楽曲のみならず映像やイラストレーションなどのヴィジュアルまでセルフプロデュースするマルチクリエーターグループLUV K RAFT(ラヴクラフト)が8月1日にリリースする自身2作目となるミニアルバム「Luv it」でいよいよメジャーデビューする。
10月には下北沢SHELTERでのワンマンライブを予定しているので、興味がある人はダンサブルでPOPなLUV K RAFTの世界に触れてみてもらいたい。
とか言いつつ、今回の記事ではその「名前」についてちょっとひとこと言いたいことがあるので、音楽性についてあまり触れないのはご容赦いただきたい。
いまどき流行りなアーティストの「DQNネーム」化
いや、本当はこんなこと言いたくないのだ。
一時期流行った”DQNネーム”通称キラキラネームも、基本的に人の名前など識別子に過ぎないのだからなんだっていいだろうと個人的には思っている。
LUV K RAFT / THE CITY ON BLACK
アーティストの名前だってファンがそのアーティストを認識できれば良いのだから、まぁなんだっていいとは思うのだが、この7月はなんというか「DQNアーティストネーム」のリリースが立て続いた。
7月4日の”神聖かまってちゃん”から始まり、18日の”リリィ、さよなら。”25日の“にゃんぞぬデシ”” おいしくるメロンパン”とスペースシャワーTVでMVが流れていても曲名とアーティスト名の区別が付きづらい感じのグループが目白押しだった。
リリィ、さよなら。(←アーティスト名)/ やさしい恋の始めかた(←楽曲タイトル)
この手のDQNアーティスト名をつけるのは大抵“サブカル受け”しそうな音楽性を持っているアーティストであるところはなんとも”流行りモノ”的な感じがするが、彼らが将来的にブレイクしたとしても恥ずかしがらずにその名を掲げていってもらいたいと思う。
サブカル好きな人にとっても、DQNなアーティスト名であればとりあえずチェックしておこうという気にもなるので、プロモーション的にもDQNアーティストネームは有効に機能しているのかもしれない。
LUV K RAFTの名前が許されない訳
そういったDQNアーティストネームに比べれば“LUV K RAFT”は一聴すれば随分とマシだと思う。
日本語読みではラヴ+クラフトとなり「愛の手工芸」となんとも座りの良い意味合いを帯びる名前ではある。日本的な語呂合わせで、たまたまその名前を選んだのであればまだ許せるところはあった・・・彼らがH.P.ラヴクラフトの名前からそのアーティスト名を付けたのでなければ。
LUV K RAFT / イミテーションゴールド
以前、このサイトで江戸川乱歩がアーティストに与えた影響についてのコラムがあったが、H.P.ラヴクラフトもまた、世界的に多くのアーティストに影響を与えた作家であり、今尚ファンの多い“怪奇小説作家”なのである。
アーティストのイマジネーションを刺激するH.P.ラヴクラフトの世界観
H.P.ラヴクラフトは太古から地球上に存在する人間とは違う”旧支配者”による邪神クトゥルフにまつわる作品を残した「クトゥルフ神話」の生みの親であり、多くのホラー作家やヘヴィメタルアーティストに支持されている。
有名なところではアイアン・メイデンのベーシスト、”スティーブ・ハリス”がラヴクラフトのファンであり、アイアン・メイデンのファーストアルバムのジャケットなどは非常にラヴクラフト的な世界観に溢れている。
メタリカもまた2ndアルバムに、その名も「The Call of Ktulu(クトゥルフの呼び声)」というラヴクラフトの小説タイトルをそのまま使ったインスト曲を収録している。
Metallica / The Call of Ktulu
他にもエイリアンのクリーチャーデザインやエマーソン・レイク・アンド・パーマーの名盤「恐怖の頭脳改革」のジャケットデザインでも有名なH・R・ギーガーの画集タイトル「ネクロノミコン」は、ラヴクラフトの小説に出てくるクトゥルフ神話の聖典の名前を起用している。
日本においてもヴィジュアル系の“祖”と言われるDEAD ENDのカリスマ的フロントマン”Morrie”がラヴクラフトの熱狂的なファンで、そのドロッとしたゴシックホラー的な詩の世界観は現代のヴィジュアル系アーティストにもしっかり受け継がれている。
このようにラヴクラフトの名前は世界的に認知され、その名と共にある種の“ドゥーム”なイメージがベッタリと付いているのである。
LUV K RAFTはさっさと名前を変えたほうがいい
LUV K RAFTの音楽性がdir en greyのようだったら筆者も何も言わないのだが、LUV K RAFTの作品がドゥームを微塵も感じさせないPOPなダンスナンバーであるが故、あまりにも「気持ち悪い」感じがしてしまうのだ。
DIR EN GREY / 人間を被る
その気持ち悪さは言うなれば鰻丼に梅干しを山盛りにして食べるような、スイカの天ぷらを出されるような、酢豚にパイナップル?的な、とにかく「掛け合わせが悪い」のだ。
「そんなこと気にするのはセンスが無い」と言われるのだろうか?
例えば“ゆず”や”コブクロ”が”人間椅子“という名前だったらどうだろう?
「それでは聞いてください!人間椅子で”夏色”。♪駐車場の猫は〜♪」
人間椅子 / 虚無の声
人間椅子はあのドゥームな音楽性だから、江戸川乱歩の作品タイトルをバンド名に掲げていても受け入れられるのである。
気になるLUV K RAFTのDQNセンス
くれぐれも言っておきたいが、LUV K RAFTの作り出す音楽についてどうこう言うつもりはない。LUV K RAFTのダンサブルな作品は、強いビートと馴染みやすいPOPなメロディを持っていて、とてもカッコいい聴きごたえのあるモノだと思う。
しかし、なんと言うかそのバンド名も新作のタイトル「Luv it」も筆者のセンスでは消化できないものだ。
LUV K RAFTは”うさぎ”をマスコットとしているらしく、そのためメジャーデビューアルバムのタイトルも「Luv it」(ラビット)としたようなTwitterの書き込みがあったのだが、本当にそういう狙いだとしたらそれは氣志團や虎舞竜にも通じるヤンキー的バカっぽさを感じてしまう。
LUV K RAFT / RABBIT-MAN
Loveを国内では馴染みのない英語圏のスラング表記”Luv”としているのに、なぜLとRの区別やBとVの区別もすっ飛ばしてカタカナ英語でしか通用しない” ラビット”と受け取れるのかさっぱり解らない。
筆者の感覚では中学生が「なんか英語で書いてあるとカッコいいじゃん」とその気になって英語表記にしちゃったようなクソダサいセンスを感じてしまう。
そして英語表記に飽きると、次は漢字で「愛羅武勇」と書くのだ。間違いない。
LUV K RAFT / プレゼント
なんかね、名前なんてなんだっていいとは思うけど、ファンを増やして一人でも多くの人に自分たちの作品を素直に聴いてもらいたいのだったら、多少はその背景や意味を考えて付けた方がいい時もある。特にグループ名はプロモーションに直結するものなので、ヘタな名前はその後の活動に大きく影響する。
インチキ似非ライターがネットの端っこでボヤいているだけなので無視してくれても構わないが、できることならLUV K RAFTは名前を変えた方が、もっと支持が広がるだろうと思えてならない。