Shout it Outというバンドが在ったことを忘れないでいて欲しい

Shout it Outというバンドが在ったことを忘れないでいて欲しい

多くの可能性を感じさせ若者を中心に支持を拡大していたShout it Out が、2018年8月に解散することが発表され、その最後の作品となるミニアルバム「また今夜も眠れない僕らは」が7月18日にリリースされた。

ラストアルバム発売後の7月23日からは1st ONEMAN TOUR「嗚呼美しき僕らの日々」と銘打つShout it Outとしてのラストツアー全9公演の開催を予定している。

秘められたポテンシャルを知らしめる間もなく、その短かすぎる活動の幕を下ろすShout it Out。彼らが日本のミュージックシーンに残す作品を紹介しつつ、その魅力をここに記しておきたいと思う。

「青年の主張」Shout it Outの軌跡

真っ直ぐ過ぎるメッセージで多くの支持を集めていたShout it Outは、大阪を中心に2015年頃から頭角を現し、勢いのある若手バンドの登竜門となっているTOKYO FMプログラム「SCHOOL OF LOCK!」が主催する「未確認フェスティバル2015」でグランプリを獲得し一気に知名度を上げた。

その後もヴォーカル・ギターの山内彰馬を中心に、なかなか定まらないメンバーで活動を続けながら2016年にはシングル「青春のすべて」で弱冠19歳にしてメジャーデビューを飾る。

Shout it Out / 青春のすべて

昨年3月にはメジャーファーストアルバム「青年の主張」をリリースし、大人の世界に対する若者らしい赤裸々なメッセージを歌い上げ、同世代の人間のみならず世代を超えて支持を拡げつつある中で、今年6月に突然解散の発表がされた。

そのバンド終了に対する山内彰馬のコメントを読むと「なるほどね。」と納得する部分もあるのだが、正に若者らしいエゴイスティックさに溢れ、Shout it Outの紡ぐ音楽を愛するものとしては「もっといろいろな可能性を聴きたかった。」と残念に思ってしまう。

人の記憶に残るアーティストの活動期間

すでに中高年となっている筆者にとって2015年と言えばついこの間な感じがするが、10代から20代前半の若い人にとっての3年間は、とんでもないエネルギーに満ちているものだ。

ジミ・ヘンドリックスは1966年に24歳でデビューし、1970年の9月には亡くなっている。ジャニス・ジョプリンもほぼ同様、1967年に23歳で表舞台に現れてから70年に亡くなるまでの3年余りで伝説となった。

Janis Joplin / Move Over

セックス・ピストルズはメジャーデビューしてからたったの1年、スタジオ・アルバムは1枚だけしかリリースされていないし、日本でも矢沢永吉率いる”キャロル”は1972年のデビューから3年経たずに解散している。

何が言いたいかというと、人の記憶に残ることはそのアーティストの活動期間には関係がないということだ。多くの人にとって大切と思える楽曲をリリースできたのなら、その活動がいかに短くても、そのアーティストは多くの人にとってかけがえの無いアーティストになりうる。

Shout it Out / 道を行け

Shout it Outもまた、多くの人にとってそんなかけがえの無いアーティストになっていることだろうと思える。そう思わせる歌を届けてくれたアーティストだ。

ブルーハーツにも通じるShout it Outのロック魂

Shout it Outの歌う歌詞は、いい歳をした筆者にとっては実に「青臭い」。その青臭さが逆に新鮮に感じたのだ。ファーストアルバムのタイトルを「青年の主張」としたのは誰なのか分からないが、こんなにストレートに若者らしいメッセージを発するリアルなバンドは今どきでは珍しい。

なんのてらいもなく真っ直ぐ、自身の抱える想いをストレートな音に乗せて届ける、あまりにも明け透けで無骨なその音楽は、紛れもなく「ロック」だ。そう感じた。

Shout it Out / 光の唄

Shout it Outを聴いた時、筆者は「まるでブルーハーツのようだ」と思ったのだ。たいして難しい曲構成ではない、勢いだけの音楽。だからこそ、そこで歌われるメッセージに嘘がなければ、多くの人の心に届く。

THE BLUE HARTSは1987年にデビューし95年には解散しているが、未だに多くの人に語られ、その歌は世代を越えて多くの人に愛されている。特にレコードレーベル「メルダック」に残したデビューアルバムを含む3枚のアルバムに収録された楽曲は、事あるごとにリバイバルされている。

THE BLUE HEARTS 25th Anniversary

Shout it Outの音楽はこれからも輝き続ける

Shout it Outの音楽は、Shout it Outの音楽的主体である山内彰馬が語るとおり、彼の「青春」に寄り添い、その時の想いを体現したものであったのだろう。

彼がこの先も音楽活動を続け、新しい作品を創作していくためには、彼にとっての「青春」に一度終止符を打つことが必要だったのかもしれないが、ロックンローラーとしては物分りが良すぎる気がしなくもない。

Shout it Out / 17歳

それでも、彼が残した「青春」の欠片は珠玉の「ロック」として世に残ることとなった。

その輝きは、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、セックス・ピストルズ、そしてブルーハーツが残した歌のように、いつまでも聴く人の心に残り続けるだろう。

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