私立恵比寿中学(エビ中)はネバーランドの守人を目指す

11月8日に発売となった私立恵比寿中学(エビ中)の 11枚目のシングル「シンガロン・シンガソン」がオリコンとBillbordチャートにおいて、週間ランキング2位につける好セールスをマークしている。

今回の楽曲は、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴によるライティングで、彼自身がエビ中のファンになっていく過程で「エビ中らしい曲を。」という思いで作られており、まさにエビ中の魅力を充分に伝える良曲となっている。

私立恵比寿中学 / シンガロン・シンガソン

エビ中が抱える「妹」の憂い

スターダストプロモーションが「ももクロ」に次ぐアイドルグループとして、事務所に所属する若年者を集めて結成した私立恵比寿中学は『永遠に中学生』というコンセプトで2009年にデビューしてすでに7年活動を続けている。そして、エビ中というグループはデビューから現在に至るまで、良くも悪くも「ももクロ」の影響を受け続けている。

芸能事務所「スターダストプロモーション」のアイドルグループ、通称”スタダアイドル”の特徴は、グループ内での競争が無く、グループとして団結し目標に向かって挑戦する姿をファンに示して応援してもらう。というスタイルであることだ。

私立恵比寿中学/もっと走れっ!!

多くの有名女優、俳優を抱えるスターダストプロモーションにおいて、ピンではなく「アイドルグループ」として活動せざを得ない時点で”負け組”であるのだから、負け組の中で競い合っても仕方が無いというスタンスをとっているが、それでも競争は存在する。

未だに「ももクロの妹グループ」として紹介されるエビ中は、ももクロが実現した「紅白歌合戦」への出場を目標と掲げているが、実現は難しく今やその目標は色あせている。姉であるももクロが次々と目標を成し遂げる中で、姉と同じ目標を追う姿はすでに悲壮ですらある。

姉より波乱万丈な「エビ中」というドラマ

グループによる目標達成へのドラマをファンに提供するスタダアイドルであるが、ももクロの順風満帆なサクセスストーリーに比べると、エビ中のそれは波乱万丈である。ももクロがメンバー固定で活動を続けるのに対して、エビ中はモーニング娘。などと同様に”転校・卒業”が存在する。デビュー時の5人から最大12人までメンバーは増減し、現在は7人体制である。

私立恵比寿中学/なないろ

メンバーが増減するたびに、そこにドラマが生まれるが、メンバーの変化がグループの成長に繋がるということは少ない。AKBやモーニング娘。のようにメンバーを一般公開オーディションで決めるようなことも無いため、外部から野心溢れるエース級の新人が加入することも無く、今まで成長する姿を応援していたメンバーが居なくなるのだから、人員の入れ替えはどちらかといえば衰退の印象を与える。

さらに今年は、皮肉にもエビ中の名を広く知らしめることとなった、メンバー松野莉奈の死を経験し、悲劇を乗り越え新体制でのスタートとなった矢先に、グループのエースとも言える「廣田あいか」の転校が発表された。

もはや存亡の危機である。現在のエビ中が何を目指し、どこに向かって活動を続けるのか、ファンの多くが不安視する中で発表されたのがニューシングル「シンガロン・シンガソン」である。

永遠の守人としての「エビ中」というグループの在り方

これ以上無いほどの、エビ中らしい明るいポップなメロディーに乗せて「何回だって転んでいい」「何回だって挑戦する」と彼女らは歌う。廣田あいかの転校に向けたような歌詞がファンの間で話題となっているが、大森元貴は作詞した時点では廣田あいかの転校を知ってはおらず、たまたまであるらしい。

廣田あいか×大森元貴スペシャル対談 メイキング映像

次々と新しいアイドルが生まれ消えていく中、彼女たちは「永遠」をコンセプトとして掲げる。ものすごいスピードで移ろうムーブメントの中で「停滞」することすら困難なアイドルシーンにおいて、様々なドラマを重ねて、しっかりと存在を示している。

私立恵比寿中学が「永遠」に挑戦し続けることで、エビ中を支え続けた廣田あいかも、夢半ばで亡くなった松野莉奈も、それ以前にグループを去ったメンバーも、エビ中として活動した日々の記憶は守られ「今日までのすべての日々」を忘れずに居られる。と彼女らは歌う。

このように、エビ中の軌跡を知ることで、楽曲から受ける印象は変わってくる。それが「永遠」を抱えるエビ中の魅力なのだろう。記憶をとどめるための挑戦、永遠を続けるための挑戦こそが、エビ中が目指すアイドルの姿なのかもしれない。

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