閉鎖的なヴィジュアル系ラウドミュージックシーンにおいて、現在最も認知度高く”表舞台”に近い存在であると言えるバンド「lynch.」のニューアルバム「XIII」(サーティーン)が7月11日にリリースされ、早くも大きな反響を呼んでいる。
結成13年で13枚目のアルバムとなるこのアルバム「XIII」(サーティーン)のリリースをうけ、lynch.史上最大規模の全34会場で行われるツアー「TOUR’18『XIII -THE BEAUTIFUL NIGHTMARES-』」をスタートさせている。
これから益々メディアへの露出が期待されるlynch.であるが、lynch.の認知を更に拡げるためにも、若いlynch.ファンは「lynch.」をぜひ親世代に聴かせるべきだと思えるので、そんな話をお伝えしようと思う。
lynch. / JØKER
ラウドミュージックとビジュアル系を繋いだX(エックス)の功績
最近、世間を賑わせている高畑充希が歌う「紅」であるが、あの曲はX Japan(当時はただのエックス)のインディーズでの1stアルバムにも収められているXを象徴する楽曲であるのだが、あの曲がCMとしてお茶の間に流れ話題となる事に、筆者は個人的な感慨を覚えている。
高畑充希 / 紅 「紅の空に」篇
インディーズメタルバンドが一同に介した幻のオムニバスアルバム「SKULL THRASH ZONE I」でデビュー前のXを知り、その荒削りながらも”馬鹿げた”スピード感にヤラれインディーズとして伝説的なセールスを記録した「VANISHING VISION」を電車を乗り継ぎ新宿レコードまで買いに行き、そのエロいジャケットを親に見つからないように聞いていた若い日。
まさに「親に紹介できないバンド」であったXの曲が、今やCMで歌われ多くの人が認知し、反響を呼んでいるのである。
Xの登場で、決定的にラウドミュージックとビジュアル系と呼ばれるバンドは結びつき、今なお国内ミュージックシーンで音楽カテゴリーとしての存在を示し、独特なファン層を形成している。
X Japan to perform at Coachella 2018
ビジュアル的に言えばXやL’Arc〜en〜Ciel も多大な影響を受け、ジャパニーズメタルバンドの一角を担っていた「DEAD END」や「GASTUNK」の方が、痺れるほど「カッコいい」と今でも思っているが、あの垢抜けない千葉のヘビメタバンドは”ヴィジュアル系ラウドバンド”のスタイルを確立し、今や「VOGUE JAPAN」の表紙を飾るほどになっているのだからスゴイことだ。
正統的国産ラウドのスタイルを踏襲するlynch.
Xがラウドミュージックを”ヴィジュアル系”に置き換えたことで、90年にジャパニーズヘヴィメタル(ジャパメタ)が死に絶えた後も、脈々と日本のラウドミュージックは継承され続けてきた。
そして2004年に結成されたlynch.は、ヴィジュアル系と呼ばれる国内ラウドミュージックのスタイルを継承しつつ、狹く閉ざされた”ヴィジュアル系マーケット”を超えて認知を拡大しつつある。
lynch. / CREATURE
lynch.は自らのことをヴィジュアル系とは位置づけていない。音を聴いても分かる通り、ラウドなサウンドでありながらメロディーはメジャー志向で聴きやすく、ヴィジュアル系ファンの矮小な閉じられたマーケットをターゲットにはしていない。
そこにはL’Arc〜en〜Ciel やGLAY 、LUNA SEA、といったヴィジュアル系マーケットから飛び出し、カラオケでもよく歌われるほどに認知を広げたバンドと同じ系譜を見ることができる。
親世代がハマるlynch.の魅力
今、lynch.を支える支持層はどんなものだろうか?男女比や年齢層など詳しい調査資料が無いので分からないが、lynch.の楽曲を聴いた筆者の予測では、40代~50代の世代にも「ガッツリ刺さる」サウンドであると思える。
lynch. / SORROW
40代~50代の世代というのは正に、XのデビューからLUNA SEA、GLAY、L’Arc〜en〜Cielなどのヴィジュアル系黎明期に活躍したバンドを熱狂的に支持していた世代なのである。
lynch.が聴かせるサウンドは、ヴィジュアル系というスタイルが固まらない中でラウドミュージックを志向していたあの頃のバンドが持っていた格好良さを十分に感じさせながらも、ヴィジュアル系バンドが培った「ラウドでありながらも聴きやすい歌メロ」を体現している。
lynch. / DEVIL
今、40代~50代を迎える”大人”達はlynch.の様なラウドミュージックに熱狂し、ファンとしてヴィジュアル系と呼ばれ始めたバンドを支えていた人も多いのだ。だからlynch.の若いファンの方は、ぜひ自分の親世代にlynch.を聴かせてみてもらいたい。
もしかしたら、lynch.の歌を口ずさみライブに足を運び熱狂する、見たことがない親の活き活きした姿が見られるかもしれない。