11月8日にポルカドットスティングレイが、1stとなるフルアルバム『全知全能』をリリースする。
このポルカドットスティングレイ、昨年暮れごろからYoutubeで何度かPVを見ていたが、それなりにしっかりプロモーションされているので、まだアルバムも出していない新人バンドだとは思わなかった。
そこで、改めてポルカドットスティングレイの活動を調べてみると、音楽プロモーションの問題点が見えてきたので綴っておこうと思う。
ちょっとネガティブな内容になりそうなので始めにしっかり伝えておくが、ポルカドットスティングレイは決して悪いバンドでは無い。フロントを務める紅一点「雫」を中心とした4人組のこのバンドは、小気味良いロックを聴かせる良バンドだ。
だからこそ、ポルカドットスティングレイに対するプロモーションのやり方が余計に気にかかってしまう。
ポルカドットスティングレイのプロモに感じる違和感
ポルカドットスティングレイのキャッチコピーは『福岡県福岡市を拠点に、何かを企む超常ハイカラギターロックバンド』だそうだ。
2015年から活動開始して、まだ小さめステージに上がれるようになったくらいのバンドなのに、大仰なキャッチコピーを付けて上滑りしている。
「エンタの神様」でしか見たことが無い”エンタ芸人”のキャッチコピーと同じ類のものだ。
こういうキャッチコピーを実績より先んじて付けてしまう、この感覚の「ズレ」が、ポルカドットスティングレイのプロモーション全体にわたって見受けられる。
もし正しくキャッチを付けるなら「福岡発の遅れてきたポスト椎名林檎」といった辺りがしっくりくるのではなかろうか。
本当に一時期、YouTube上でポルカドットスティングレイの視聴をそそられる出来すぎた動画サムネを良く見かけた。
ある動画視聴やお気に入りクリックをトリガーとしてPVサムネを表示させる広告手法、リマーケティングと呼ばれるWEBマーケティング広告が広範囲に敷かれているとそういう状況になる。
広告であるから、当然そこには広告費が発生する。ポルカドットスティングレイのYoutubeプロモーションは1クール(3ヶ月)~2クールくらいは続いていたので、PV制作費と広告費を含めそれなりの費用がかけられているのが分かる。
デビューして3年程度、シングルが数曲だけで、いまだヒット曲も無く動員も伴わないバンドにしては大きな費用だ。
「期待の大型新人バンド」ということなのだろうが、つまりは誰かが「ゴリ推し」しているのである。
前時代のプロモスタイルが招く功罪
誰が裏で仕掛けているのか知らないが、こういった広告による大量露出で認知拡大させ、一気にスターダムへ押し上げる手法というのは完全にひと昔前、90年代までの手法であり、今のミュージックシーンでは通用しない。
本気でやるならレコ大の新人賞をキャッシュで買うくらいの資金力とコネクション力がなければ、かけたプロモーション費用を「回収」することもできないだろう。
YouTubeに上がっているPVの手練れたサムネや、出来すぎたWikipediaの内容など、プロモーターの意図が”見え見え”で、ポルカドットスティングレイをどういうイメージで売りたいと思っているか、プロモーション戦略が丸分かりだ。
Wikipediaを見るとアーティスティックな部分はフロントの雫に全振りし、人の良さそうなバンドメンバーは実績もないまま揃って楽器メーカーとエンドース契約をしている。才能あふれる雫はPVの監督も務めたそうだ。
これがそのPVである。
このPVを監督したというのは、大いに眉唾だ。プロットや演出についてアイデアを出すくらいはしただろうが、ありがちなカット割りやカメラセッティング、ライティング、構成、衣装、ロケーション、それらを行うスタッフ手配など本来「監督」と呼ばれるべき人のサポートが無ければ、こんなPVを数十本も作ってきたかのような、こなれたクオリティのPVは出来あがらない。
本当に「監督」をしているなら、メイキングドキュメンタリーも一緒に露出させないと今どきは通用しない。
いや、これはヒドイ。自身のPVを監督するほどのこだわりを持ったアーチストが発信する映像ではないだろう。こういう、一見して見透かされるプロモーションを知名度も無いまま行うと、胡散臭さだけが際立つマイナスプロモーションとなってしまう。
ポルカドットスティングレイの音楽性はホンモノか?
こうなると、プロモーターにいいように踊らされているように見えてしまい、ポルカドットスティングレイの音楽性についても疑わしさを覚える。
いままでリリースされた楽曲のどこまでが「本当のポルカドットスティングレイ」なのだろうか。あの否が応でも椎名林檎を彷彿とさせる雫の歌唱スタイルは、はたして本人発信なのだろうか?
お金があれば自由に創作活動が出来る、というのは間違いだ。大きな先行投資をしてしまえば、それだけ様々な人の思惑と関わることとなり、投資を回収するために自由な創作活動が出来なくなる。そんな悲劇は枚挙に暇がない。
一流企業を巻き込みアルバム発売前に仕掛けたこのプロモーションは、希代の才女が率いる新進気鋭の大型バンド(という体で売っていきたい)ポルカドットスティングレイにふさわしい物だろうか? 女性ボーカルなら家入レオ、大原櫻子、藤原さくら辺りのほうが企業規模や企業イメージともマッチしている気がする。
そういう違和感のあるプロモーションを金とコネを使っていくら重ねても、仕掛ける側が疲弊するだけで期待した効果は得られないだろう。
雫の才能を、ポルカドットスティングレイの持っているアーティスト性を、手垢のついたプロモーションでもてあそんで潰さないで欲しいと願う。彼らの1stアルバムには、プロモーションに歪められていない彼らの可能性が納められていることを期待したい。
そして、色メガネ無しでその真価を確認したいと思う。