電気グルーブと湯浅政明が魅せるサブカル三重奏『DEVILMAN crybaby』は必見!

2018年1月10日、電気グルーブの3年ぶりとなるシングル「MAN HUMAN」がリリースされた。この「MAN HUMAN」は、新年5日よりNetflixにて公開となったアニメ作品『DEVILMAN crybaby』の主題歌となっている。

2018年は永井豪の画業50周年としていくつかのプロジェクトが企画されており『DEVILMAN crybaby』もそのうちのひとつだ。

『デビルマン』という古典的なサブカルチャー作品に湯浅政明が監督として挑むとなれば、サブカル気質の人は否が応でも期待が膨らむところだが、さらにオープニングテーマに電気グルーブが起用されるとなれば、それはもう面白かろうが、面白くなかろうが「見届けなくてはならない」使命感に駆られるものとなる。

「ジャパニメーション」と一線を画す湯浅政明の世界

今や世界的規模で高い評価を受けている日本のアニメーション。その作り手として、宮崎駿や庵野秀明、『サマーウォーズ』の細田守、昨年『君の名は』のヒットを放った新海誠など、世界的に高い評価を受けている監督は多い。

そして今回『DEVILMAN crybaby』の監督を務める湯浅政明も、世界的に評価されているアニメ監督の一人だ。

『DEVILMAN crybaby』スペシャルムービー

湯浅政明の作品は数多い日本のアニメ作品の中でも特別異彩を放っている。いわゆる一般的に「ジャパニメーション」として認知される大衆娯楽アニメのテイストとは一線を画し、大胆なデフォルメや斬新な構図の多用、サイケデリックな色使い、実写映像を織り交ぜるなど他のアニメには見られない表現方法を用い「映像作品」と呼びたくなるようなコンテンツを作り続けている。

言ってしまえば一種「通ウケ」するアニメ監督で、その作品は国内外で数々の賞を受賞しており、特に海外での評価が高いが、国内において認知度はそう高くは無い。それでも昨年は『夜は短し歩けよ乙女』と『夜明け告げるルーのうた』が劇場公開され、次世代アニメ監督として存在感を示すこととなった。

湯浅政明作品と音楽

湯浅政明の作品では音楽の使い方も独特だ。アニメクリエーターとして彼の認知を広めたテレビシリーズ『四畳半神話大系』では、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲「迷子犬と雨のビート」を起用し、実写映像を大胆に使用したオープニングで他のアニメ作品とは明らかに違う世界観を印象付けた。

昨年公開の『夜は短し歩けよ乙女』では、今をときめく星野源を声優として起用しながらも、再びASIAN KUNG-FU GENERATIONとタッグを組み、『四畳半神話大系』からの流れを感じさせる青春群像劇を描いている。

ASIAN KUNG-FU GENERATION / 荒野を歩け(映画『夜は短し歩けよ乙女』ver.)

また同年、少年と人魚との出会いを描いたファンタジー作品『夜明け告げるルーのうた』では、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を作中の重要なアイテムとして起用している。

『夜明け告げるルーのうた』PV

こう最近の作品を見ると、恋愛要素を含んだ青春劇が得意な監督の様な印象を受けるが、『四畳半神話大系』で高評価を受ける以前には『ケモノヅメ』『カイバ』といった、かなり尖ったシリーズ作品を発表している。

特に湯浅政明初のシリーズ監督作品『ケモノヅメ』は、『DEVILMAN crybaby』の世界観にもつながるハードボイルドなSFアクションで、ジャズパンクバンド「勝手にしやがれ」の楽曲「オーヴェール・ブルー」を起用したオープニングは衝撃的にカッコいいので、未視聴の方は是非チェックしてもらいたい。

ケモノヅメ 第1話(配信終了日:2018年2月28日)

サブカルチャーを植え付けられた永井豪チルドレン

永井豪といえば「デビルマン」をはじめ、今年新作として公開予定の「マジンガーZ」「キューティーハニー」など70年代初頭に子供向けTVアニメの原作者として時代を席巻していた漫画作家である。

先日、作者に許可も取らずに制作された「デビルマンが影響を与えた有名作品が列挙された広告」が話題となったが、「デビルマン」は70年代の初めに幼少期を過ごした日本人であれば「影響を受けていない人などいない!」と思い込んでもおかしくないほど、文化始原として多大な影響を与えたと言える。

電気グルーブと湯浅政明が魅せるサブカル三重奏『DEVILMAN crybaby』は必見!

しかし、永井豪の作家性の根底には”エロ・グロ”が強く含まれており、永井豪原作のアニメは他の子供向けアニメ作品とは違い、”サブカルチャー”という認識すら無い時代に” サブカルチャー”の雰囲気を体験させる作品であったように思う。

だから、この世代の人間が永井豪作品の影響を受けていかったならば、大人から子供までアニメを楽しんでいる現在の” 一億総オタク化”時代は無かったかもしれない。

今回、楽曲が起用された電気グルーブも、監督の湯浅政明も、幼少期に永井豪作品の影響を受けたど真ん中の世代である。いままで「デビルマン」は何度かリメイクされているが、今回は正に永井豪チルドレンによる初のリメイクと言えるだろう。

永井豪画業50周年プロジェクトとしてリメイクされる『DEVILMAN crybaby』をはじめとする新しい永井豪作品が、現在のサブカル層に影響を与えることを期待している。

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