チームしゃちほこに見るスタダアイドルのターニングポイント

いまやアイドル界においてAKBグループ、ハロー!プロジェクトに次ぐ一大勢力として成長したスターダストプロモーション所属アイドルの中で、その中堅を担う「チームしゃちほこ」が、2月28日に約1年半ぶりとなるシングル「JUMP MAN」をリリースした。

「JUMP MAN」はチームしゃちほこが5人体制となって初のシングルであり、チームしゃちほことのタッグに定評のある浅野尚志がライティングした楽曲で、メンバー卒業を経ても変わらないチームしゃちほこらしさを感じさせるナンバーとなっている。

スタダアイドルが開拓したエモ・アイドルの価値

今年2月、スターダストプロモーションは創立40周年を機に、アイドル専門のセクション「STARDUST PLANET」を発足させ、所属アイドルが一丸となってアイドル界の一角を担う体制を整えた。

チームしゃちほこ – JUMP MAN

スターダストプロモーション所属のアイドルグループ、通称”スタダアイドル”の特徴といえば何といっても、ももいろクローバーZのパフォーマンスに象徴される”全力感”や”がむしゃら感”が挙げられる。

大手芸能事務所に所属していながら、明日をも知れない地下アイドルと同じテンションで、髪を振り乱し、汗をほとばしらせながらステージで暴れまわり、マイクを握り顔を歪めて声を張り上げる姿は、確かに従来のアイドル像を更新した。

チームしゃちほこ – 抱きしめてアンセム(Live at 武道館) from しゃちサマ2014

アイドルパフォーマンスに過度なエモーションを持ちこんだその新しいアイドル像は、多くのロックファンをアイドル支持層に引き込み、地下アイドルのみならずAKBグループやハロー!プロジェクトのアイドル達にも影響を与え、より過激なパフォーマンスを見せるハードコア・アイドルを誕生させる地盤を作り上げることとなった。

関連記事→ 「PassCodeが示すハードコア・アイドルの未来」

スタダアイドルが揃って喪失したメンバーの共通点

スタダアイドルを代表する3つのグループ「ももいろクローバーZ」「私立恵比寿中学」「チームしゃちほこ」はアリーナクラスの動員を得られるほど人気を得た2015年以降、重要な役割を担うメンバーを揃って失うこととなった。

「ももいろクローバーZ」からは有安杏果が、「私立恵比寿中学」からは廣田あいかが今年1月にグループを去り、「チームしゃちほこ」からも2年前、安藤ゆずが体調不良のためグループから抜けている。

このグループから抜けた3人のメンバーは、その理由はそれぞれに異なるが、それぞれのグループにおいて共通して「よりエモーショナルな表現を担うメンバー」であったことは、スタダアイドルの大きな転機を示しているようにも思える。

かつて、エモーショナルなステージングで支持を拡大したスタダアイドルであったが、今では多くのアイドルがそのスタイルを踏襲し活動をしている。一時代を築いたエモ・アイドル路線はスタダアイドルの専売特許とはならず、拡散と進化を続けている。

そうなると、スタダアイドルとして”核”となる新しいコンセプトなり、指針が必要となるかもしれない。売れれば「なんでもあり」とするなら、新設されたSTARDUST PLANETのブランド化もあやふやなものになってしまい、本来の目的であるファンの囲い込みは実現出来ないだろう。

ももいろクローバーZが開拓した、明るく清潔感のある「エモ・アイドル」としての”スタダアイドルらしさ”を色濃く受け継ぐチームしゃちほこは、二つの先輩グループに先んじるカタチでエモーショナルなメンバーを喪失し、脱エモーショナルな道を模索し始めている様に思う。

チームしゃちほこ / START

ラウドロックファンの咲良菜緒をはじめ、現在籍メンバーもそれぞれに「エモ度」は高いのだが、メンバーのほとんどが二十歳を越え、支持拡大もソロでの活動も精彩を欠いたまま結成8年を数える「チームしゃちほこ」が今後どのように活動していくのか?

その動向は、先輩グループであるももクロやエビ中も含めた多くのスタダアイドルに、進むべき道を示すことになるかもしれない。

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