筋肉少女帯新MV「エニグマ」公開!筋少の「プログレ」的楽曲を紐解く

2017年10月25日発売の、筋肉少女帯のアルバム『Future!』からMV「エニグマ」が届いた。

筋肉少女帯といえば、メタルテイストのロックバンドとして80年代にデビューして以来、文学的な歌詞と超絶テクニックの楽曲で「サブカル気取りたい層」を狙い撃ちにしてきた筆者も大好きなバンドである。
「日本印度化計画」「元祖高木ブー伝説」「ボヨヨンロック」などのコミカルな面を強調したヒットソングが多いため、バンドブームの時代には「筋少と聖飢魔IIとすかんちを追っかけているのはバンギャじゃない」なんて差別まで生まれるほどであった。

筋肉少女帯新MV「エニグマ」公開!筋少の「プログレ」的楽曲を紐解く

2006年に再結成してから精力的に活動を続け、特にボーカル・大槻ケンヂの活躍は目覚しいものがある。
アニメ業界からのタイアップ希望も多く、ソロプロジェクトでは「絶望先生」シリーズ、「監獄学園」などに楽曲提供し、筋肉少女帯としては「うしおととら」などとタイアップしている。
そんな大槻の大好きだというジャンル「プログレ」の新曲が、MVとして先行公開されたとあったら、それは確認しないわけにはいかないだろう!

「エニグマ」をまずは聴いてくれ!!30年選手の作り出すプログレッシブ・ロック

さて、早速だがMVを一度視聴していただきたい。

エニグマ

わっはっは。低予算な上にバカテク。
歌詞は意味がわからないし今回は三柴理まで参加してるじゃないか。
これは昔からのファンには嬉しい作りである。
ちなみにこの鍵盤を弾いているバカウマピアニスト・三柴理は、元筋少のメンバー。
MVに参加するのはなんと29年ぶりとのことで、訳わからんぐらい綺麗に奏でられる指先は何度か映像でフィーチャーされているので必見。
歌うベーシスト・内田雄一郎の重低音ベースも力強くメロディアス。
橘高文彦・本城聡章両ギタリストの「泣き」と「早弾き」を組み合わせたギターの響きにはゾクゾクと背筋が泡立つ。

30年選手にもなると「プログレ作ってアルバムに入れようぜ」でこうなってしまうのかと微笑ましい。
筋少を知らない方でも、50〜40代後半の方は「プログレ〜!!世代直撃!!」って感じだろうし、若者には新しい音楽ジャンルとして受けるのではないだろうか。
受けると言ってくれ、じゃないとこの時代にわざわざ「すでに廃れたジャンル」であるプログレッシブ・ロックを前面に押し出す理由がなくなってしまう!

そもそもプログレッシブ・ロックとはどういったジャンル?

さて散々「プログレ」「プログレッシブ・ロック」を連呼してきたが、果たしてこれがどんなジャンルの音楽なのかを説明できる人間は現在少ない。
「プログレ」とは、1960年代後半のイギリスのロックシーンに登場し、その後瞬く間に世界中でブームとなり、10年後の70年代後半には衰退してしまった「一過衰勢」のロック・ミュージックだ。
「アート・ロック」や「ニュー・ロック」、「シンフォニック・ロック」などと呼ばれることもある。
シングル思考で「この一曲だけをヒットさせたい」という考えではなく、アルバム単位で曲作りをすることが特徴である。
鍵盤や弦楽器を取り入れているのも要素のひとつで、今回の筋肉少女帯の「エニグマ」はこれに則った作りである。
代表的なバンドは「ピンク・フロイド」、「キング・クリムゾン」、「イエス」、「エマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)」などで、「ドリーム・シアター」などは同じ「プログレ」でも「プログレッシブ・メタル」に当たる。

日本では「プログレッシブ・ロック」と「プログレッシブ・メタル」はほぼ同等に扱われているので、まとめて「プログレ」でも構わないだろう。
「プログレ」を聴き分ける際に判断材料となるのが、

