音楽の長い歴史の中で、ずっと変わらないものと変わり続けるものがある。
変わり続けるものといえば流行、その年代ごとにとあるきっかけで巻き起こるブームだ。
歌謡曲が流行り、バンドが流行り、アイドルが流行りそしてデジタル音楽が流行り・・・。
業界で長く生き続けるアーティストにおいても、少なからずこの変わり続ける音楽シーンの影響を受けて常に時代に合わせて変化をしている。
今回は、今までの長い音楽史における年代ごとの音楽シーンの流行りや特徴に迫ってみたい。
なぜ変化は起こるのか?
どの年代でも、社会現象のような流行が起こり、その当時は誰もがその流行に陶酔し終わりがくることなど考えない。
ただ、歴史を振り返ると必ず流行は衰退し、終わりを迎えている。
それはなぜだろうか。
なぜ年代ごとにその流行は変わっていくのだろうか。
慣れと飽きという人間の本能
ひとつの理由はここにある。
どんなにお気に入りのアーティストがいて、どんなに好きな1曲があっても、365日聴き続けたらその魅力はなくなり、それどころかノイローゼになってしまうだろう。
スケールの大小はあれど、この効果が各年代ごとの音楽シーンにも起きている。
歌謡曲が流行れば、音楽業界は歌謡曲の路線で次々とアーティストを輩出し世間を賑わす。
バンド、アイドル、すべてそうだ。
そうなると音楽シーンは同じようなアーティストで飽和状態になる。
言ってしまえばそれが“普通”になるのだ。
非現実を求める音楽の世界で、普通に魅力を感じるリスナーはいないだろう。
この繰り返しで、流行は死と再生を繰り返していくのだ。
技術の進歩
オーケストラに見る生楽器から電気を使ったエレキギター、電子ピアノなどが生まれ、果てはインターネットやPCの普及で自分で弾かなくても音楽が作れるようになった。
録音方法も蓄音機での録音から始まり、一発録りが当たり前だった自体から、MTR、DTMなど技術の進歩にともない個人宅でもそれ相応の音源を作れるようになった。
新しい技術はとめどなく音楽業界にも参入していき、そのたび賛否両論を受けながらも、その技術は新しい流行や年代ごとの特徴に大きく影響していったのだ。
1980~2000年代の音楽シーン
上記のような理由で新しい流行や音楽ジャンルが生まれ、常に音楽シーンは変化を続けている。
それでは、1980年代~各年代ごとの音楽シーンの特徴を見ていこう。
1980年代
ジョン・レノンの射殺事件やピンク・レディーの解散、山口百恵の結婚と引退発表など世間を騒がした怒涛の年代。
またCDへのメディア移行期でもあり、新しい音楽カルチャーの一歩を築いた年でもある。
この時期の特徴としてはニューミュージック、シティポップなどという言葉が飛び交い、音楽シーンでポップな面が色濃く出ていた。
また小室哲哉率いるTMN(TM NETWORK)などを筆頭に、デジタル音楽が参入してきたことにより歌を聞かせるというより、曲全体を鮮やかにポップに仕上げるということに拍車がかかった。
その一方で、第二次バンドブームとして、BOØWY・REBECCA・THE BLUE HEARTS・米米CLUBなど斬新で衝撃的名バンド達が世間を賑わした。
1990年代
小室ファミリーからB’zをはじめとするいわゆるビーイング系、そしてXやLUNA SEAなどのヴィジュアル系にMr.Children、スピッツなどのロックバンド系、更にはm.c.t.aなどのヒップホップまであらゆる音楽が切磋琢磨し音楽シーンを盛り上げた時代。
そして、それらの裏では宇多田ヒカルやMISIAなどの登場により、空前のR&Bブームも巻き起こった。
CDの売り上げも絶頂期にあり、ミリオンセラーが連発。
ランキングトップ10に入らなかったとしても、10~50万枚を売り上げる楽曲も続出していた時代でもある。
そんな日本の音楽が盛んだったこともあってか、この時代から洋楽ファンが少なくなっていったと言われている。
2000年代
フジロック、サマソニやROCK IN JAPANなど大規模なフェスの展開、第四次バンドブームから青春パンクの大流行などにより、CDなどの音源、TVなどのメディアと並んで生でのライブも注目された年代。
90年代からのバンドに加えBUMP OF CHICKENなどの登場でロックバンドは更に熱が高まり、MONGOL800や175R、ロードオブメジャーなどのいわゆる青春パンク系も音楽シーンを席巻していく。
そしてこの時期に外せないのが、今も活躍し続ける女性シンガー達だ。
aiko、椎名林檎、MISIA、宇多田ヒカル、倉木麻衣など、実力のあるシンガー、シンガーソングライターが勢揃いした。
その一方では、モーニング娘をはじめ、つんくファミリーの作品も次々と大ヒット。
現在のアイドル界を構成する礎を気付いた。
音楽機材にも大きな進歩があり、ライブパフォーマンスにも次々とデジタル機器が導入。
少人数の編成で、デジタル機器を操り豪快な演出をするアーティストも出てきた。
またこの頃になると、インターネットも著しく普及し、音楽の情報を仕入れるメディアも雑誌からインターネットへ移行。
音楽雑誌衰退時期の始まりでもあった。
最後に
その時代やその1曲にはそれぞれリンクした思い出があり、その頃のアーティストや楽曲を思い出すと記憶も鮮明に蘇るものである。
年代ごとに特徴があり流行は変わり、表面だけを見るとそれは時間と共にコロコロと変わってしまうような薄っぺらい印象を受ける。
ただ、どれだけ街で流れている音楽が変わってもテレビやネットで登場するアーティストの顔ぶれが変わっても、音楽に人生を捧げた音楽家達が新しい音楽を創り続け、音楽を愛するファン達が新しい音楽を探し続けている。
この構図が崩れない限り、これからも日本・世界には次々と新しいブームが巻き起こり素晴らしい音楽で溢れていくことだろう。