Creepy Nutsはミドシンを越えていけるか

Creepy Nutsが11月8日、マキシシングル「高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。」でソニー・ミュージックよりメジャーデビューした。

Creepy Nutsとは

Creepy Nuts (R-指定 & DJ 松永)は表記の通り、MCのR-指定とDJ 松永の2人組ユニットだ。サンプリングをベースとした自在なトラックの上に、フリースタイルMCバトル3年連続チャンピオンだったR-指定の切れ味鋭いラップが乗る。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 助演男優賞

普通のアーティストなら、メジャーデビューすることによって露出も増えるのでファンとしては嬉しく思えるのだが、Creepy Nutsのメジャーデビューには一末の不安がある。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / みんなちがって、みんないい。

フリースタイルラップがベースなので、基本的にディスりが信条だ。「父ちゃん母ちゃんマジ感謝」みたいなラップではない。等身大の視点からメディアや業界を中心とした世相への不平不満をシニカルな視点でディスっていく。

Creepy Nutsの抱える「忖度」問題

その時代の世相風俗を切り取り、自身の不遇や世の中への不平不満を唄い鬱憤を発散し解消していくのは、洋の東西を問わず太古の昔から音楽が担ってきた一面である。普遍的な愛や友情、喜怒哀楽をテーマとしない分エバーグリーンにはならないが、時代背景を映してディスるスタイルの音楽は、その時代に生きている人から熱い支持を集める。

しかし、この類の音楽は攻撃性が高いほど多くの支持を集めるが、同時に攻撃される相手も自ずと存在するため、多くの人から支持されていてもメジャーでは扱えないということも起こりうる。特に事なかれ主義の日本では些細な「忖度」によって問題が発生する。

かつて、すでにビッグネームであったRCサクセションの忌野 清志郎が、東芝傘下のメジャーレーベルから原発批判の楽曲をリリースしようとして発売中止になった事件などは有名だ。

他にも政治批判、企業批判、業界批判など各方面に問題が生じる様な楽曲が発売中止されたり、メディアで放送する際に歌詞の変更を求められたり、というニュースはよく聞かれる。

Creepy Nutsなどは、メジャーデビュー前からそういった「忖度」に関わる問題を孕んだリリックとMVを発表しているグループなのだ。メジャーにおいて、こんな多方向に切り込むMVが作れるだろうか?

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 教祖誕生

メジャーデビューシングルにも含まれるこの「メジャーデビュー指南」を聞く限りCreepy Nuts自身もそこら辺は充分に分かっている様だ。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / メジャーデビュー指南

ソニー・ミュージックはアーティストを守るか?

しかし問題はソニー・ミュージックである。このレーベルは大手でありながら、こういった毒気のあるアーティストを抱えがちなのだ。最近注目の岡崎体育もソニー・ミュージック系列のレーベルに所属している。

岡崎体育 『MUSIC VIDEO』Music Video

それでもしっかりアーティストの創造性を保護してくれるのなら良いのだが、ソニー・ミュージックには、Creepy Nuts自身が言っているように、巷で話題のアーティストをとりあえず抱えておいて、旬が過ぎたら”使い捨て”にするイメージを持っている。

ミドリカワ書房はなぜソニー・ミュージックと別れたのか

もう10年ほど前になるが、ソニー・ミュージックに「ミドリカワ書房」というアーティストが所属していた。

ミドリカワ書房 / 顔2005

通称「ミドシン」。シニカルな視点で書かれたストーリー性のある歌詞と、世界観を表現する自在な音楽性が高く支持されたアーティストで、今でも活動を続けている知る人ぞ知るシンガーソングライターだ。Creepy Nutsが持つシニカルな世相の切り方にミドリカワ書房に通じるものを感じたのだが、ミドリカワ書房は3年ほどでソニー・ミュージックとの契約を解除している。

その短い契約期間内において、いくつかの楽曲が「問題あり」とされソニー・ミュージックからはリリースされなかった。そのひとつがこの「母さん」だ。

ミドリカワ書房 / 母さん

「犯した罪を反省していない加害者の観点で作詞されており、倫理上問題がある」というのがリリースできなかった理由だそうだが、歌詞の内容はクィーンの「ボヘミアンラプソディ」と大して変わらない。また、ミドリカワ書房は元々そのような観点で作詞するアーティストであるのだから、その観点を理由にリリースを断るならなぜ契約したのだ?と思う。

つまり、ウケているアーティストの楽曲は抱えたいが、そのアーティストの活動を保護するつもりは毛頭ないのではないだろうか。ソニー・ミュージックは世界屈指の巨大レーベルだが、アーティストの創作性を尊重してくれるレーベルでは無いように思う。

Creepy Nutsの挑戦を見届けよう

Creepy Nutsはソニー・ミュージック内に「クリーパーズ (CREEPERS)」という独自レーベルを設立して活動するのだが、巨大資本の中でどこまで勝負できるか、楽しみである。

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / だがそれでいい

このメジャーデビューシングルの内容が「高校デビュー、大学デビュー、メジャーデビューも全部失敗。」となるかもしれないが、ファンとしては彼らの切れ味鋭い創造性が守られるなら、”だがそれでいい”のかもしれない。

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