夏ということで怪談を聞く機会は増え、ホラー映画やホラーゲームの雰囲気もますます味わいやすくなっている。
私もホラー好きとしてそこそこ生きてきたけれど、いまだにホラー要素のある映画やゲームの主題歌の正解がわからないままだ。
どろどろとしたテーマでも重すぎる、しかしだからといってあっけらかんとしすぎても対応に困ってしまう。
そこで今回は改めて、ホラー作品の主題歌にどのような曲が使われているのかをチェックしてみたい。
人によって当然しっくりくる曲は変わってくるだろうが、今一度主題歌にスポットを当てることで、新しい何かが見つかることに期待してみたいと思う。
いくつかの空/着信アリ
柴咲コウ主演のホラー映画主題歌「いくつかの空」は、個人的にホラー映画の曲を聞かれたら最初に思いつく楽曲だ。
メロディとしてはかなりさわやかな部類なのだが、映画を見てから歌詞を読むと、それなりにホラーっぽい要素を見出すことができる。
そのミスマッチさと柴咲コウのハスキーボイスが合わさって、なんとなくホラーらしさを展開できているように思われる。
「さよなら」や「あいたい」といった一般的なワードが、ホラー映画の後に流れることで一気に意味が変わってくるのも面白い。
これは着信アリを見たかどうかで、大きく評価が変わる曲なのではないだろうか。
祈りが言葉に変わる頃/呪怨 終わりの始まり
呪怨プラス鬼束ちひろという、ある意味で鉄板にも思える組み合わせ。
曲はもうホラー映画の主題歌にしか使えないのでは?と思えるようなものとなっていて、とにかくおどろおどろしい。
なんとなくグロささえ感じられるメロディと歌詞、そして鬼束ちひろの歌い方、ちょっとやりすぎなくらいに感じる。
全曲シャッフルでこの曲が流れてきたときの「うわぁ」という感覚は、なかなか味わえるものではないだろう。
しかしそれゆえに、ホラー映画の主題歌としてはかなりしっくりとくる楽曲だともいえる。
正直映画はそんなに怖くなかったけれど、この楽曲のせいで怖さは少なからず増幅させられたのではないだろうか。
You’re Not Here/サイレントヒル3
精神をえぐるようなホラーゲームの金字塔であり、個人的にシリーズ最高傑作だと思っているサイレントヒル3の主題歌「You’re Not Here」もまた、ホラーらしくないのにホラーっぽく感じさせてくれる曲だ。
ギターのリフがとにかく全面に出ているため、ちょっと聴いただけではロックな印象を持つが、所々に刷り込まれている不協和音がふっとホラーの要素をにおわせる。
聴いているうちにゲーム中に登場したサイレントヒルらしい薄汚さが思い出される感覚は、プレイしたユーザーにならわかってもらえるだろうか。
これを聴いていると、攻撃的なロックとホラーはやっぱり相性が良いのではと思わされる。
恐怖に対して抵抗するようなイメージこそ、ホラーに必要な主題歌なのかもしれない。
ゼロの調律/零~月蝕の仮面~
ホラーには、恐怖以外の様々な要素がミックスされることも多い。
そのなかでも一種の感動を与えるような作品が目立つのは、「ホラーと感動」という一見不釣り合いな2つが合わさると、意外なほどの魅力を引き出すからだろう。
この天野月子(現在は天野月)が歌う「ゼロの調律」も、ホラーゲームが終わった後に感動を与えてくれる名曲だ。
零シリーズでお馴染みの天野月子だが、4作目となる「零~月蝕の仮面~」に至るまでは、どちらかといえば重たい楽曲が採用されていた。
それはそれでもちろん魅力的なのだが、このゼロの調律が出たおかげで、そこに足りないものがはっきりとしたような気がする。
パワフルな歌声と畳みかけるようなメロディは一見ホラーには似合わないが、ゲームの最後を考慮すると、もうこれ以外は考えられないほどぴったりだ。
その作品の内容をしっかりと意識して作られた楽曲が、結局ホラーにおいても求められる曲になるのかもしれない。
まとめ
ホラーには音楽が欠かせない。それは恐怖心をあおり、安心感を与え、ときには感動させさえもする。
しかしさまざまなホラー主題歌が世に出ながら、いまだに定番の雰囲気やメロディが存在しないのは面白い。
今後もまだまだ、ホラーにぴったりの主題歌を探すことは続けていこうと思う。