多くのガールズバンドが活躍している最近の音楽シーン。なかでも著者は、4人組のバンド「ねごと」に注目したい。
シンプルなバンドサウンドで表現しているのに、どこか不可思議な感覚を残す楽曲が彼女たちの魅力だ。聴いているとごく自然にリピートしたくなる。
そんなマジカルな力を作る要素となっているのは、いったいなんなのだろう。
ガールズバンド戦国時代ともいわれる現代で、着実に自分たちの音楽を作っていく難しさにも触れてみたい。
オルタナティブな楽曲がファンを獲得
ねごとは2010年、ミニアルバム「Hello! “Z”」によってメジャーデビューを果たす。
以前から自分たちの手でライブ企画「お口ポカーンフェス?!」を開催するなど、実践を積んできた彼女たち。デビュー後もライブの出演を多く経験したため、かなり場馴れしていたような印象を受ける。
流行りの音楽に迎合するのではなく、ただただオルタナティブをつらぬいた楽曲に注目が集まり、多くのタイアップを行った。
デビュー初年度からアルバム曲「ループ」が「JAPAN COUNTDOWN」のエンディングテーマとなり、1stシングル「カロン」も「LISMO!」のCMソングを担当する。
ループ
その後も勢いは衰えず、「sharp ♯」が「機動戦士ガンダムAGE」のEDテーマ、「ながいまばたき」が映画「今日、恋をはじめます」の主題歌として採用された。
sharp ♯
早くから「ねごとらしさ」を獲得し、その影響で着実にファンを増やしていった彼女たち。
では実際になにが、彼女たちをそんな魅力的にさせるのだろうか。
繰り返される歌詞が心をひきつける
彼女たちの楽曲を聴いていると、一部の歌詞が繰り返されていることに気づく。
たとえば「カロン」でいうのなら、サビで「いま」という単語は2回繰り返されている。
カロン
もちろんメロディの都合もあるのだろうが、こうして繰り返される単語は、ボーカル「蒼山幸子」のふわっとした声質に乗るとすごく印象的に聴こえてくる。
こちらの「DESTINY」なんて、まさにその繰り返しが最高のアクセントとなっている楽曲だ。
DESTINY
たった数文字の単語を大きく広げて音にする技術こそ、ねごとが持つ最高の武器であるのかもしれない。
もしこれからねごとを聴きはじめるのなら、ぜひこういった工夫に目を向けてみてほしい。
平成生まれのパワー
ねごとは、メンバー全員が平成生まれという若い新星バンドだ。そのためライブはパワーがあり、披露される楽曲の幅も広い。
純粋なバンドサウンドもあれば、テクノポップを彷彿とさせる曲を出したりと、自らに制限のない活動をしている。
DANCER IN THE HANABIRA
ねごとのデビューは2010年だが、結成からはもう10年が過ぎている。実はかなり年季の入ったバンドなのだ。
その長い期間で培われたのは、広がっていく音をバンド内に留める技術だろう。彼女たちの演奏はとても自由でありながら、同時に内部に向かっていくようなまっすぐさがある。
今後もさらなる広がりとパワーを見せてくれることは確実だろうが、どんなパフォーマンスとなるのかはまったく予想できない。
そういった不定形な可能性こそ、ねごとに注目していただきたい大きな理由となっている。
今後のねごとはどうなるか
ひとまず決まっているのは、12月13日に5thアルバム「SOAK」とライブ作品「“ETERNALBEAT”TOUR 2017」が発売されるということ。
記念すべき10枚目のシングル「DANCER IN THE HANABIRA」や、スピッツの名曲をカバーした「空も飛べるはず」が収録されている。このカバー曲は映画の主題歌にもなり、大きな話題となった。
空も飛べるはず
スピッツほど完成されていて、くせのあるバンドの曲をカバーしても、まったく劣らないのは素晴らしい。
ほとんどの音楽ファンが1度は聴いたことがあると思われる「空も飛べるはず」のねごとバージョン。ぜひアルバムといっしょにおすすめしたい。
正直、もっともっと注目されていいバンドであるように思える。
何かきっかけさえあれば、彼女たちの名前はその覚えやすさも合わさって、広く浸透していくのかもしれない。