澤野弘之のボーカル企画「nZk」と劇伴の関係

劇伴(アニメやドラマの音楽)作曲家としてその実力を発揮し続ける澤野弘之だが、ここ数年はボーカル曲のプロデュース力でも、光る才能を発揮してくれている。

ボーカル曲中心のプロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk]」は、AimerやGemieといった魅力的なアーティストの雰囲気を盛り立てて、多くの名曲を放出してきた。

プロデュースするアーティストたちはどれも、どことなく癖のある存在であるが、SawanoHiroyuki[nZk]にかかると一種のまとまりを持ち、魅力が数段アップするように思われる。

そのまとまりはリスナーにとって入り込みやすい環境となり、新規のファンを生み出す要因ともなっているのだ。

この「まとまり」を作りだす力は、澤野弘之が常に劇伴作曲家として存在していることに起因しているのではと考えられる。

そこで今回は、澤野弘之と劇伴による相乗効果について、注目してみたいと思う。

劇伴に重要な要素

劇伴とは、アニメやドラマの空気をつくりだす重要な要素だ。

しかしただ雰囲気を描写した曲、例えば「喜怒哀楽」を表現しただけでは、劇伴として非常におそまつなものとなってしまうことは知られている。

悲しいときに悲しげな曲を流す。楽しいときにポップな音楽を鳴らす。それだけでは終わらない「なにか」がないと、劇伴はむしろ作品の状態を邪魔してしまうことになるだろう。

澤野弘之の楽曲はその点を当然理解し、「音楽による作品のまとまり」を作りだしているのだ。

「進撃の巨人」Season2 オリジナルサウンドトラック

上記の音楽にももちろん「喜怒哀楽」は存在するが、それは「その世界でだけ成立する喜怒哀楽」となっている。

そこでだけ成立するものは作品をまとめあげるきっかけになり、劇伴として非常に有効な効力を生み出すことになるだろう。

澤野弘之の音楽は作品を見ているときだけでなく、見終わってからも耳の奥に残っていることがある。

それこそがまとまりの効力であり、澤野弘之が評価され続ける理由の1つとなっているのだ。

劇伴からのボーカル曲

そしてこの「劇伴に必要なまとまり」をそのまま流用したのが、SawanoHiroyuki[nZk]なのではないだろうか。

SawanoHiroyuki[nZk]で発表される楽曲にはどれも、一連の流れや1つのまとまりが感じられる。

ボーカルを中心に1つの世界が形成され、はじまりからおわりまでリスナーの耳をその世界に浸らせてくれるのだ。

SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki 「&Z」

SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle 『Into the Sky』

だからこそSawanoHiroyuki[nZk]には不思議な魅力がある。聴いている間は別の音楽や音をなるべく遠ざけたくなる気持ちになるのは、おそらく私だけではないだろう。

昨今は音楽配信サービスが充実し、「つまみ食い」的に音楽を聴けるようになった。もちろんそれはそれでたくさんの音楽に出会う機会となるため大歓迎なのだが、1つの世界観に浸り込むことが難しくなったのもまた事実だ。

SawanoHiroyuki[nZk]はそんな現代の隙間を上手についた、「世界観重視の音楽」といえるような気がする。

またSawanoHiroyuki[nZk]で表現された楽曲はアーティストとその作品を丁寧に結びつけることになり、単品で見る・聴くよりも魅力が大きくなることがある。

アニメファンがアニメを見てから、音楽ファンが音楽を聴いてから、それに紐づけられた作品をチェックする機会が増えるので、澤野弘之の世界はどんどん広がっていくのだろう。

まだまだ続く世界観の構築

当時は一時的なプロジェクトなのかと思われたが、昨年2017年には2ndアルバム「2V-ALK」が発売し、2018年にも「Binary Star/Cage」の発売が決まっている。

SawanoHiroyuki[nZk] 2nd album「2V-ALK」

まだまだSawanoHiroyuki[nZk]は終わらないようで、ファンとしては一安心。

今後もふとしたときに別世界につれていってくれるSawanoHiroyuki[nZk]の音楽には、注目を忘れないようにしていきたい。

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