2017年の紅白出場が、さらなる活躍を予感させる人気バンド「WANIMA」。
彼らの音楽を聴いていると、生演奏の魅力と、CDやネット配信のデータ音源が持つそれぞれの魅力が、改めて感じられる。
決して元の音源に対して忠実に歌うことがミュージシャンの仕事ではない。
WANIMAが思い出させてくれるのは、そんな音楽の基本である。
彼らがどのような過程を経て今のような位置に立てたのか、少し調べてみたいと思う。
熊本県出身の3ピースバンド
WANIMAは2010年、上京してきたベースボーカルKENTAとギターのKO-SHIN、そして前任のドラムの3人で結成される。
しかし初期メンバーでの活動はわずか2年で終了し、2012年にドラムが脱退。
それでも確実な実力を示してきた彼らは、2012年に現在のドラムを担当するFUJIを加え入れてWANIMAとしての活動を継続する。
TRACE
ファッショブランドLEFLAHとのコラボや、Ken Yokoyamaのツアーに同行するなど、少しずつその知名度を高めていった。
そして2014年に1stミニアルバム「Can Not Behaved」をリリースし、全国デビューを飾ることとなる。
翌年発売された1stフルアルバム「Are You Coming?」はオリコンチャートへのランクインを果たした。
THANX
音楽チャンネル「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS」では2016年のBEST BREAKTHROUGH ARTISTに選ばれ、2017年には初のワンマンライブも成功。
そして年末、紅白歌合戦への参加によって完全な全国区となった。
まさに勢いのままに突き進んできた彼らだが、そこで奏でられる音楽は決して勢いだけではない、彼らだけの「繊細さ」に満ち溢れているように思える。
WANIMAから聴こえてくる繊細さ
WANIMAは決して、パワーとスピードに頼って音楽を奏でているわけではない。
1度聴いてみると、彼らの音楽がこだわりによって編み込まれ、繊細な形を取っていることがわかる。
ともに
それは曲全体の構成にも見ることができ、リスナーを振り向かせるような、「なんだ今のは?」と思わせる工夫が大胆に提示されているのだ。
ただ同じメロディを繰り返すのではなく、たとえ1音でも変化を付けることが、彼らの音楽の信条なのかと思えるほど、単純な作りを拒むイメージが見えてくる。
派手に音をかきならすのではなく、ときには沈黙し、立ち止まって次への助走を付ける技術が、WANIMAには備わっているのだろう。
そこにいい意味で愚直な、真っすぐすぎて辛くなるような純粋な歌詞が合わさることで、WANIMAの唯一無二の音楽性を作り上げるのだ。
これほど単純なようで繊細なミュージックは、本当に久しぶりのように思える。
生で聴くこと、データで聴くこと
最近は音楽のデータ配信が当たり前となったおかげで、曲を聴くことに苦労することはない。
しかしそれと同時にときには、データと生演奏の差にがっかりする機会も増えたように感じてしまう。
WANIMAももちろん、生演奏とデータには明らかな差がある。
だがその差は、圧倒的な驚きによって生み出される「良い差」だといえるだろう。
先に書いたように、WANIMAの音楽はデータで聴く際には、その繊細さとテクニックによって浸透する。
だが生演奏になれば、彼らの持つパワーと熱量が直接放たれるため、既に浸透していた音楽が体内で生まれ変わり、まるで新鮮なものとして再構築されるのだ。
THANX
生演奏で聴くと「こんなによかったっけ」と思わせる。そして後でデータで聴いても、同じ感想を持つことになる。
そんな繰り返しを味あわせてくれるのは、WANIMAしかいないだろう。
なにより演奏技術と歌唱力の高さがあってこそのものだが、それにしてもこの感覚は不思議だ。
共感してくれる人は、果たしてどれだけいるだろうか。
WANIMAを知るためにも、聴き続けなければならない
WANIMAは2018年1月に、2ndアルバム「Everybody!!」の発売を予定している。
同タイトルのツアーも計画されているため、生演奏を聴く機会は近くに訪れるようだ。
Everybody!!Trailer
データ音源としての彼らを楽しみ、そしてライブでしか聴けない彼らの演奏に身を浸す。
これこそ音楽の基本であり、楽しみ方の真骨頂といえるかもしれない。
正直、WANIMAについては友人によるきっかけがなければ、きちんと聴こうとは思わなかったかもしれない。
しかし1度聴いてみれば、ハイレベルな何もかもに気づくことはできる。
まだ躊躇しているのは、もったいない。
とにかくデータで、そして生でWANIMAの音楽に触れてみてほしい。