原点に居座り続ける強さ。それがLOVE PSYCHEDELICOのDELICO SOUNDS

DELICO SOUNDSという言葉を聞いたことがあるだろうか。
2組ユニットLOVE PSYCHEDELICOの音楽スタイル、またはLOVE PSYCHEDELICOらしさを表し、その楽曲やアルバムの完成度を示す1つの単位のような役割を担うことがある。

2017年に最新アルバム「LOVE YOUR LOVE」が発表され、相変わらずのDELICO SOUNDSを体験することができた。
そこにあるのはまぎれもない安心感と、また次はいつ新曲に会えるだろうかといったじれったさである。

LOVE PSYCHEDELICOがなぜ今も変わらず愛され続けるのか。2人の作り上げた原点に注目して、その謎に迫っていきたい。

レトロ風味の存在感

LOVE PSYCHEDELICOは決して頻繁にシングル曲やアルバムを発売するアーティストではない。
最新シングルである「Beautiful World」は2012年発表のものだし、上にも書いた最新アルバムも実に4年ぶりのものだった。

Beautiful World

それでもLOVE PSYCHEDELICOは、いつまででも待っていられる魅力を持つアーティストであることに疑いの余地はない。
それは変わらないことに主軸をおいた音楽性の結果であるといえる。

LOVE PSYCHEDELICOのデビューは2000年。そのときに発表された「LADY MADONNA 〜憂鬱なるスパイダー〜」「Your Song」「Last Smile」などは、今になってから聴きなおしてもちっとも古臭くない。

Last Smile

むしろ当時からどことなくレトロ風味なサウンドが評価されていたことから、いつ聴いても懐かしさと温かさを感じられることがLOVE PSYCHEDELICOの魅力として定着した結果だといえるだろう。

最新が常に新鮮であるわけではない

いつどんな時代に聴いても同じ感覚、同じ音楽性を提供し続ける2人は、常に最新が新鮮であるわけではないことを証明するアーティストになっているといえる。
最新曲から入ろうと、過去の楽曲から入ろうと、結局はLOVE PSYCHEDELICOという魅力を余すことなく味わうことができるのが、彼女たちの音楽的本質となっているのだ。

This moment

多くのミュージシャンは、過去の自分たちの音楽との差異を売りとして、または自分への課題として新曲を作り上げる。だからこそときに行われる「原点回帰」に意味が生まれ、ファンを長く楽しませることになるのだろう。

しかしLOVE PSYCHEDELICOは、最初から今日までずっと「原点に居座り続ける」希少なアーティストとなっている。
もちろん最新曲ごとにさまざまな工夫はあるだろう。しかしいつだってLOVE PSYCHEDELICOという原点にしっかりと手が届く位置にいるからこそ、多くのリスナーにとって安心して聴けるミュージシャンとなっているのだ。

原点との距離感こそ、LOVE PSYCHEDELICOがLOVE PSYCHEDELICOである大きな理由となっているのかもしれない。

日本語歌詞と英歌詞のバランス感覚

LOVE PSYCHEDELICOの音楽における特徴の1つは、日本語歌詞と英歌詞の融合だといえる。
現代ミュージックでは、歌詞に英語を取り入れることには当然なんの抵抗もない。しかし結局は日本語が持つ独特のリズムや手触りに慣れ親しんでいる私たちは、歌の中に日本語の安心感を求めがちになる傾向が見られる。

そういった点では、LOVE PSYCHEDELICOの日本語歌詞と英歌詞の融合度は完璧に近い。

15th ANNIVERSARY TOUR -THE BEST-

英語のなかにそっと差し込まれる日本語は心地よく、知っている言葉なのにはじめて聴くような感動を持たせる。逆に日本語が続いているときにふっと英語が聴こえてくると、前後の日本語のコントラストがより明確になっていく。

この絶妙なバランス感覚こそ、LOVE PSYCHEDELICOのDELICO SOUNDSらしさであるといえるだろう。

邦楽への帰り道としてのLOVE PSYCHEDELICO

音楽ファンには、誰しも1度は「洋楽への憧れ」を抱く時期があると思う。

日本の音楽に飽きたわけではないけれど、海外のミュージシャンの歌や英歌詞の魅力にどっぷりと浸かってしまうことは決してめずらしくはない。
なかにはそのまま洋楽ばかり聴くようになり、邦楽の良曲たちを自主的に逃しているもったいない人たちを筆者はたくさん知っている。

そんなときLOVE PSYCHEDELICOの音楽は、邦楽への帰り道として機能することだろう。

Freedom

洋楽らしいサウンドのなかに、日本語が1つのスパイスとなっているLOVE PSYCHEDELICOの音楽は、洋楽ばかりに目を奪われ、国内の音楽を聴く機会を減らしている人たちの、よい道しるべになると思われる。

もし周りに「俺って洋楽しか聴かないんだよね」とか、「最近の邦楽ってイマイチじゃない?」というような人がいるのなら、ぜひLOVE PSYCHEDELICOをおすすめしてあげてほしい。

その日からきっと、LOVE PSYCHEDELICOを中心に邦楽の良さに気づいてくれることだろう。
2人の作り上げたLOVE PSYCHEDELICOの原点は、既に邦楽としての原点にもなりつつあるのかもしれない。

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