LADYBABYは二度死ぬ~アイドルは3年でどう変わるか~

The Idol Formerly Known As LADYBABY(かつてLADYBABYと呼ばれたアイドル)の記念すべきメジャー第1弾でもあり、The Idol Formerly Known As LADYBABY名義による、たぶん最初で最後のアルバム「Beside U」が、3月7日にリリースされた。

金子理江と黒宮れいの2人組アイドルThe Idol Formerly Known As LADYBABYは、黒宮れいの脱退を受け、新たに4人組の新体制でLADYBABYとして再び活動を開始している。

この機会に、アイドルグループLADYBABYがアイドル界および日本のミュージックシーンに残した軌跡を確認しておきたいと思う。

瓢箪から駒なアイドルグループが与えた衝撃

LADYBABYは社員規模50人にも満たないコスプレ衣装メーカー「クリアストーン」のPRキャラクターとして、アイドルコスチュームを着た髭面マッチョの外国人プロレスラー” レディビアード”を中心に、講談社ミスiD2015グランプリの” 金子理江”、高校生でガールズバンド「BRATS」を率いる”黒宮れい”の3名により2015年に活動を開始した。

The Idol Formerly Known As LADYBABY / Pinky! Pinky!

2015年といえばテレビではアイドルモノのアニメが流行り、究極のアマチュアアイドル「生ハムと焼うどん」が暴れまわり、かつてのバンドブームさながら女の子なら誰でも一度くらいアイドル活動した事があるくらい「アイドル」が飽和していた。

そんな中で、企業のPRキャラクターである「企画モノ」感満載のアイドルグループLADYBABYは、企画モノとしては余りある強烈なビジュアルと音楽性で衝撃的なデビューを飾る。

LADYBABY / ニッポン饅頭

このデビューチューンは作・編曲を浅野尚志、作詞は只野菜摘という、でんぱ組.incやチームしゃちほこへの作品提供など、アイドルシーンの最先端で活躍するライティングチームが担当し、飽和停滞していたアイドルブームを突破する1曲となった。

いきなり世界へリーチするLADYBABYの戦略的デビュー

前年よりBABYMETALが「メタルレジスタンス第2章」としてワールドツアーを開催し、日本的なアイドルとラウドミュージックの融合が世界的に受け入れられ始める中、日本のカオスなアイドル文化を象徴するルックスで、インバウンドをテーマにしたLADYBABYのデビューはワールドワイドな支持を受けることとなる。

LADYBABY / アゲアゲマネー ~おちんぎん大作戦~

デビュー曲「ニッポン饅頭」のMVは海外メディアでも紹介され、公開4ヵ月でYoutubeの動画再生数は1,000万を突破し、その年にニューヨーク、ロンドン、ドイツでのワンマンライブを成功させ、LADYBABYはインディーズながらBABYMETALのライバルと目されるグループとして注目を集めてしまう。

筆者的には古臭い「ヘビメタ」然としたトラックにアイドル歌唱を乗せたセックスマシンガンズの亜流のようなBABYMETALより、ニュー・メタルの流れを汲み明確な”日本文化の発信”というコンセプトを持ったLADYBABYに先進性を感じていた。

The Idol Formerly Known As LADYBABY / 参拝!御朱印girl☆

LADYBABYの転落

鮮烈なデビューを飾った後、LADYBABYは突然に失速する。デビューから1年を待たずに活動を停止し、2016年8月にレディビアードがグループを脱退する。これはもう、マリリンマンソンからマリリン・マンソンが脱退する様なもので、これによりLADYBABYは事実上消滅した。

その後LADYBABYに残されたメンバー2人によってThe Idol Formerly Known As LADYBABY(かつてLADYBABYと呼ばれたアイドル)として活動を続けることを発表。

名前からしてプリンスのパロディであり、どこまで本気なのか分からないグループとなったが、強烈なフロントが無くなった分、元からあった二人の能力が際立つこととなり、特に黒宮れいの歌唱力のポテンシャルはLADYBABYの新たな可能性を感じさせるものであった。

The Idol Formerly Known As LADYBABY / Pelo -ペロ-

だが、その再始動さえ2017年11月の黒宮れいの脱退により頓挫する事になる。華々しいデビューを飾りながら、LADYBABYは短い期間でなぜここまで転落してしまったのだろう。

LADYBABYの失敗

実際のところは分からないが、レディビアードも黒宮れいもLADYBABYを通して自分の創造性とポテンシャルに気付いてしまったのではないかと思える。

レディビアードはLADYBABY脱退後、アイドル兼女子プロレスラーである才木玲佳とDEADLIFT LOLITAというユニットを組んで音楽活動をしている。

DEADLIFT LOLITA / Muscle Cocktail

音楽性はLADYBABYに通じるラウド指向ではあるが、レディビアードはデスボイス以外のボーカルパートを多く取っており、英語詞も多く、よりワールドワイドな展開を目指している様に思える。

黒宮れいも一時活動休止していた自身のバンド「BRATS」の活動を再開させ、ガールズバンドがひしめく中、確かなパフォーマンス力でヘヴィでラウドな独自の音楽性を発揮している。

BRATS / 決まりごと

今にして思えば、こんな独自性のあるメンバーが在籍していたLADYBABYが、グループとして長く続く訳が無いのも仕方が無い様にも思う。

新生LADYBABYの向かう先

そしてLADYBABYは、最後に残ったメンバー金子理江と、新たにオーディションによって選ばれた3名によって、再びLADYBABY名義での活動を開始するという。

LADYBABY 再始動!

2015年以降、LADYBABYがシーンに与えた衝撃もその一旦であるが、アイドルシーンのハードコア化は一気に加速している。

関連記事→ 「PassCodeが示すハードコア・アイドルの未来」

過激な音楽性を持ったアイドルが広く支持されている今、ルックスの良い4人の日本人女性を集めた新生LADYBABYが、かつてシーンに衝撃を与えたその名を掲げてどんな活動をしていくのか見守っていきたい。

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