リリースシングルが立て続けにCM起用され飛ぶ鳥を落とす勢いで認知を広げているSuchmosが、6月20日ミニアルバム『THE ASHTRAY』をリリースした。
このアルバムには、話題のCMソング「808」や2018 NHKサッカーテーマソング「VOLT-AGE」などのタイアップ楽曲を含む新作7曲が収録されており、初回特典には今年の11月に予定されている「横浜アリーナ2days」の先行予約応募券が封入されている。
着実にファンを拡大し、順風満帆のSuchmosはアルバムリリースの前日、2018FIFAワールドカップの日本チーム初戦ハーフタイムに、NHKホールで行われていた「NHK フットボールフェスティバル」のステージに立ちNHKサッカーテーマソングである「VOLT-AGE」を披露したが、そのステージが今、物議を醸している。
Suchmosを襲った不幸な出来事
いや、あれは事故だ。極めて不幸な事故であったと思う。
Suchmosが悪いわけでもなく、サポーターが悪いわけでもなく、ましてやワールドカップ初戦を白星で飾った日本代表が悪いわけでもない。
Suchmos / VOLT-AGE
NHKにおけるワールドカップのテーマソング『VOLT-AGE』はSuchmosらしいイカした、スカしたナンバーだ。サッカーのエモーショナルさにそぐわないなど前評判はあったが、Suchmosとして良曲を提供していると思う。
1対1、相手チームのコロンビアは一人欠いた状態で迎えたハーフタイム。
南米チームを相手にした初勝利への期待で最高潮に盛り上がる日本全国民の前で、アルバム発売を翌日に控えたSuchmosが地上波で初めてとなるパフォーマンスを披露した。
そう、Suchmosにとっても「絶対に負けられない試合」であったそのステージは、結果から言えば”大失敗”だった。
サッカーのハーフタイムに求められる音楽とは
重ねて言うが、Suchmosは悪くなかった。Suchmosらしい楽曲をSuchmosらしいパフォーマンスで全うしていた。
だから、あのステージを仕掛けたNHKの担当者とSuchmosのプロモーターには、今すぐ首でもくくっていただきたい。
確かにSuchmosは幅広い年代に認知され、サッカーが好きな人にはSuchmos好きは多そうなイメージがある。渋谷で大騒ぎしている、広くて浅い”もうグッナイ”な人達にもSuchmosは人気のバンドだろう。
Suchmos / STAY TUNE
だが、あの場面で、あのステージで、求められていたのはSuchmosが聴かせるオシャレでクールなシティポップではないことは、熱いサッカーファンでなくてもわかる。
あの場で求められる音楽とは、椎名林檎の「NIPPON」とかThe White Stripesの「Seven Nation Army」とか、人々を高揚させ「鼓舞」させる音楽であったはずだ。
The White Stripes / Seven Nation Army
それは、残念ながらSuchmosが聴かせるクールでスマートなシティポップとは真逆な性質を持つもので、Suchmosがそれに応えるならSuchmosらしからぬ新境地を垣間見せる音楽でなければならなかった。
Suchmosは踊っているのか踊らされているのか
つまり、あの場でSuchmosは最も「お呼びでなかった」アーティストであり、Suchmosらしいそのパフォーマンスは、同点でハーフタイムを迎え大いに盛り上がるサポーターに冷や水をブッかける結果となった。
あぁ・・・なんでSuchmosはあのステージに上がってしまったんだろう?
アンタ達はミュージックシーンに蔓延る安易な商業主義に「No」を突きつけて、自分たちの信じる音楽を作り上げて、自分たちの思うままに活動してるんじゃなかったのか?
Suchmos / 808
アルバムリリース前日に場違いなステージに立って新曲を歌うなんて、売れないバンドがやる商業主義にまみれたポンコツプロモーションそのものじゃないか。
ニワカ的なブームに乗って、メディアで取り上げられることも多くなった自分達を、どんな目で見ているのだろう。自分達を持て囃す人達と、いいように翻弄されている自分達も含めてシニカルに捉えているのか、それともそんなことにも気づかず、ただ流されているのか。
悲劇を乗り越えSuchmosらしく活動してほしい
2018年6月19日、2018FIFAワールドカップロシア。日本チーム初戦となる対コロンビア戦。試合の結果は歴史的な勝利で決したが、そのハーフタイムでのステージはSuchmosにとっても、Suchmosファンにとっても忘れられない悲劇となった。
ミニアルバム『THE ASHTRAY』を聴いて、Suchmosが本当は素晴らしいバンドであることを、もう一度再認識したいと思う。