BiSHがセカンドアルバム『THE GUERRiLLA BiSH』を、11月4日から2日間限定299円で突然販売した。実際のリリースは11月29日を予定しており、現在予約受付中にもかかわらず、11月20日付オリコン週間デジタルアルバムランキングで初登場1位を獲得した。
今時、CDなどチラシ同然の価値しかないから、話題づくりにHi-STANDARDがやったゲリラ発売をやってみたというところだろうが、正式リリース前にランキング1位というところがBiSHの勢いを示している。
特にアルバムの1曲目に収められたこの「My landscape」は、進むべき方向を模索していた前作から、6人体制となったBiSHが目指す新しいガールズグループの在り方を予感させるSTART感にあふれている。
BiSHはどこから来たのか?
2015年に結成されたBiSHは、ある意味伝説的なアイドルグループ「BiS」の”失敗”から生まれている。
BiSというグループは、「Brand-new idol Society(新生アイドル研究会)」の頭文字で、「アイドルを研究して、アイドルになろうとする、アイドルになりたい4人組」というコンセプトを掲げ全裸のMVやスクール水着での客席ダイブなど、「アイドル」という枠の中で、どこまでできるか?ということに挑戦するかのようなプロモーションが、ニュースがメディアによく取り上げられていた。
2014年に目標として掲げていた「武道館公演」は会場側から断られ、同等の動員数を横浜アリーナで達成することで、一旦解散した。
BiSH / My landscape
このBiSの活動を踏まえBiSマネージャーであった渡辺淳之介が、新らしいマネジメント会社を設立した上で「BiSをもう一度始める」とオーディションによりメンバーを集め始動させたのがBiSHである。
渡辺淳之介の限界を破るBiSHのポテンシャル
BiSHは2015年から2年余りの活動の中で、幾度かのメンバーの入れ替えを経て現時点で6人体制で活動している。結成当初のMVやライブ風景は「BiS」の活動からの流れを感じさせる過激でアンダーグランド的なものであったが、驚くべき速さで動員が増えるにつれ様相が変わってきた。
特に、ファースト・アルバム『KiLLER BiSH』に収められた楽曲「オーケストラ」はBiSHのメンバーそれぞれの個性を際立たせ、アーチスト性の強いアイドルグループの在り方を示し、従来のアイドルファンのみならず音楽ファンにもBiSHの名前を印象づけることとなった。
BiSH / オーケストラ
BiSHの人気がアイドルファンの枠を超え拡大する中で、渡辺淳之介が得意とする過激なプロモーションやアンダーグランドに対するこだわりがBiSHにそぐわないものとなり、今現在では経験値の少ない弱小のマネジメント会社であるが故に、次の一手をこまねいているような印象を受ける。
小規模運営を引き上げていくBiSHの魅力とは?
BiSHの魅力はなんといってもメンバーのキャラクター性にある。経験の浅さからステージングの拙さは見られるが、それを補って余りあるステージに立つことに対する真摯な情熱を感じることができる。
特に、楽曲を一聴して分かるとおり、「アイナ・ジ・エンド」のハスキーでエモーショナルなボーカルが強力なフックとなって引き込み、「セントチヒロ・チッチ」が裏でしっかりと支えるという2トップ体制で構成されている。
BiSH / プロミスザスター
他のメンバーも、2人に劣ること無い歌唱力を備えており、またメンバー自身が作詞からステージの演出構成まで関わるので、やらされ感のある数多のアイドルとは一線を画す。
自主的に動くアーチストとしてのBiSHは「アイドル」というカテゴリーに軸を置きつつも、自由にBiSHらしさを開花させ、新しいガールズグループの在り方を開拓し始めている。
BiSHはどこへ行くのか?
BiSが果たせなかった武道館公演がとりあえずの目標ではあるが、7月には幕張で7000人の動員を得ているので、近いうちに達成されるだろう。その先、BiSHはどこへ向かうのだろうか?
今期、セブン‐イレブンがおでんのプロモーションにおいて、BiSHとコラボしている。
「新生クソアイドル」としてデビューしたBiSHが、食品のプロモーションに関わるのはどうかと思うが、このコラボは非常に大きな意味がある。
ありがとうおでん「BiSH・おでんの歌」篇
アイドルの活動を支えるのは、ファンの応援であると多くの人が思っているかもしれないが、それはある一定規模までの話だ。より広く認知されファンを拡大するためには、様々な営利企業との関わりが必要になる。
もちろんファンの支持はが不可欠だが、企業資本のバックアップによってグループの認知は拡大し、活動の規模は大きく広がる。ただし、その為には守らなければならないルールも数多発生する。例えばそれは、おでんのプロモーションに関わっている間はおでんが嫌いであっても、表向きでは「おでんが好き」でなければならない。発言の内容にも気を配る必要があるだろう。
このルールは相手が矢沢永吉であっても変わりはない。企業体が使いやすい”アイコン”でありつつもBiSHらしい「楽器を持たないパンクバンド」としての破天荒なイメージを持ち続けられるかが、これからの課題かもしれない。