース。
チャットモンチー / シャングリラ
その後もテレビ露出は少ないながら、数々のドラマや映画に楽曲が使用され、チャットモンチーの名前と作品は多くの人に支持されることとなっている。
岡崎京子的チャットモンチーと桜沢エリカ的なSHISHAMOの違い
今回のチャットモンチー解散のニュースに際し、ネット上でSHISHAMOと比べる人が多いことに個人的に違和感を覚えた。
SHISHAMOもギターロックを奏でる3ピースのガールズバンドではあるが、その世界観は全く違う。どちらが良い悪いではないが、チャットモンチーの楽曲はフックのあるリズムの取り方や凝った歌詞の乗せ方がされており、そこが大きな魅力となっている。
チャットモンチー / ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
また、歌詞の世界観にしても両グループとも共感を呼ぶ生っぽい女性の心情が表現されているが、チャットモンチーの歌詞はSHISHAMOに比べればもっと刹那的でヒリヒリするような女性の精神性、たくましさ、したたかさ、危うさを感じることができる。
チャットモンチー / 世界が終わる夜に
チャットモンチーに比べるとSHISHAMOはリズムもメロディーも歌詞の世界観も、もっともっとストレートで素直だ。
その違いは、岡崎京子と桜沢エリカの作風の違いに似ている。絵柄は似ていても作品としては全く違う印象を受ける。女性のドロッとした情念を描く内田春菊を椎名林檎に例えれば、女性アーチストにおける3者3様の世界観の違いは理解いただけるだろうか。
橋本絵莉子は「奥田民生になりたいガール」になるか。
そして、チャットモンチーは終わる。しかし、解散発表にある様にその終わりは希望にあふれている。
チャットモンチーの二人、橋本絵莉子と福岡晃子はチャットモンチーとは違った形で作品を届けてくれるだろう。先にチャットモンチーを脱退した高橋久美子は、すでに作詞家として活動している。
郷土徳島を愛し、プレイヤーとしても、コンポ―ザーとしても、自分のやりたい音楽を作り上げる姿は奥田民生のイメージに近い。実際、チャットモンチーは奥田民生のプロデュースで楽曲を作ってもいる。
チャットモンチー / コンビニエンスハネムーン(奥田民生プロデュース)
その後も対談やステージで共演し、映画「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」のイベントにも参加している。チャットモンチーは業界のしがらみに捕らわれず、自然体で自分の好きな音楽を生み出し続ける奥田民生の活動スタイルに、シンパシーを感じているのかもしれない。
チャットモンチーファンとして個人的に期待しているのは、橋本絵莉子のプレイヤー権コンポーザーとしての活躍だ。今までチャットモンチーのフロントとしてバンドにこだわり活動してきた彼女は、他者への楽曲提供をしていない。また、彼女はギターを抱える姿が本当に似合っている。
彼女が作る楽曲が、グループの枠を超えて拡がってゆくのを楽しみにしている。