「ましのみ」1stシングルに見る恐るべきセルフプロモーション力

「ましのみ」1stシングルに見る恐るべきセルフプロモーション力

今年2月にアルバム『‎ぺっとぼとリテラシー』でメジャーデビューした”ましのみ”のメジャーファーストシングルとなる「どうせ夏ならバテてみない?」が8月1日にリリースされる。

同シングルには表題曲のほか「海水掛け合いっこ」「コレクション of コネクション」の2曲を収録。夏をテーマにした”ましのみワールド”を味わうことができる。

このシングルのリリースを記念して9月8日には代官山UNITにてワンマンライブを予定しているので、機会があれば今後ブレイク必至なこの新しい才能をその目で確認してほしい。

メジャーデビュー後、じわじわと認知を拡げている“ましのみ”。大学在籍のまま着実に実績を重ねているこの若き天才コンポーザーの活動を通して、今時のアーティストに求められるセルフプロデュース力について考えてみたい。

ましのみのイマドキなデビュー

現在「現役女子大生」という、アーティスト性を表すのに全く関係のないエロいグラビアアイドル的なレッテルを貼られて紹介される“ましのみ”が自作曲を本格的に作り始めたのは高校3年生の時からだという。

ましのみ / どうせ夏ならバテてみない?

大学受験後から本格的に活動を開始し、作曲を始めてから2年も経たないうちに、“さユり”や“吉澤嘉代子”もグランプリを獲得しているヤマハ主催のコンテスト「Music Revolution」の第10回(2016年)において約3,000組の応募者の中からグランプリを獲得している。

ましのみ / Q.E.D.(10MR 東日本FINAL STAGE)

言ってしまえば「天才」と呼ばれる類の人間なのだが、現在21歳の“ましのみ”は音楽的な才能のみならず、いまどきのタレントに求められる「セルフプロデュース力」においても、その才能を十分に発揮している。

アーティストに求められるセルフプロデュース力

現在“ましのみ“はTwitterを中心としたSNSやWEBメディアを活用し積極的に情報発信している。

ましのみ / ましらっぷ〜これからのましのみおたのしみVer〜

いまどきのタレントであればSNSでの情報発信は、キャリアの有無に関わらずほとんど「必須」と言っても良いほどだが、誰もがSNSを使った情報発信を有効活用できる訳ではない。

その証拠に、数々の有名著名人によるSNSでの失言、炎上、謝罪は後を絶たない。

これは「インターネットが悪い」と簡単に片付けられる問題ではなく、その特性を活かすにはインターネット上でのコミュニケーションを理解し、その上でいかに自分を効果的に見せていけるか?というセルフプロデュース力が求められているのである。

ましのみ / プチョヘンザしちゃだめ

インターネットによる双方向コミュニケーションを理解しない多くの人がやりがちなのが、受け手の状況やタイミングを意識しない一方的な情報の発信である。Twitterにしろブログ記事にしろ、思った事を思った時に発信し、より大きな反応を求めてどんどん表現がエスカレートしていく。

ましのみのTwitterを見てみると、定期的に自身のビジュアルを織り交ぜ淡々と自分自身で情報発信を重ねている。余計なことは発信しない。といっても事務的な発信だけではなく、見る人を意識した双方向性のある”つぶやき”をジャストなタイミングで発信し続けている。

こういう外部との”双方向のやり取り”というのは、簡単そうに見えて意外とできない人が多い。

ましのみの1stシングルリリースに見る賢さ

そういうプロデュース力、セルフプロモーション能力はSNSでの情報発信に限った話ではない。例えば、今回のファーストシングル「どうせ夏ならバテてみない?」は”夏”をテーマにしたシングルであるが、曲作りから実際のリリースまで、レコーディングやジャケットの企画、撮影まで含めると数ヶ月はかかるものだ。

あのaikoの名曲「カブトムシ」は1999年の11月17日にリリースされている。夏に作られた曲であれば、リリースは秋口を越えて初冬にかかるくらいになるのが通常である。

つまり夏の歌を8月にリリースするなら、春にはもう「夏」のことを考えて動き出していなければならない。このような思考はプロモーションに関わる広告業界の人間であれば当たり前の感覚だが、デビューしたての女子大生シンガーソングライターが、メジャーシングルの一発目でそれをやっているのである。

ましのみ / ナンセンスに逆戻り

デビューして「これから」というアーティストなんだから、リリースするシングルは等身大の恋愛ソングだってガンバレワタシな応援歌だって良かったのに、夏にリリースすることを見据えて曲を作り、8月1日ジャストのタイミングで夏の歌をリリースする。

これはプロモーション的に相当「アタマが良い」と思える。

勘違いしない才女の底力

ましのみの賢さは、そのパブリックイメージにも見て取れる。

夏に向けたシングルであるのだから、見た目もかわいい“ましのみ”であれば、ドーンと大胆に水着姿を披露しても良さそうなものだが、ジャケットイメージは何故かパジャマ姿でプールに浸かるびしょ濡れの“ましのみ”である。いや、これは相当に“あざとい”。

夏になれば有象無象の3流アイドルたちが、こぞって肌を露出する季節である。ましのみは“かわいい”が“そそる”感じではない。そのルックスは整っていながらどこか“抜け感”があり、本人の抜け目ない「才能」を良くも悪くも感じさせないものである。

ましのみ / エゴサーチで幸あれエブリデイ

それは本人もよく分かっているのだろう。だから水着など性的なアプローチをしない。いや、それが必要であればするのだろうが、自身のプロモーションにプラスにならないからやらない。

かといって流行りの「なんちゃってメンヘラ」を気取ったりサブカル女子的な偏屈さで「私はシンガーソングライターだからピアノをジャケットに入れてください。」などという勘違いした発言もしないだろう。

「ずぶ濡れのパジャマ姿でいる自分」の魅力を解っている。こういう女は本当に“賢い”と思える。そんな賢さは、彼女の作る楽曲にも遺憾なく発揮されている。

様々な音楽ジャンルを取り入れつつ、一聴するとごった煮感を感じさせつつも十分に音楽的フックを盛り込み、独自のポップセンスあふれる世界観を作り上げる“ましのみ”の作品は、今後様々なメディアで耳にすることも多くなるはずだ。

ましのみ / ハッピーエンドが見えません

その特異な音楽性は、本人の歌唱ではなく他人に提供されたものであっても”ましのみワールド”を感じさせるほど特徴的なので、前山田健一のようにコンポーザーとしてアイドルや他のアーティストへの楽曲提供も増えていくだろう。

デビュー間も無く、まだ自分自身で試行錯誤している「天才」ましのみを、今からチェックしておくことを多くの音楽ファンにお勧めしたい。

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