今年、結成15周年目とメジャー・デビュー10周年目を迎えるTHE BAWDIESが、自身初となるベスト・アルバム『THIS IS THE BEST』を4月18日にリリースした。
このベストアルバムのリリースと共に日本中で彼らのアニバーサリーを楽しむべく、ツアーファイナルとなる日本武道館公演に向け、5年ぶりとなる全国47都道府県ツアーをスタートさせる。
関連リンク→ 「アニバーサリー・イヤー特設サイト」
ひとつ節目を迎えたTHE BAWDIESが15年に渡り日本のミュージックシーンに示し続けた「リアル・ロックンロール」の存在意義と、これからも変わらないであろう彼らの音楽を改めてひも解いてみたい。
国籍や人種を越えて真っ黒いTHE BAWDIES
THE BAWDIESがメジャー・デビュー10周年と聞いて驚いた。あの衝撃が10年前かぁ・・・
昨年末の「絶対に笑ってはいけない」で浜田雅功が顔を黒く塗って大騒ぎになったが、THE BAWDIESはデビューした時から「真っ黒」だった。顔こそ塗ってはいないが、その音を聴く限りまるっきり日本人的な要素は無く、彼らが生粋の日本人だと聞いて驚いたものだ。
THE BAWDIES / FEELIN’ FREE
特にフロントを務めるROYの声と英語の節回しは”本場”アメリカのR&Bアーティストのスタイルを完全再現しており、全編英語詞によるその音楽は先日ご紹介したHER NAME IN BLOOD同様、邦楽・洋楽の壁を無効にしてしまう。
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彼らの音楽スタイルは、彼らの原点でもあるThe Sonicsを中心とした60年代ロックバンドのサウンドを踏襲した、言わば「リバイバルミュージック」であるのだが、全てのロックが「舶来品」である日本において、彼らの音楽は厳密言えばリバイバルにはならない。
THE BAWDIES / EMOTION POTION
R&Bに根差したロックの誕生と国内ロックの違い
60年代初頭、日本でビートルズ旋風を受けグループ・サウンズが流行る前、世界ではブルース、R&Bといったブラックミュージックを白人の若者たちが模倣しながら、現代に続く「ロック」が形作られていった時期である。
ビートルズもストーンズも世に出たての頃は、アメリカのブルース・R&Bをカバーするイギリスの若者バンドでしかなく、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れ、独自のロックを作り上げるのに数年かかっている。
そんな時代に活躍していたThe Sonicsも、白人バンドでありながらR&Bの影響を色濃く映しており、ビートルズやストーンズと同じ様にチャック・ベリーやリトル・リチャード、レイ・チャールズなどロック黎明期を彩ったR&Bアーティストのカバーを残している。
The Sonics / Psycho
元々ブラックミュージックが根付いていなかった日本では、R&Bからロックが生まれる訳も無く、ブラックミュージックのフィーリングは70年代になる少し前にビートルズ旋風と共に、白人バンドのフィルターを通した”カフェオレ”のように薄まった形で「輸入」され、更に日本語の歌謡曲とミクスチャされることで、霧散してしまった。
故に、その当時ブラックミュージックを直輸入しお茶の間に運んだ和田アキ子は未だに「ゴッド」と称されている。
和田アキ子 / Unchain My Heart(レイ・チャールズのカバー)
そして21世紀になり、ついにロックのルーツミュージックであるR&Bを伝える国産のバンドTHE BAWDIESが登場したのである。
世界で支持される「ルーツ・オブ・ロック」なサウンド
音楽のベーシックな部分を輸入に頼っている国内ミュージックシーンでは、なかなかルーツミュージックと呼べるバンドが大きな支持を得る事が少ないが、世界では”先祖返り”とも言える60年代のR&Bを感じさせるバンドが大きな支持を受けている。
例えば90年代に活動していたThe Black Crowesなどは世代を越えて広く支持されていたし、THE BAWDIES がデビューした後の2010年に鮮烈なデビューを飾ったVintage Troubleなど、R&Bに根差したルーツ・オブ・ロックな音楽は、今でも多くの人から求められているのである。
Black Crowes / Jealous Again
Vintage Trouble / Blues Hand Me Down
そんなアメリカを中心とした、世界的な「ロック」の原点を感じさせるTHE BAWDIES が活動10年を数え、未だデビュー当時と変わらぬルーツ・オブ・ロックなサウンドを聴かせ続けてくれている事は、そのまま国内のミュージックシーンにブラックミュージックの素養が根付いた事を示してくれている様にも思う。
THE BAWDIES「THIS IS THE BEST」ALL TRACKS
THE BAWDIES がこれからも、ブラックミュージックの息吹を感じさせる黒々としたロックを響かせ、日本人にR&Bのグルーブを根付かせてくれる事を期待している。