新メンバー加入のでんぱ組.incが「しおどき」を越えて向かう先

2017年の暮れ、でんぱ組.incが大阪城ホールで開催したワンマンライブにおいて、鹿目凛と根本凪という新メンバー2名の加入を発表した。
これででんぱ組.incは7人組のアイドルグループになる。

固定されたメンバーによるサクセスストーリーをフックとして活動してきたでんぱ組.incに、すでに他グループで活動歴がある新メンバーが2名も加わることは、既存のファンに少なからず衝撃を与えている。

でんぱ組.incが作り上げたカタチ

でんぱ組.incは2007年にプロデューサーの福嶋麻衣子(もふくちゃん)が秋葉原に開店した萌え系ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」での活動からスタートしている。

「萌えきゅんソングを世界にお届け」と言うキャッチフレーズの元、電波ソング専門のアイドルとしてアキバ系サブカルチャーをポップカルチャーとして提示するスタイルは、数多のアイドルグループとは一線を画し注目を浴びることとなる。

何度かのメンバー入れ替えを経たのち2010年には6人体制となり支持を拡大し、2014年には目標としていた武道館での単独公演を成し遂げ、メジャーなアイドルグループとしての存在感を示せるまでになった。

でんぱ組.inc / Future Diver

2017年でんぱ組.incは「しおどき」だった?

なにごとにも「しおどき」というものがある。なにかを始めたり終わらせたりするのに良いタイミングのことだ。2017年、でんぱ組.incは明らかに「しおどき」を迎えていた。

2017年1月に開催した2度目の武道館公演の最後で、メンバーの古川未鈴は「でんぱ組.incを諦めない」と決意を語ったが、これはつまりこの時期、でんぱ組.incとファンの間に「でんぱ組.incを諦める」という空気感があったことを意味している。

実際、2014年に目標であった武道館公演を実現した後、多くのファンを抱えながらも”次の方向性”を示せずに活動を続け、ファンの間でも一種”行き詰まり感”が漂っていた中での公演であった。

本来エンターテイメントグループに”次の方向性”など必要無いのだが、目標に向かうサクセスストーリーによって誘引された多くのファンは、でんぱ組.incが示す「次」の目標に向かうストーリーを求める気持ちが大きい。

でんぱ組.inc / でんでんぱっしょん

この2度目の武道館公演では、そのタイトルを「またまたここから夢がはじまるよっ!」としながらも、そこで謳われた「夢」の中身は明確なカタチでは示されず、「次」の目標がはっきり示されないまま8月にメンバーの最上もがが脱退。

そうして2017年でんぱ組.incは「しおどき」を越えて「でんぱ組.incを諦めない」ための大きなターニングポイントを迎えることとなった。

でんぱ組.incが選択した「箱」を掲げるスタイル

結局2017年は1月の公演以降、単独でのライブも新曲のリリースも無いまま、11か月ぶりのライブで新メンバーの加入を発表した。

これはでんぱ組.incにとって、ただ単に欠員した人員を補てんしたという以上に大きな意味がある様に思う。それは、でんぱ組.incはこの先”メンバーの流動によって若返りを図り継続していく”グループであることを示唆したことになると思うからだ。

つまり、固定メンバーを主軸において活動するPerfumeやももクロのスタイルでは無く、AKBやモーニング娘。のように「箱」を掲げて活動するスタイルを選んだと言えるだろう。

メンバー個々のキャラクターに寄って活動していたでんぱ組.incにとって、現在のメンバーが絶対的なものではないと示すことは、大きな方向転換と言えるだろう。

これが「でんぱ組.incを諦めない」ための答えなのだろうか?

でんぱ組.inc / W.W.D

メンバーの個人的背景を描きドキュメンタリーソングと銘打ち話題となった『W.W.D』『W.W.D II』などは、今後ステージで聴くことは無いのかもしれない。

でんぱ組.incは電波ソングから決別するか?

でんぱ組.incの音楽的な特徴は「電波ソング」と呼ばれる「萌え」の概念を主軸に置いた楽曲を多く発表しているところだ。

でんぱ組.inc / バリ3共和国

これらの「電波ソング」は過激な曲展開やかわいい女の子の声で畳み掛けるように歌われる詞、多用される合の手やSEなど、ひとつの音楽カテゴリーとして成立するほど特徴的だが、「電波ソング」はでんぱ組.incの専売特許ではない。逆に、こういった「電波ソング」は、誰が歌っても同じ視聴感を与えることができる。

ファンタジックぴこれーしょん!

音楽の指向が特徴的であればあるほど、飽きられるのも早い。かつて一世を風靡したTKサウンドと呼ばれた小室哲哉”らしい”楽曲も、今では本人が作った楽曲以外で聴かれることも無くなった。

でんぱ組.incも別に電波ソング一辺倒では無いのだが「電波ソング専門のアイドル」というでんぱ組.incの根幹をなすコンセプトも、でんぱ組.incという「箱」としての継続を望むのなら、大きく変えていくことになるかもしれない。

でんぱ組.inc / あした地球がこなごなになっても

2018年以降、でんぱ組.incがどのような目標に向かってどんな選択をし「でんぱ組.inc」という箱を作り上げていくのか。試練を乗り越える姿を見届けようと思う。

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