BiSHはアイドル界のアイアンメイデンになれるか

BiSHのドキュメンタリー映画「ALL YOU NEED is PUNK and LOVE」が12月9日より東京・渋谷HUMAXシネマほかで公開される。

アイドルに興味が無い人にはグループが多すぎてどれも同じように見えるのだろうが、2010年以降のアイドルシーンは、アンダーグランドからメインストリームを形作る前の混沌とした勢いにあふれている。日本の歌謡界に興味があるなら、このシーンの脈動は体感しておいた方が良いだろう。

BiSH IS “Not” PUNK !?

BiSHはその中でも、混沌とした「アイドル」というジャンルにおいて次世代を担えるグループとしてアタマひとつ抜きん出ている感がある。アリーナ、スタジアム級のライブが行えるポテンシャルを持った数少ないアイドルグループだ。

BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトで活動しているが、それは単にプロデューサーである渡辺淳之介と松隈ケンタが、音楽性やプロモーションの過激さ、メディアとの関係性を指して「パンク」という表現をしているだけで、「アイドル」というジャンルにおいて、本来の役割であるカウンターカルチャーとしての「パンク」には当たらないと思うのだ。

ロック史と日本アイドル史の類似性

常々、世界のロック史と日本のアイドルシーン、特に女性のアイドル史に近似性を感じていたのだが、エンターテイメントビジネスにおいて、ひとつのジャンルが辿るバイオリズムが似通うのは論理的にも説明できる。それは生産者の心理と消費者の心理がどのジャンルにおいても同じように呼応すると考えられるからだ。

日本の「アイドル」というジャンルは「AKB」をもって究極の商業スタイルを確立してしまった。いわば「商業アイドル」の完成といえる。そうすると、次に来るのはカウンターカルチャーの登場、ロック史においては「商業ロック」のカウンターとしてピストルズに代表されるパンク、ニューウェーブが誕生した経緯に符合する。

そして、すでにカウンターカルチャーとしての「パンク」はももいろクローバーZによって成されてしまっている。知名度もないし上手くもない、実績もないから立てるステージもない、TVにも出られない、そんなグループがマネージャーの奇策とファンの熱狂によって、時代の脈動が起こすいくつかの軌跡を糧にスターダムへ駆け上がる様は、まるっきりピストルズのサクセスストーリーの様だ。

ももいろクローバーZの登場後アイドルシーンは、特にアンダーグランドにおいて大きく変容した。「商業アイドル」に対抗するためにももいろクローバーZが打ち出した様々な行いは、アンダーグランドで活動する多くのアイドルグループに踏襲され多様なスタイルを生み出すこととなっている。

BiSHの熱量とアイアンメイデンの関係とは

ロック史においても、かつて同じ様な動きがあった。それがNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)のムーブメントだ。パンク・ニューウェーブの流れを受け、イギリスにおいて数多くのバンドが生まれ、その多くはアンダーグランドシーンで熱狂的なファンに支えられ活動していた。今も活動しているグループではアイアンメイデンがそのムーブメントから生まれたグループだ。

このムーブメントはアメリカに渡り、メタリカなどに引き継がれ、その後さらに多くのジャンルを派生しながら現在のロックシーンへと繋がっている。

BiSHはアンダーグランド・アイドルの旗手となれるか

話をBishに戻そう。BiSHを支えるのはこの熱狂だろう。つまり、Bishは日本のアイドル史においては「パンク」の次に訪れたNWOBHMの旗手である「アイアンメイデン」になるんじゃないか、と思っているのだ。アンダーグランドで活動している多くのアイドルはTVにも出ない、チャートにも表れない。しかし、それぞれが熱いファンに支えられて活動している。アイドルファンも、今や1グループだけのファンというのは少なくなって、いくつかのグループを同時に応援するのが当たり前になっている。

ロック史になぞらえると、アイドルというジャンルの行く末が見えてくる。この先、アイドル界にはグランジ、オルタネイティブ、ブリットポップ、ミクスチャーなどに相当する変成を経て、さらに細分化されそれぞれがジャンルとして確立されていくだろう。

今、大きく変容しつつある日本のミュージックシーンにおけるひとつの起点として、BiSHから「アイドル」というジャンルに触れてみるのも良いと思う。

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