男性バンド「back number」が流行ってテレビに引っ張りだこになっていたころ、正直何がいいの?と思ってました。すみません。
しかし聴いてみればこれがまた不思議にも、ちょっとした気持ち悪さを感じさせる歌詞と歌い方が、ずんと心に響くような感覚に見舞われた。
女々しいとは違い、女心を描いているわけでもない、back numberでしか表現できない謎の領域が、どの歌にも現れている。
今回はその中でも、特にback numberの気持ち悪さが出ている曲をいくつか紹介したい。
一応ことわっておくが、この記事で使われている「気持ち悪い」は基本的にすべて褒め言葉である。
私はもはやback numberのファンであるため、あえてこのような言い方をすることに理解を得られたらと思う。
高嶺の花子さん
ファン的には鉄板、しかしファンでない人からするとどんな楽曲なのか想像しがたいという「高嶺の花子さん」は、本当にback numberの良さが出ている。
「黒魔術」とか「アブラカタブラ」とか、とにかく耳に違和感の残る言葉が多い。
そういった特異な言葉がしっかりと楽曲のストーリーを進行していくのだから、聴いていて面白くないわけがないだろう。
いわゆる自分には不釣り合いな女性の比喩である「高嶺の花」を名前にしてしまうところも、思い切った気持ち悪さが出ていてとてもステキだ。
叶わぬ恋といった感覚をアプローチを変えるだけでこんなに魅力的にできることを教えてくれたback numberは、現代の音楽シーンに欠かせないバンドであるといえるだろう。
恋
とても一般的な恋模様を描いているようで、何かを感じさせる楽曲だ。
いわゆる「妄想ソング」といった分類になるかと思われるが、その妄想のレベルが非常にシンプルで、それゆえに誰にでも共感してもらえる歌となっている。
「誰にでも共感してもらえる妄想ソング」が描けるというのは、これはもう恐ろしいことだ。
筆者は男性であるため、この歌で歌われている主人公の妄想の告白には、少なからず身に覚えがある。
思わず身をよじらせてしまうのも、この曲ならではのリアルさのせいだろう。
曲の冒頭でこの歌の舞台が「学校」であることは明示されているため、そこでぎりぎりのラインを保っているのもこの曲の面白さだ。
行き過ぎる気持ち悪さは、ときとして不快感を与えてしまう。
しかし中学生や高校生の視点でこの歌が歌われているんだという前提条件があることで、1つ安心して私たちはこの楽曲に聴き浸ることができる。
そういった決して一線を越えないバランスの良さも、back numberの魅力であるといえるだろう。
僕の名前を
男性の視点でこういった立場になるのは、とても難しい。
しかしback numberはいとも簡単に、歌の中でやってのけてしまう。
いわゆる女性に甘えるような歌であるが、最終的にはもっと大きなものに内包されるような、安らぎを与えてくれる曲となっている。
すごく肉感的な歌詞も特徴的で、歌の中に「手」と「頭」がくりかえし登場することが、聴いているリスナーの脳裏にそれぞれの「手」と「頭」をイメージさせる。
そのイメージは自然と自分の安心のルーツにつながっていくので、聴いていると不可思議な浮遊感を感じさせるのだろう。
弱さをひけらかす男性の歌はもはや珍しくないが、この歌はそのさらに一歩先、「弱さを出すことで得られる安心感」まで表現している。
それはback numberが培ってきた、一種の気持ち悪さがあってこその技だといえるだろう。
まとめ
さて、ここまで何度「気持ち悪い」といっただろう。
しかしそれがback numberを聴いた率直な感想であり、いまだに変わることがない。
この気持ち悪さを求めて、これからも私は彼らの新曲を聴き続けることだろう。
最後に、もしback numberファンを怒らせたことになったのなら、本当に申し訳ない。
だが私の中では、これが最高レベルの褒め言葉であることを、どうかわかっていただきたいのだ。