唐突な転調
長いギターもしくはピアノ(シンセサイザー含む)ソロ
Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロの繰り返しなどの単調な作りではない
演奏時間が長い

というものが挙げられる。
ロック自体の定義が非常に曖昧なので「これがプログレだ!!」と言われたら大体全部プロブレ及びロックになってしまうのだが、大体以上の4つを判断基準にすると良いだろう。

それを含めて考えた結果、「エニグマ」は2017年までの筋肉少女帯楽曲で史上最高の「プログレ」なのである。

まだまだあるぞ!筋少の「プログレ」的楽曲

さて、筋肉少女帯は一応「ロックバンド」なのであるが、アルバムの曲選びや作曲会議は、長く続いているバンドなだけに一時期は迷走していた。
「ハワイアンとかどう?」なんて生まれた曲もあり、「ポルカはどうだ!」なんて言い出すこともあり。
そんな筋少の生み出した過去の「これプログレだよね」楽曲をご紹介。

夜歩くプラネタリウム人間

歌詞は大槻、作曲は内田。
大槻の歌声とゲスボーカルの女声ボーカルが交互に聴こえてくるデュエット曲で、歌詞の世界観と、なかなかにキャッチーなサビが魅力。
野太いメンバーのパワーコーラスも聴けるが、これが筋少の世界をしっかりと補強している。
初期の楽曲の中でも名曲と名高く、プログレ的要素は転調と前奏、ソロの長さなどに見られる。
また、ドラムも裏打ちのなかなか難しいリズムを刻んでおり、この頃から筋少がバカテクバンドだったことがうかがえる。

月とテブクロ


ちょっとこの演奏時間を見てくれ、こいつをどう思う?
すごく…長いです…(7分25秒)。
というやりとりが脳裏に出るほど長い演奏時間。これだけでプログレの要素を満たしてると言っても過言ではない。
静かに始まる楽曲だが、実際は激しい感情を込めた歌詞の内容であり、この世界観を出せるのは大槻のボーカル以外にありえない。
この楽曲は演奏も歌唱もレベルが高く、名曲としてファンの間でも名高い。

特にライブで演奏する際には、大槻が白い手袋をはめて歌い上げるため、一種独特の静寂が訪れる。
はっきりとした起伏のない楽曲を長時間聴かせるのは難しいのだが、4分半ごろに転調するまで、しっかりと苦痛でなく聴かせられるのは、バンドのレベルが非常に高いためだろう。

この他にも「ペテン師、新月の夜に死す!」や、復活後の2枚目のアルバムに入っている「ゴッドアングルPart2」など、プログレ色の濃い楽曲は多数ある。

筋少の作る「プログレ」にしかない魅力とは

ただのプログレじゃない、筋肉少女帯のプログレにしかない魅力とはなんなのか。
それはやはり、ほぼ全ての歌詞を手がける大槻ケンヂの「世界」だろう。

大槻は自分を育ててきた映画・小説・音楽・漫画などのサブカルチャーもしくはカウンター・カルチャーと呼ばれるものをモチーフに、数多くのアルバムを作り上げてきた。
その危ういまでの文学性、特異さが、このバンドの重要なポイントになっていることは間違いない。
ただのプログレよりも、「深読み」が好きな日本人により合わせた音楽を作り出せるというのが筋肉少女帯の強みだ。
物語性のあるロックを作り出せる、というのは今のシーンでは貴重である。

今回公開された「エニグマ」は、単体では歌詞の意味をなさない。
ということは、本来のプログレらしく、「アルバム単位」で思考した結果の歌詞であると思われる。
こうなってくると他の楽曲も聴きたくなるのが人間のサガ。
過去筋少がプログレ色の強い楽曲を入れていたアルバムは全てコンセプト・アルバムと言ってもいい、共通の世界観がある一枚であった。
「音楽の物語」と言っても過言ではないプログレッシブ・ロックと、大槻の作り出す歌詞は親和性が高く、ストーリーとして楽しめるのが筋少のプログレの良さなのだ。

文:阿部春泥

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