今、各界の話題をさらい、しっかりとスターダムを上っている「GLIM SPANKY」による3枚目のフルアルバム「BIZARRE CARNIVAL」が届いた。
GLIM SPANKYを知らないという人に簡単に紹介しておくと、2014年にメジャーデビューした松尾レミ(Vo&G)と亀本寛貴(G)の2人による「2ピースのブルースロックデュオ」である。まだまだデビュー間もない彼らだが、新人然としていないサウンドとステージングでどんどんファンを拡大していっている。
GLIM SPANKYのブルース「純度」は高い
ブルースというジャンルは、聴く人を選ぶちょっと特殊なクセがある。ブルースを解する人は年齢も性別も問ず、サウンドの斬新さや曲構成の複雑さ、目新しさなど関係なく、ブルースの「純度」に反応する。そして、純度の高いブルースを見つけると嬉しくなって人に紹介する。かつて日本一の国産ブルースバンド「憂歌団」をタモリがラジオでかけまくった様に。
GLIM SPANKYもいとうせいこう、リリー・フランキー、みうらじゅんといったサブカル寄りの業界人から、桑田佳祐や佐野元春などの大御所まで彼らのブルースを解する人がこぞって取り上げ、1stシングルがドラマ主題歌に使われた他、数々の音楽フェスに呼ばれる様になっている。
GLIM SPANKYの音楽のバックボーンには、ブルースロック華やかかりし頃の60年代~70年代のアーチストや楽曲があるが、同じようなバックボーンならSuperflyやLOVE PSYCHEDELICOにもある。しかし、ブルースの純度はGLIM SPANKYの方が断然高い。
それは、松尾レミのハスキーな声質が大きく貢献しているといえるが、ハスキーな声で唄えばブルースっぽいでしょ。という安易な理由ではない。松尾レミが持っている声で何を唄ったらよいのか?どう唄えば人の心を揺さぶることができるか?ということを考えた上で、プリミティブな音と構成にたどり着いているからだ。ヒントとなったのは、同じく二人組のロックデュオである「The White Stripes」だったという。彼らもまた最小構成で世代を超えた純度の高いロックの原石のようなサウンドを聴かせてくれていた。
GLIM SPANKYのプリミティブなサウンドが呼び覚ますもの
そして今、GLIM SPANKYは、高純度のサウンドを生みだす次世代のアーティストとして、最も注目されているのである。とかくサウンドエフェクトやデジタル音でデコラティブに装飾され、激しいビートと派手なステージングで無理やりに”ノセられる”音が溢れる中で、GLIM SPANKYの奏でる純度の高いプリミティブなサウンドと淡々としたステージングは、聴く者の両肩をガッシリと掴み大きく揺さぶる。
GLIM SPANKYの放つ音には、昔からブルースロックを聴いてきた年代の人には「あぁ、ロックってこういうものだったな。」ということを思い出させてくれる力があるのだ。
しかし彼らの音楽はただの懐古趣味のサウンドでは無いし、彼ら自身も60年代~70年代のブルースロックの焼き直しをするつもりもない。彼らと同世代の新しい聴衆に向けて、GLIM SPANKYの信じるアプローチで、ブルースの持つ求心力を、ロックの持つ魂を伝えていく。そのことをニューアルバム「BIZARRE CARNIVAL」で示している。
ニューアルバム「BIZARRE CARNIVAL」が示すもの
「BIZARRE CARNIVAL」では、前2作から繋がるGLIM SPANKYらしい純度の高いブルースロックのテイストは残しつつも、コンガをフューチャーしたダンスチューン「END ROLL」やトラディショナルフォーク風の「白昼夢」など、彼らの持つ音楽性の広さを見せている。
なかでもアルバムのリードトラックである疾走感あるアップチューン「吹き抜く風のように」では、GLIM SPANKYの特異な世界観が見事に表現されている。荒井由美が唄い始めたと思ったら、あっという間にハードなロックサウンドに巻き込まれていく。こんな楽曲を聴かされたらジッとしては居られない。
これからもきっと、多くの人がGLIM SPANKYが生み出す、研ぎ澄まされた高純度のサウンドを発見し、人に伝えていくだろう。ロックを忘れかけている古い世代から、ロックに初めて触れる新しい世代に至るまで、多くの信者を巻き込んでいくのを期待している。