サブカル文学少女はこれを聴け!VOCALOID小説派生曲とは?

例年からは信じられない大雪ですけどみなさん生きてます?
私は寒くてベッドの中で本を読む以外のことをしたくないです。

なにもしたくなくても朝は来る。
ので、のろのろと起き上がり仕事してるわけですが、最近BGMにしているのが「VOCALOID小説派生曲」というジャンルの曲。
これが何かというと、原作の小説もしくはモデルにした文豪がいつつ、それを楽曲にしてVOCALOIDに歌わせているというもの。

「文豪ストレイドックス」や「文豪とアルケミスト」のヒットによって、オタクにも身近になった「文豪もの」ジャンルですが、音楽という観点から攻めるのはちょっと面白いですよね。
というわけで、「おお!これは!」と思った楽曲を紹介しますのでよければぐるっと一周してきてみてください。
高校の休み時間夢Qとか乱歩とか読んでた君たちに言ってる!そう、君たちだ!

教科書でおなじみのあの小説を音楽化

「タイガーランペイジ/sasakure.UK」

まずは中島敦の「山月記」モチーフ曲から。
作曲者は「ぼくらの16bit戦争」などでおなじみのsasakure.UK(ささくれゆーけー)。
なんとこの曲「VOCALOID伝説入り」している。

「VOCALOID伝説入り」というのは、再生数がミリオンを達成している楽曲のこと。
で、楽曲も素晴らしいんですけどMVがとんでもなく手間がかかってるんですよ。

オリジナルのMMDモデルを使用してるんですね。(MMD=MikuMikuDance。自分で3Dモデルを作れるフリーソフト)
完璧にゲームの中のような美しいモデルではないんだけれど、それがこの荒削りにデジタルな世界に最高にマッチしてる。

2番サビ前のBメロが完全に「山月記」なので、ぜひ読んだことがない人も聴いて興味を持ったら一読していただきたい。

「蜘蛛糸モノポリー/sasakure.UK」


こちらは同じsasakure.UKの楽曲だが、題材にしているのは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」。
短編な上に教科書に載ってることも多いので読んだことある人はかなりいるとおもう。

「蜘蛛の糸」はストーリーとしては、人殺しや強盗をなんとも思わないカンダタという悪人が、蜘蛛を踏みつぶしそうな時に逃がしてやったからという理由でお釈迦様がカンダタの落ちた地獄に、天国へ続く糸を垂らしてやるんですね。

カンダタはそれを喜んで登っていくんだけど、他の亡者が登ってきているのに気づいて「この糸は俺のだ!」と叫んだ途端プツリと切れて地獄へ逆戻り…という。
この楽曲ではカンダタの悪逆非道がMVで示唆されている上に、地獄の辛さも伝わって来る画面構成になっていて、動画としても素晴らしいんですね。

音楽的には静かに進む楽曲なのだけれど、Bメロの焦燥感やサビの切ないメロ、そして各所に入っているピアノがめちゃくちゃ綺麗で、MV見終わった後映画を見たような感覚になります。

「走れ太宰/てにをは」


言葉遊びと音の当てはめ方が最高にうまい「てにをは」ですが、こんな曲も作ってます。

太宰で「走れ」というと「走れメロス」を思い出すけど、歌詞は別に「走れメロス」知らなくても十分楽しめる内容。

作者らしくところどころに散りばめられたキーワードが太宰の人生を表現しているので、「よく聞く文豪だけどどんな人なんだろう」って人に最適。
芥川賞とれなかったことをここまで後世ネタにされ続けるとは本人も思わなかっただろうなあ。

これぞ文学!親に隠れて聴きたい名曲

「曽根崎心中/デッドボールP」

泣く子も黙る近松門左衛門作の「曽根崎心中」をメタルにしちゃった曲である。
百合として書かれてるけど別に原作は百合じゃないです。

この楽曲は発表された時になにかしらの創作をしているひとの琴線に触れまくり、なんと「曽根崎心中3大PV」と呼ばれるほどクオリティの高いPVが投稿された。(タグ外のPVも合わせたらすごいことになるのでは)
デッドボールPは他のメタルやハードロック調の曲を中心に作っていて、楽曲も素晴らしいのだけれどアウトとセーフの間を行き来している歌詞が多いので検索するときは注意しよう!

「少女ふぜゐ/みきとP」


この完全に椎名林檎を思わせるサウンド作りが素晴らしい。
元ネタは夢野久作『少女地獄』内の「なんでもない」。

姫草ユリ子という、臼杵医院に務める看護師がモデルだと思われます。
このユリ子という女性、いたるところで「なんでもない」、つまり意味のない嘘をつくのですが、それが結局彼女の世界を救うただひとつの方法だったっていう話なんですよ。
それを見事に描きだしてるな、という感ありますね。

歌詞の「ドウゾご一緒に参りましょう 地獄へ」という歌詞がやばい。
ユリ子の言う地獄はどんな世界なのか、読まないうちから妄想が膨らむ一曲。

無料で著作期限切れの小説が読めるサイト「青空文庫」においてありますから試しに読んでみてくださいな。

「逆罪行進曲~怪~/マチゲリータ」


太宰をモチーフに「人間失格」をなぞっている作品。
歌詞は別に本文使ってるとかではないです。

太宰という人間は創作者にとってイマジネーションを刺激される存在らしく、特に「人間失格」というタイトルは派生物がよくあります。
この楽曲は「逆罪行進曲」をアレンジメントしたものなのですが、PVも違うので気になった方は両方聴いてみてください。

ちなみにこちらの「怪」版は、PV中でマチゲリータ本人のツイッター投稿が使用されています。

子供にも進めたいボカロ文学

「カムパネルラ/sasakure.UK」

タイトルズバリ、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。

sasakure節前回の楽曲構成で、聴き飽きるってことがない音作り。
私は宮沢賢治は読むドラッグだと思ってるんですが、あんまりそういう感想を見ない。

あの、宮沢賢治も「青空文庫」で読めるんですけどね、著名なもの以外がとんでもなくぶっ飛んだ設定だったり文脈だったりするんで面白いですよ。

「ごんのおくりもの/TELL」

すみませんyoutubeにありませんでした。ニコニコ動画で聴いてください。
小学生の時に全員が「なんだこの結末は!悲しい!」ってなったであろう新美南吉作「ごんぎつね」をモチーフにした楽曲。

この曲はちゃんと聞き取りやすいように調声していて、歌詞が読めないちいさな子でも聴いててなにかしら感じることがあると思います。
なんとなく初期ミクロックを感じる曲調なのも推せるポイントです。

古き良きボーカロイド曲って感じ。

掘り返せば名曲に当たる!このタグは深いぞ!

「VOCALOID小説派生曲」というタグは、kiichi作「電気羊の夢」で始まったタグ。

電気羊といえば「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」がパッと思い浮かびます。
映画「ブレードランナー」の原作でもありますね。

この曲にはつけようと思えば「VOCALOID映画派生曲」というタグでもよかったはずなのですが、そうしなかったことで数多くの楽曲をサルベージすることができるようになりました。
ジャンルもメタル、ロック、エレクトロニカ、テクノポップと多岐に渡っています。
ぜひお気に入りの一曲を見つけて、読書のBGMにしたいですね。

文=阿部春泥

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