生きるのが下手な人への応援歌-山口めろん『まるまるアニマルズ』がいい!

時おり、不器用な人が愛おしく思えて仕方がなくなることがある。
人と人が支え合っている様子が「人」という漢字になった。それはわかる。
でも、たとえひとりぼっちになったとしたって、無様なままで人は生きていかねばならないのだ。

今年の9月2日、YouTubeに山口めろんの『まるまるアニマルズ』という曲がアップされた。
可愛らしいイラストと、アルマジロやオオグソクムシといった生きものが出てくるユニークな歌詞。
NHKの『みんなのうた』で流れていてもおかしくないほど微笑ましい曲だ。

でも、これが沁みるのである。

山口めろんは、その名のとおりメロンをかぶった(本人曰く「実った」)アイドルである。
2011年、アイドルユニット『怪傑!トロピカル丸』のメンバーとしてデビューし、2015年に同ユニット卒業後は、ソロとして活動している。

アイドル時代の出来事を綴ったエッセイ本アイドルだって人間だもん!を執筆したり、得意のピアノの腕を生かして『芸能界特技王決定 TEPPEN』(フジテレビ系)に出演したりもしているので、そこで知っている人もいるかと思う。

こうした経歴だけ見ると、才能にあふれた器用な人のようにも思えるが、私にはどうしても彼女が不器用に見えて仕方がない。
これは決して悪い意味で言っているのではない。他者に対する、慈しみとも言えるような視点が彼女の持つ最大の才能だと思うからだ。

まるまるアニマルズ 動画

この曲の中でも、様々な生きものが不器用に生きている。
アルマジロは重い殻をしょっているし、オオグソクムシは海の底でひとり暮らしている。
それは、社会の中で何かを背負ったり、ひとりぼっちでもがき苦しんだりしている人を比喩したものであろうし、この言葉を生み出した彼女自身も経験してきたことだと推測される。

歌詞は続く。
「ぼくたちは弱くて臆病な生きものだからべつにひとりでも生きてゆく」
弱いこと、臆病なこと、ひとりぼっちなこと。それは何も悪いことではない。それを認めた上で、堂々と生きていけばいいのだ。

そして「みんな丸まっちゃえば安心安全だ」。
人間で言えば、膝を抱えて他者を受け入れずにうずくまっている姿だろうか。それを「まるまる」という可愛らしい言葉で表現するところもまた見事だ。

その上で、「目の前に広がるぼくの素敵な世界」と歌う。
世界は広い、そして美しい。もしかしたらだけど、孤独や悲しみを知っている人のほうが、その美しさはより際立って感じるのかもしれない。

ちなみに、彼女はアイドルでありかつピアノの才能もありながら、歌が下手なことでも有名だ。
しかし、この曲に関しては、その拙さがかえって弱い生き物たちの心情を表しているようでプラスに働いている。

穿った見方かもしれないが、彼女が頭に実らせているメロンも、どこか生きづらさを象徴しているように思える。
めろん姿でPR活動をしていたら、警察に職務質問をされたという逸話も持っているほどだ。

もちろん、そんなことでくじけたりしない。弱いものを認め、生きづらさを作品に変えるパワーが彼女にはある。
多分、人の強さにはいろんな種類がある。でも、他人の弱さを認めることができる強さが、私は一番素敵だと思う。
そして、この曲を生み出した山口めろんは、そんな強さを誰よりもよく分かっているアイドルだと思うのだ。

文=プレヤード

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