ゲーム音楽はプレイした経験と思い出補正が合わさって、はじめてその本質を魅せるといった面がある。
しかしなかには、それ1つで独立した魅力を放ち、「ゲーム音楽」という枠組みを超えた名曲も確かに存在しているのだ。
その代表格といえば、RPGゲーム「ペルソナ」の音楽だろう。
世界規模で人気を集めているペルソナは、その独創的な雰囲気とシステム、そして古き良き日本のゲームらしさをつめこんだ傑作として名高い。
そんなペルソナの株を上げている1つの要因が、唯一無二ともいえる作中の音楽だ。
なぜペルソナの音楽はこれほどまでに他のゲームたちとはちがうのか、その秘密と魅力について語っていきたい。
ゲーム音楽にあるまじきボーカルの存在感
ペルソナミュージック最大の特徴といえば、ボーカルの存在感だ。
ゲームの雰囲気を壊さない、没入感を邪魔しないことが暗黙の了解となっているゲーム音楽のなかで、これほどまでに存在感を示すボーカルを起用しているものは少ない。
ブラスやジャズの演奏に混ざって聴こえてくる英歌詞は、思わずゲームプレイの手を止めてでも聴き入ってしまうだけの魅力に満ちている。
ペルソナ5 オープニングアニメーション
特にペルソナ3以降の楽曲は、ボーカルがゲームの世界観を担う役割も果たしていて、それ無しでは語れないほどの重要性を持つようになった。
ゲームの背景を支える音というよりも、音楽を地盤に作られたシーンやプレイが目立つ構成になっていることが、ペルソナミュージックの「らしさ」であるといえるだろう。
キャラクターたちの聴いている音を聴くというトリック
ペルソナシリーズは基本的に、私たちが普通に生活している世界と、主人公たちだけが関わることのできる異世界との対比によってストーリーが進行する。
そのため街中を自由に移動するシーンが多く、雑踏や人々の会話が自然な形でゲーム中に流れ込んでくるのだ。
だからこそボーカルを主体としたゲーム音楽に違和感がなく、むしろ現代風のアレンジが非常にマッチする形となっている。
街を歩いているとき、ふと音楽が耳に届くあの感じ。それこそがペルソナミュージックの本質となるのだろう。
『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』 オープニングムービー
またペルソナの登場人物たちの多くは学生であり、みんな当たり前のように流行りのかっこいい音楽を聴く世代となっている。
一部のキャラクターに関してはイヤホンで音楽を聴くシーンをピックアップされたりもしているため、ゲーム中に流れている音楽はキャラクターたちが聴いている音楽であると捉えることもできる。
これはプレイヤーとキャラクターの距離を縮め、よりゲームへの感情移入を促す結果となっているのだろう。
繰り返し聴くというゲーム音楽の基本はきっちり抑えている
ドラゴンクエストの作曲家すぎやまこういち氏がいうように、ゲーム音楽は繰り返し何度も聴くことを前提として作られなければならない。
ペルソナミュージックは型破りなスタイルでありながらも、そういったゲーム音楽に必要な基本はきっちりと抑えていることがわかる。
印象的なリフやキャッチーな言葉を定期的に導入することで、繰り返し聴くことに苦痛を覚えさせない作りを意識しているのだ。
『GAME SYMPHONY JAPAN 21st CONCERT ATLUS Special ~ペルソナ20周年記念~』ダイジェスト視聴映像
それでいてペルソナミュージックにはいわゆる「サビ」があり、些細な場面をぐっと盛り上げてくれてもいる。これがゲームプレイから単調さを取り除く方法として画期的であることは、ペルソナを遊んだことのある人ならわかってくれるだろう。
「繰り返し」と「サビ」の見事な融合こそ、ペルソナミュージックが他の音楽と一線を画す理由となっているように思われる。
目黒将司の挑戦の結果
ペルソナミュージックを制作している目黒将司氏は、毎回ちがった工夫でゲームをバックアップしてくれている。
強いテーマ性を持つペルソナの世界観を崩さず、むしろ音楽あってこそのペルソナと言わしめるまでになったのは、目黒将司氏の探究心と技術力の成果に他ならない。
ペルソナは海外を含めた多くの場で認められ、ゲーム音楽CDはオリコンデイリーチャート1位を獲得するほどにもなった。それはゲーム音楽への新しい挑戦を行った目黒将司氏の功績であり、ゲーム音楽の可能性を広げた偉業だといえる。
今後のペルソナシリーズも、目黒将司氏が作曲を行っていくことが予想されるが、そこに不安の影は一切存在しない。
次はどんなアレンジが聴けるのか。ゲーム内容そのものだけでなく、その音楽にまで期待できるのが、ペルソナ最大の特徴であり面白みであるといえるだろう。