Mr.Children(ミスチル)のドキュメンタリー作品に込められた若手アーティストへのミチシルベ

映画主題歌「himawari」や配信限定のベストアルバム「Thanksgiving 25」をリリースし、2017年も精力的な活動を見せるバンドMr.Children。そんな彼らのライブとドキュメンタリーを収録した映像作品「Mr.Children、ヒカリノアトリエで虹の絵を描く」が、12月20日に発売されることが決まった。

22年ぶりのHALL TOURを収録した本作は、バンド自身の記録用として保管されていた映像が利用されている。よりメンバーのこころに近寄った、ある種生々しい作品であることが予想されるだろう。

Mr.Childrenといえばまるでアスリートのように動くパワフルなライブシーンが魅力の1つとして挙げられるが、実は映像として多くのドキュメンタリーを世に出している。その内容はときに楽しげに、そして苛立ちに飲まれながら音楽と向き合うメンバーの姿が映されていた。

レコーディング風景や私生活をまったく明かさないアーティストもめずらしくはない業界の中で、なぜMr.Childrenはこんなにもドキュメンタリーを発表し、自分たちをさらけ出すのか。

そこには音でも映像でもない、まったくちがった音楽スタイルを垣間見ることができないだろうか。

 

ドキュメンタリーでしか表現できない音楽

かつてアルバム「シフクノオト」や「REFLECTION」にも、彼らのレコーディング風景を収録したドキュメンタリーが付属した。何度も歌い直し、何度も録音し直すメンバーの姿には、「愚直」という言葉すら当てはまりそうだ。

しかしその愚直な姿を見て、ライブとはちがう、そして歌ともちがうなにかを、リスナーは感じることができるのではないだろうか。少なくとも私は、桜井氏が「もう1回!」といいながらマイクの前に立つ様子を見ながら、言い知れない感動を抱くことになった。

わずかな音の感情を読みとり、選別していく作業が、彼らのドキュメンタリーに収録されている主な内容だ。メンバーの動きや視線がなにを捉えているのか、正確なことは計り知れない。しかしそこには確実に、CDでもライブでも表現できない、「ドキュメンタリーとしての音楽」が成立しているように感じられるのだ。

「ドキュメンタリーとしての音楽」は、今後の音楽において重要な位置を占めるだけの可能性を持った、新しいスタイルであるように筆者は感じている。

 

ドキュメンタリーは若いアーティストのミチシルベとなる

そしてこの「ドキュメンタリーとしての音楽」に何よりも影響されるのが、Mr.Childrenのような音楽を目指す若いアーティストたちだろう。

RADWIMPSやスキマスイッチといったミュージシャンが、Mr.Childrenから多大な影響を受けていることは有名だ。しかし今後はドキュメンタリー映像によって、さらに深く影響されるアーティストたちが現れることが予想できる。

動画サイトが台頭したことで、今の若いアーティストは昔よりもかなり音楽と映像を同時に感じやすい。そんな世代がMr.Childrenのドキュメンタリーから学び取ることのできる情報量は、非常に多量であることが予想されるだろう。

音楽をはじめるきっかけになり、音楽に迷ったときの指針となる。Mr.Childrenのドキュメンタリーには、そんな若いアーティストたちの「ミチシルベ」になるだけの魅力と価値があるのだ。ファンアイテムに終わらない創造性は、日本の音楽シーンにとっての明るい材料であることは間違いない。

 

ミチシルベはどこまで続くか

「ドキュメンタリーとしての音楽」は今後も活発に、おそらく新規のアーティストたちによってさらに広がっていくことだろう。そしてMr.Childrenのドキュメンタリーも、彼らの音楽が完成するまで終わることはないはずだ。

ドキュメンタリーがアピールの手段ではなく、1つの表現方法として新しいアーティストたちに受け継がれていくことを願ってやまない。Mr.Childrenが実践してきたミチシルベが続く限り、音楽に手を伸ばす若い世代が途切れることはないだろうから。

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