先日単行本題一巻が発売された石川香織の「ロッキンユー!!!」はご存知だろうか。
高校に入学してなにかわくわくしたことを始めたいと希望に満ち溢れていた少年が、部活動紹介で初めて聴いたNUMBER GIRLの「透明少女」にガッツリやられてしまい、ロック研究会に入部するストーリーである。
ここまでの話が「ロッキンオン!!!」として掲載されるやいなやTwitterを中心にバズりまくり、タイトルを新たに好評連載中なのである。
出てくる音楽はどれも「一般受けしない」ものばかり。
でも、それがいい。
とてつもなくいいのだ。
主人公と同じ衝撃を味わえ!「透明少女」
NUMBER GIRL
1999年にリリースされたナンバガの「透明少女」。
エモい、という言葉は近年定着したが、それを使用するのにぴったりの楽曲だ。
PVでも手描きのアニメーションとメンバーの叫びが交互に現れ、それが決して巧緻ではない。
そこに切なさに近い感情を呼び起こされる。
ロック研の不二美と出会った主人公が、まず最初にインパクトを受けた曲である。
ボソボソとしていながら、絞って歌っているかのようなボーカルに、がしゃがしゃとノイズが入っているかのような音楽。
それでも誰かに「感動」を与えることができる、ロックの原点といってもいい楽曲だ。
ロックをする喜びを!「ワールドエンド・ダンスホール」
wowaka
主人公はロック研に入り、ボーカルを担当することになる。
部員がいない状況では「研究会」としても認められていないという現状を知ったからだ。
そこで選ばれたのがボーカロイド楽曲のこの曲である。
ネット上で爆発的にヒットし、「VOCALOID伝説入り」のタグがついている(つまり百万再生以上である)。
トリガーになるならヒットしたものでいい。
楽しさを伝えるのは演り手の力量だ。
主人公は不二美のギターでボーカルをとる。
カリガリ、ゆら帝、プラスティックトゥリー…一味違うバンドたち
それで引っかかってきてくれた「ザ・V系」という見た目の新人はとても丁寧な人間で、「カリガリが一番好きだ」という。
cali≠gari/青春狂騒曲
この楽曲は出会いの章のタイトルとしても使用されている。
不二美と新入生の会話は続き、ゆらゆら帝国やPlastic Treeなども登場。
シューゲイザーちっくな曲がお気に入りということなのか。
ゆらゆら帝国/ゆらゆら帝国で考え中
plastic Tree/春咲きセンチメンタル
今ネット上では8話が公開されたばかりだが、新入りのドラムが「ベースに心当たりがある」と紹介したキャラクタは自分の好みを押し殺し、誰もが知っている曲をカラオケで歌うようなパリピを演じている。
彼のiPodには「電気グルーヴ」や「P-MODEL」などの文字が並んでいるのに。
果たして彼らは無事に音合わせができるのだろうか。
できたとしたら、とんでもないバンドに成長するのではないだろうか。
「ロックなんかやってる奴キモいに決まってるだろ」
ロック=キモい。残念ながらこういった偏見はいまだにある。
アジカンやバンプ、ポルノがかなり地位を向上させてくれたものの、まだ「アングラ系」のロックには日の目を見れていない。
この作品が進むにつれて、見落としてきた沢山のロックバンドに出会うことになるだろう。
それは楽しみであり、教養を増やすことであり、青春を疑似体験することだ。
「ロッキンユー!!!」を読んで、「自分はキモい」と認識しながらも、それを武器だと尖らせていこう。
だって、そしたらいつか自分だって、ロックのように誰かに突き刺さるものが表現できるかもしれないではないか。
連載は好評のようなので、贔屓のバンドが登場するのをわくわくしながら待つこともできるぞ!
文=阿部春泥